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2020.03.17 Siパワーデバイス

MOSFETの熱抵抗と許容損失:裏面放熱が可能なパッケージ

Siトランジスタとは

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熱計算は回路設計時の必須事項ですが、特に大電力を扱うパワーデバイスに関しては、動作寿命はもちろん安全性の面からも非常に重要になります。今回から2回にわたり、MOSFETの許容損失と熱抵抗についての説明をします。今回は、裏面放熱が可能なパッケージ、次回は裏面放熱ができないパッケージの説明をします。

裏面放熱が可能なパッケージの熱抵抗

TO-220FMやTO-247などヒートシンクを付けることが可能なパッケージや、TO-252やTO-263などの裏面端子を基板に実装可能であるパッケージのように、裏面から放熱が可能であるパッケージの熱抵抗に関する用語と定義を以下に示します。

MOSFET裏面放熱が可能なパッケージの例。TO-220FMとTO-247 / MOSFET裏面放熱が可能なパッケージの例。TO-252とTO-263

  • TA :周囲(雰囲気)温度
  • TJ :ジャンクション温度
  • TC :パッケージの裏面温度
  • TT :パッケージの標印面温度
  • RthJA(θJA):ジャンクションと周囲(雰囲気)間の熱抵抗
  • RthJC(θJC):ジャンクションとパッケージ裏面間の熱抵抗
MOSFETパッケージ熱抵抗の概念と定義

裏面から放熱が可能であるパッケージの基本構造は、リードフレーム(図ではFrame)、チップとリードフレームの接着面(Die Bonding)、MOSFETチップ(Chip)、樹脂パッケージ(Mold)からなります。記号の説明にある「ジャンクション」とはPN接合のことで、平たく言えばチップのことです。

また、以下の表はTO-247パッケージのNch MOSFETのデータシートに記載されている絶対最大定格と熱抵抗の例です。TJは絶対最大定格として規定されているので、熱計算ではTJの絶対最大定格(TJMAXと表記されることもある)を超えないことが最終的な拠り所になります。熱抵抗としては基本となるRthJAと、パッケージ裏面を実装基板もしくはヒートシンクに密着させて実装した場合の熱計算に必要となるRthJCが提示されています。

MOSFETの絶対最大定格例 / MOSFETの熱抵抗例

熱抵抗と許容損失の関係

前出の絶対最大定格表に許容損失PDが示されています。PDと熱抵抗RthJCには、以下の式で示す関係があります。

TJには最大定格値の150℃、TCには許容損失値の条件である25℃を代入します。RthJCには最大値0.26℃/Wを代入します。*4の注記にあるように、RthJCはTC=25℃での値なのでPDの規定条件に合致します。計算結果は約480Wとなり、表に示されているPDの値になります。

この式をもう少しわかりやすく解釈すると、TJの絶対最大定格とTCの差はチップの自己発熱の許容値になります。上記の条件では150-25=125℃となり、チップは125℃までの発熱を許容されることになります。発熱は熱抵抗×消費電力なので、許容できる発熱を熱抵抗で除算することで、許容できる消費電力、つまり許容損失が求められます。

ここで理解しておかなければならないことがあります。提供されているRthJCはTC=25℃という条件が付いています。逆に言えば、TCが25℃でなければRthJCは0.26℃/Wではないことになります。実際の使用条件を考えてみると、TCが25℃であることはほとんどない条件なので、例としたデータシートに提示されているRthJCは、実際の使用条件における熱計算には適用できないことになります。データシートに提示していながら実際には使えないというのは矛盾を感じますが、多くの場合、仕様値を規定するには特定の条件が必要になり、この熱抵抗に関わらずデータシートの規定値は特定の条件下の値であることは既知の事実です。

したがって、RthJCを用いて実使用条件における許容損失を求めるには、その条件におけるRthJCを測定し把握することになります。しかしながら、これにはそれなりの測定器や環境構築などが必要になります。

もう1つの方法として、RthJAから求める方法があります。TJとRthJAの関係は以下の式で表すことができます。

Pは電力損失(消費電力)です。カッコ内はチップの自己発熱に当たり、それに周囲温度TAを加えたものがTJになります。RthJAを利用することから、前出の式のTCがTAに置き換わったと考えてください。この計算により、TJが絶対最大定格である150℃を超えないように、電力損失PもしくはTAを調整することになります。

この式で計算するには、周囲温度とそのMOSFETの電力損失、そしてRthJAを把握する必要があります。周囲温度と電力損失は比較的容易に把握可能です。この類のパッケージのRthJAは、実装する基板のパッケージ裏面のハンダ付けパッド面積や銅箔の厚さ、基板の材質や層数によって変わります。標準的な基板条件における実装時のRthJAを入手可能な場合があります。

キーポイント:

・熱計算では、各種熱抵抗、損失電力からTJを求め、最終的にTJの絶対最大定格を超えないことを確認する。

・許容損失はTJが絶対最大定格を超えない電力損失を逆算したもの。

・規格値、絶対最大定格などは、それを規定する条件に注意する。

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