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2021.07.13 熱設計

熱抵抗データ:
TJの見積もりにおけるθJAとΨJT -その2-

電子機器における半導体部品の熱設計

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前回は、TJの見積もり計算を行う際にθJAとΨJTをどのように使うか、どのように使えるかというテーマの「その1」として、θJAとΨJTを使ってできることを説明しました。今回は「その2」として、ΨJTの特性とTJの見積もりにおけるθJAとΨJTの有効性を説明します。なお、前回も記したように、熱抵抗データを使ったTJの見積もり計算例は別途説明を予定しています。

条件によるθJAとΨJTの特性と有効性

ΨJTは、デバイス全体の消費電力に対するジャンクションとパッケージ上面中心の温度差を表す熱特性パラメータであることから、実機での実動作状態におけるTJの推定に利用できることが特徴であることは前回説明した通りです。しかしながら、実動作条件の中にはθJAやΨJTに影響を与え、TJの見積もりにおける有効性を左右する条件があります。いくつか例を挙げ、それぞれの特性と有効性を考察します。

●基板の放熱性能の変化
右のグラフは基板表層銅箔面積とθJAとΨJTの関係を示しています。θJAは銅箔面積、つまりPCBに流れ込む熱の影響を大きく受けるのに対して、ΨJTはデバイスの熱の大半がPCBに流れ込むため、TJ-TT間の温度差は非常に小さくなります。そのためΨJTの値と変化も小さくなります。したがって、θJAは実装基板の条件によって大きく変わってしまうので、TJの見積もりにそのまま使うのは困難ですが、ΨJTはPCBの差異による差が小さいため適応可能です。

基板表層銅箔面積とθJAとΨJTの関係

●シールドケースなどに覆われた状態
EMC対応などの理由で、対象デバイスがシールドケースで覆われる場合があります。以下は、シールドケースあり・なしでの実測によるθJAとΨJTの比較です。

シールドケースあり・なしでの実測によるθJAとΨJTの比較

シールドケースがあると、θJA、ΨJTのどちらも上昇しますが、θJAは変動が大きくTJの見積もりには使用できません。ΨJTの上昇はわずかで、もともとの値が小さく変動も小さいため、TJ計算にそのまま使っても大きな誤差にはなりません。例として、シールドケースなしのΨJT=9.4℃/Wを使用して、シールドケースがある場合のTJを計算すると以下になり、実際の温度106.7℃と比較して誤差は1%以下です。

T_J=0.5W×9.4℃/W+101.3℃=106.0℃

●樹脂封止されシールドケースなどで覆われた状態
保護目的で基板を実装部品ごと樹脂封止する場合があります。ここでは、さらにシールドケースなどで覆われた状態を想定します。

基板を実装部品ごと樹脂封止しシールドケースで覆われた状態のθJAとΨJT

θJAは封止樹脂により大幅に熱抵抗が下がってしまい、この条件ではθJAをTJ計算に使うことはできません。ΨJTは増加傾向で大きく変動しています。樹脂封止とシールドケースがない時のΨJT=9.4℃/Wを使用して、樹脂封止されシールドケースがある場合のTJを計算すると以下になります。

T_J=0.5W×9.4℃/W+44.5℃=49.2℃

実際の温度53.3℃と比較すると誤差は8%程度になります。これを許容するか、補正してTJ計算に用いるかは検討が必要です。

●発熱源となる部品が隣接した状態
本来は避けるべきですが、部品実装において発熱する部品が隣り合うことがあり得ます。以下は、2個が適度な距離を持っている場合(中央)と、隣接している場合(右)のθJAとΨJTです。

2個が適度な距離を持っている場合と隣接している場合のθJAとΨJT

データが示す通り、部品間が近くなるとθJA、ΨJTのどちらも増加しますが、θJAの変動は大きくTJの見積もりには使用できません。ΨJTも当然ながら変動しますが、もともとの値が小さく変動もわずかなのでTJの見積もりに使用しても大きな誤差にはなりません。例として、1個時のΨJT=9.4℃/Wを使用して2個が隣接状態のTJを計算すると以下になり、実際の温度101.5℃と比較して誤差は1%以下です。

T_J=0.5W×9.4℃/W+96.3℃=101.0℃

●基板の層数が変わる場合
基板の層数が変わると、θJAとΨJTがどのように変化するかを示します。

基板の層数が変わった場合のθJAとΨJT

θJAは基板層数が増えることで大きく下がっており、この場合もθJAをTJ計算に使うことはできません。ΨJTも同様に大きく変動していますが、例として1s(1層基板)時のΨJT=9.4℃/Wを使用して2s2p(4層基板)でのTJを計算すると以下になります。

T_J=0.5W×9.4℃/W+33.7℃=38.4℃

実際の温度36.3℃と比較すると誤差は6%程度ですが、これを許容するか、もしくは補正するかどうかは検討が必要です。

まとめ

実機での実装を想定した4つの条件でのθJAとΨJTを比較しました。θJA前回の検討通り、銅箔や基板といった放熱条件や隣接する部品からの熱的干渉を受けるため、実機でのTJの見積もり計算に使うことは難しいことがわかります。

一方、ΨJTは実装条件によって変化しますが、もともとの値が小さい点、そして条件によっては変動がわずかなため、使用する基板や実機の状態を把握しTTを精度良く測定することで、提示されているΨJTを使って実使用時のTJ見積もりに使うことが可能です。

キーポイント:

・実機に実装された状態で、θJAでによるTJ見積もりは基本的にできない。

・ΨJTは実装条件によって変化するが、使用する基板や実機の状態を把握していれば実使用時のTJ見積もりに使うことが可能。

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