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2014.05.27 AC/DC
図 14:標準的なリニアレギュレータ
リニアレギュレータは、3端子レギュレータなどとも呼ばれ、簡単にDCの降圧ができることで親しまれているデバイスです。基本は入力、出力、GNDの3端子で、出力電圧は業界標準電圧がプリセットされています。その他、外付け抵抗で出力を可変できるタイプやON/OFF機能(シャットダウン)が内蔵されているものもあり、機能によって端子数は変わります。
仕組みは完全にリニア帰還ループ制御で、エラーアンプが出力から帰還された電圧をモニタして、入力の変動や出力負荷の変動に対して出力電圧を一定に保つよう調整します。スイッチング動作をしないので、スイッチングに起因するノイズやリップルはありません。
図 15:リニアレギュレータの損失
使い方は簡単なのですが、使用にあたり最も考慮しなければならないのが損失=熱です。図15が示すようにリニアレギュレータは、入力と出力間の電圧差と入力に流れる電流の積が損失電力となり、これが熱に変わります。放熱板なしで対応できるのはせいぜい2Wくらいです。当然ですが、損失が大きいということは効率が悪いということになります。
AC/DCコンバータでの使用を考えた場合、リニアレギュレータICの入力は100VACを直接整流した140Vもの電圧を許容できないので、スイッチング方式AC/DC変換のスイッチングDC/DC部分をリニアレギュレータICで置き換えるのは無理です。高耐圧トランジスタなどを使ってリニアレギュレータをディスクリート構成で作ることが可能ですが、140VのDC電圧から、例えば12Vに降圧した場合の熱処理を考えると現実的な選択肢ではありません。また、その回路設計や放熱器を含めたスペースなどを考慮するとなおさらです。
図 16
このような理由からリニアレギュレータによるDC/DC変換(降圧安定化)は、トランス方式での利用が一般的です。トランスでの変圧(降圧)を最適化し、リニアレギュレータの入出力差があまり大きくならない条件で利用すれば、さほど悪くない効率と許容できる発熱で使うことが可能です。
また、リニアレギュレータにはリップル除去機能があるので、平滑後のDCに残存しているリップルを除去できる場合があります。ノイズを嫌うアプリケーションではこの組み合わせのメリットを生かすことができます。
・トランス方式での利用が一般的だが、許容損失は2W程度が限界で効率も懸案事項。
・スイッチングノイズがない点で、ノイズに敏感なアプリケーションには有用な場合がある。