電源設計の技術情報サイト

技術資料ダウンロード

2022.01.25 SiCパワーデバイス

ブリッジ構成時のゲートーソース間電圧の振る舞い:ターンオフ時

ドライバソース端子によるスイッチング損失の改善

この記事のキーポイント

・ドライバソース端子を持つTO-247-4LやTO-263-7LパッケージのSiC MOSFETと、ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品とは、ゲート-ソース間電圧の挙動が異なる。

・ゲート-ソース電圧のサージ対策を的確に実施するためには、各々の挙動を理解しておく必要がある。

ドライバソース端子を持つパッケージのSiC MOSFETと、ドライバソース端子を持たないパッケージのSiC MOSFETでは、ブリッジ構成時のゲート-ソース間電圧の挙動が異なります。これについて前回は、LS(ローサイド)のSiC MOSFETがターンオンした場合の挙動について解説しました。今回は、LSのSiC MOSFETがターンオフする場合の振る舞いを解説します。

ブリッジ構成時のゲートーソース間電圧の振る舞い:ターンオフ時

ブリッジ構成において、ドライバソース端子を持つパッケージのSiC MOSFETのLSがターンオフする時の挙動について、前回同様にドライバソース端子を持たないTO-247Nとの違いを中心に説明します。

以下の波形図はターンオフ時の各スイッチング波形を示しており、左側がドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品、右側がドライバソース端子付きTO-247-4Lパッケージ品です。各横軸は時間を表し、時間領域Tk(k=3~7)の定義は記した通りです。また、右下の回路図には、TO-247-4Lパッケージ品のブリッジ回路におけるゲート端子の電流を示してあります。波形図および回路図には、各々の時間領域で発生する事象を(IV)~(VII)で示してあります。事象(VII)は、期間T5が終了した直後に発生しています。

ブリッジ構成におけるLSのSiC MOSFETターンオフ時の各スイッチング波形:ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品

ドライバソース端子を持たないTO-247Nパッケージ品

ブリッジ構成におけるLSのSiC MOSFETターンオフ時の各スイッチング波形:ドライバソース端子を持つTO-247-4Lパッケージ品

ドライバソース端子を持つTO-247-4Lパッケージ品

ブリッジ構成におけるLSのSiC MOSFETターンオフ時の各スイッチング波形

<時間領域Tkの定義>

  • T3:LSがONしている期間
  • T4:LSがOFFしMOSFETの電圧が変化している期間(事象(IV)が同時に発生)
  • T5:LSがOFFしMOSFETの電流が変化している期間(事象(VI)が同時に発生)
  • T4~T6:HSがONするまでのデッドタイム期間
  • T7:HSがONしている期間(同期整流期間)

TO-247-4L:リッジ構成におけるLSターンオフ時のゲート端子の電流

TO-247-4L:LSターンオフ時のゲート端子の電流

波形図の比較では、TO-247-4Lの事象(VI)と(VII)がTO-247Nと異なっています。

事象(VI)は、ターンオン時と同様にIDが変化するタイミングであり、HSのID_HSが急激に増加することにより、ボディダイオードのVF_HSが急激に上昇します(前出波形図破線丸部分)。そのため、dVF_HS/dtによる電流ICGDが再び流れ負サージが発生します。

右に示す図は、ターンオフ時のスイッチング側(LS)と転流側(HS)のVDS波形です。ターンオン時と同様に、HSのVDS_HSが本来のdVDS_HS/dt(期間T4)が完了した後のID変化時(期間T5)に負側へ変化しており、dVF_HS/dtが発生していることがわかります。

TO-247-4とTO-247-4Lのターンオフ時のVDS波形比較

TO-247-4とTO-247-4Lのターンオフ時のVDS波形比較

事象(VII)は、期間T5が完了しID_HSの変化がなくなると、dVF_HS/dtが消滅しゲート端子へ流入するICGDが流れなくなり、ICGDの電流経路に存在する配線インダクタンスに蓄積されたエネルギによる起電が、ゲート-ソース間に正サージとして観測されるものです。この正サージも、TO-247Nではほとんど観測されません。

TO-247Nのターンオフ動作の詳細は、Tech Web基礎知識SiCパワーデバイスの記事「ローサイドスイッチターンオフ時のゲート-ソース間電圧の挙動」か、アプリケーションノートの「ターンオフ時のゲート信号の振る舞い」の項を参照願います。

次に示すのは、TO-247-4Lのターンオフ時のVGS波形です。サージ対策の有無での比較になっています。ターンオン時同様に、サージ対策をしていない場合(Non-Protected)は、これまで説明したようにサージが発生しています。サージ対策を実施(Protected)すると、VGSサージが抑えられていることがわかります。

これらのサージを抑えるためには、前回および今回説明したゲート-ソース間電圧の振る舞いを理解するとともに、対策としてSiC MOSFETの直近にサージ抑制回路を接続することが必須となります。

TO-247-4Lのターンオフ時のVGS波形(対策有無)

TO-247-4Lのターンオフ時のVGS波形
(対策有無)

詳細はアプリケーションノート「ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法」、またはTech Web基礎知識SiCパワーデバイスの「SiC MOSFET:ゲート-ソース電圧のサージ抑制方法(連載中)」を参照して下さい。

シリコンカーバイドパワーデバイスの理解と活用事例