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2021.03.30 シミュレーション
PFC回路:スイッチング周波数の調整
先に、回路条件変更にともなうインダクタ電流のリップル率の適正化方法として、インダクタのインダクンスを調整する方法を示しました。ここでは別の方法として、スイッチング周波数fSWを調整する方法を紹介します。動作モードはCCM(電流連続モード)を前提とします。
回路例
回路は、Power Device Solution Circuit/AC-DC PFCの一覧にあるシミュレーション回路「A-6. PFC CCM Synchro Vin=200V Iin=2.5A」を例にします(図6参照)。回路図の詳細は、こちらからも確認できます。
この例では、図6の黄色ボックス部の条件を変更した場合に、インダクタ電流のリップル率を最適化するためにスイッチング周波数を調整します。その結果をシミュレーションを使って確認します。
図6:PFCシミュレーション回路「A-6. PFC CCM Synchro Vin=200V Iin=2.5A」および変更条件
スイッチング周波数調整前のリップル率
図7に、スイッチング周波数fSW調整前(デフォルト値:100kHz)のインダクタ電流ILを示します。このピーク値は IL_peak≈7.8A になっています。
図7:スイッチング周波数fSW調整前(デフォルト値:100kHz)のインダクタ電流IL
入力電流のピーク値は Iin_peak=√2×Iin≈7.07A なので、これらからリップル率Mを計算すると以下のようになります。
リップル率が一般的な30%未満に対して十分に小さいので、fSWを下げてリップル率を適正化することで効率改善を検討します。fSW調整前の効率は η=97.2% です。
スイッチング周波数の調整
スイッチング周波数fSWは、一般的に以下の式で求められます。
η=0.972、リップル率Mを一般的な30%(0.3)としてfSWを計算すると以下のようになります。
計算結果から、fSW=55kHzに変更して再シミュレーションを実施すると、図8が示すようにインダクタ電流のピークは IL_peak≈8.5A になります。この場合のリップル率は M=(8.5-7.07)/7.07≈20.2%になります。また効率は η=97.3% となり、fSW調整前より0.1%向上します。このfSWの調整により、適正なインダクタ電流のリップル率を得つつ効率の向上も可能なことが確認できました。
図8:スイッチング周波数fSWを55kHzに調整した場合のインダクタ電流IL
・PFC Synchronous CCM回路において動作条件を変更した際に、スイッチング周波数調整によりインダクタ電流のリップル率を適正化しつつ効率向上を検討する例。
・適正なリップル率になるスイッチング周波数を算出し、シミュレーションを実施して検証を行う。