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2022.02.08 IGBTパワーデバイス

IGBTの短絡耐量(SCWT)

IGBTとは

この記事のキーポイント

・短絡耐量(SCWT:Short Circuit Withstand Time)は、パワーデバイスが短絡時に破壊せず耐えられる時間。

・短絡耐量はシステムの保護機能を確保するための時間。

・短絡耐量は長ければ長いほど、システムの信頼性や安全性を高めることにつながる。

IGBTの短絡耐量(SCWT)

IGBTなどのパワーデバイスには、短絡耐量(SCWT:Short Circuit Withstand Time)という電気的特性(パラメータ)があります。これは、パワーデバイスが短絡状態になり大電流が流れると通常短時間で破壊に至りますが、短絡耐量は短絡時に破壊せず耐えられる時間を意味し、短絡許容時間という呼び方もあります。

パワーデバイスの短絡とは、IGBTであれば(以下IGBTにて説明)コレクタ-エミッタ間に高電圧(VCC)が印加された状態でIGBTがオンし、導通状態になったIGBTに大きなコレクタ電流ICが流れる状態のことです。制御回路の故障や何らかの誤動作によって起こる可能性があります。

この短絡をイメージできるように、以下に短絡耐量を測定する際の基本回路例と波形を示します。オフ状態のIGBTにVCCを印加し、ゲート駆動回路によりIGBTをオンさせると、コンデンサに蓄えられた電荷が急激にIGBTに流れこみ、時間が経過するとIGBTが破壊に至ります。その破壊までの時間はVCC電圧、温度、パッケージタイプなどによって異なりますが、おおよそは数µs~数十µsです。試験では、ゲート駆動回路を制御してオン時間を少し増加させては破壊するか否かを確認し、それを繰り返すことで破壊に至るまで時間を測定します。または、規定のオン時間で壊れないことを確認することで合否判定を行う場合もあります。

IGBT短絡耐量を測定する際の基本回路例。/ ロームIGBT RGSシリーズの短絡耐量波形図。

波形図はロームのIGBT RGSシリーズのもので、短絡耐量8µsが最小値として保証されています。ゲート信号によってIGBTがオン(短絡)状態になるとコレクタ電流が流れますが、13.5µs後にゲート信号によってオフされるとコレクタ電流が遮断されるのでこのIGBTは破壊しておらず、この試験条件でこのIGBTは13.5µsの短絡に耐えたということを示しています。もちろん、保証値の8µsは余裕をもってクリアしています。コレクタ電圧が、短絡/遮断後に短時間低下/上昇するのは、コンデンサからIGTBのコレクタ端子間の寄生インダクタンスの充電/放電によるもので、その後コレクタ電圧はVCCに戻ります。コレクタ電流が時間経過とともに減少しているのは発熱による影響です。

なお、短絡中にIGBTが破壊した場合は基本的に初期的にはショート故障になるので、ほぼ制限なくIGBTに電流が流れ続け、コレクタ電圧=VCCはほぼグラウンドレベルまで降下します。もちろんゲートにオフ信号を送っても、IGBTがオフになりコレクタ電流が遮断されることはありません。試験や評価の際にIGBTが破壊した場合、速やかに電流を遮断しないと過電流による発熱によって発煙、場合によっては発火する可能性があり危険です。VCC(電源)には適切な電流制限を設定するなど、十分な安全対策が必須です。

短絡耐量の重要性

短絡耐量は、パワーデバイスと周辺回路、接続部品の保護のために重要なパラメータになります。パワーデバイスを用いる回路には、一般に過電流などに対する保護回路が搭載されています。パワーデバイスが短絡状態になった場合、保護回路はそれを検出して保護動作を行いますが、検出から保護動作が機能するまでにはMCUのシステム処理などの時間が必要で、その時間が十分に長いと確実な処理が行えます。つまり、短絡耐量はシステムの保護機能を確保するための時間であり、長ければ長いほどシステム処理に余裕を持つことができ、システムの信頼性や安全性を高めることにつながります。

このように短絡耐量は重要な特性ですが、すべてのパワーデバイスに値の提示や保証があるわけではありません。グレードや用途によって、提示がないもの、提示はあるが代表値(Typ.)のみで保証はないもの、保証値として明示されているものがありますので、データシートで確認する必要があります。

また、短絡耐量は時間が長いほうが優位ですが、保証値はメーカーやシリーズによってまちまちです。例えば、前出のIGBTのRGSシリーズは8µs(最小)が保証されており、別のRGTシリーズは5µs(最小)となっています。さらに、VCCや温度条件もそれぞれなので、値だけではなく条件の確認も重要です。実例として、これらのIGBTのデータシートを確認してみてください。パラメータ名:Short Circuit Withstand Time、記号:tSCで条件と保証値が示されています。

IGBT RGSシリーズ:https://www.rohm.co.jp/products/igbt/field-stop-trench-igbt?page=1&SearchWord=rgs

IGBT RGTシリーズ:https://www.rohm.co.jp/products/igbt/field-stop-trench-igbt?page=1&SearchWord=rgt

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