この記事のキーポイント
・IGBTは、エミッタに対して正の電圧をゲートに印加するとオン状態になりコレクタ電流が流れる。
・等価回路が示すように、Nch MOSFETがオンしPNPトランジスタにIBが流れることでPNPトランジスタがオンし、IGBTのコレクタ‐エミッタが導通する。
IGBTの動作原理
以下の等価回路と断面構造図を使って、IGBTの動作原理を説明します。
IGBTの動作原理を示す等価回路と断面構造模式図
IGBTは、エミッタに対して正のコレクタ電圧VCEを印加し、同じくエミッタに対して正のゲート電圧VGEを印加するとオン状態になり、コレクタ‐エミッタ間が導通しコレクタ電流ICが流れます。
この動作を等価回路に当てはめると、正のVGEが印加されるとNch MOSFETがオンし、これによりPNPトランジスタにベース電流IBが流れ、その結果PNPトランジスタが導通することでIGBTのコレクタからエミッタにICが流れるということになります。
断面構造図には、内部の電子と正孔(ホール)の動きを示してあります。ゲートに正のVGEを印加するとゲート電極直下のP+層に電子⊖が集まりチャネルが形成されます。これはMOSFETが導通する原理と基本的に同じです。これにより、IGBTのエミッタから供給される電子は、N+層⇒チャネル⇒N-ドリフト層⇒P+コレクタ層に移動します。一方P+コレクタ層からは正孔⊕(ホール)がN-ドリフト層に供給されます。この層をドリフト層と呼ぶのは、電子と正孔の両方のキャリアが移動することに由来します。つまり、エミッタからコレクタに電子が移動するということは、コレクタからエミッタに電流(IC)が流れることになります。