LLCコンバータにおける一次側スイッチング素子のリカバリー特性の重要性
-まとめ-
LLCコンバータは、通常ターンONがZVS動作になりますのでスイッチング損失の低減が可能ですが、共振外れが発生した場合、リカバリー電流による貫通電流が流れるためスイッチング損失が増大し、最悪の場合MOSFETが破壊に至る可能性があります。この破壊リスクを低減するには、一次側スイッチング素子にボディダイオードのリカバリー特性が優れているMOSFETを選定し、貫通電流を小さくすることが有効です。
以下に、ここまで説明してきた各記事へのリンクとキーポイントをまとめました。
LLCコンバータにおける一次側スイッチング素子のリカバリー特性の重要性 -はじめに-
この記事のキーポイント
・LLCコンバータは比較的少ない部品点数でソフトスイッチング回路を実現可能で、ハードスイッチング方式と比較してスイッチング損失や電圧のリンギングを低減できる
・ただし、回路の入出力条件によっては、スイッチング素子のMOSFETが破壊に至る恐れがある。
・本章では、まずLLCコンバータの回路構成と基本動作について説明し、LLCに特有の問題である共振外れに対する一次側MOSFETのリカバリー特性の重要性について説明する。
この記事のキーポイント
・LLCコンバータには、インダクタLが2個とコンデンサCによる直列回路が形成されている。
・二次側に使用されているダイオードはZCS動作であるためリカバリー損失は発生しない。
・そのため、順方向電圧VFの低いダイオードを選定すると損失を低減することができる。
この記事のキーポイント
・LLCコンバータのメリットはスイッチング損失の低減だが、共振外れによってスイッチング損失が増大しMOSFETが破壊する場合がある。
・LLCコンバータはPFM方式を用いて出力電圧を制御する。LLCのゲイン-周波数特性は2つの共振周波数を持つため、fswによって3つの動作領域に分類される。
この記事のキーポイント
・一般的にLLCコンバータは、Gainが1より大きくMOSFETターンONがZVS動作を行う領域(2)で動作する。
・領域(2)におけるLLCコンバータの回路動作は、10のModeに分類される。
LLCコンバータの共振外れに対するMOSFETのリカバリー特性の重要性
この記事のキーポイント
・LLCコンバータでは、想定していた共振条件から外れると、MOSFETボディダイオードのリカバリー電流による貫通電流が発生し、スイッチング損失の増加や最悪の場合MOSFETの破壊を招く可能性がある。
・この破壊リスクを低減するには、ボディダイオードのリカバリー特性が優れているMOSFETを選定し、貫通電流値を小さくすることが有効。
参考文献
- ・森田浩一;LLC 共振コンバータの設計, 電源回路設計 2009, CQ 出版.
- ・W.S Choi, S.M Young, D.W Kim, “Analysis of MOSFET Failure Modes in LLC Resonant Converter,” INTELEC 2009, October 2009.
- ・W.S Choi, S.M Young, “Improving System Reliability Using FRFET® in LLC Resonant Converters,” PESC 2008, June 2008.