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コラム

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モータドライバ出力トランジスタの寄生ダイオードで電流回生した時の消費電力

今回は、ブラシ付きDCモータドライバICでPWM駆動行う際に、電流回生を出力MOSFETの寄生ダイオードを通じて行った場合の消費電力について話をしたいと思います。この話題を取り上げたのは、実際の回生時の消費電力が計算で算出した想定値より大きくなることがあり、場合によっては問題になるので注意が必要だからです。

MOSFETの寄生ダイオードで電流回生した時の消費電力は単純計算より大きくなる?

出力MOSFETの寄生ダイオードを通じて電流回生を行った場合の消費電力は、寄生ダイオードの順方向電圧×モータ電流となるはずです。しかしながら、実際にはこの計算値より消費電力が大きい場合があります。

この理由は、出力MOSFETの寄生ダイオードに順方向電圧が発生するように電流が流れると、MOSFETの構造上内在する寄生トランジスタが動作し電源からGNDに電流を流します。この電流は、ダイオードに流れる電流の数十分の一未満と少ないのですが、消費電力は電源電圧×電源-GND間電流となり、電源電圧が高い場合は無視できない値になります。

この現象をドライバ出力MOSFETの状態と電流の流れ、そして出力MOSFETの構造から説明します。

最初に、電流回生時の出力MOSFETの状態と回生電流の流れを確認します。以下はHブリッジ回路ですが、動作に関係しないMOSFETは省略してあります。(a)はモータに電流供給時、(b)と(c)はどちらも電流回生時ですが2通りの回路状態がありますので、(b)を電流回生時1、(c)を電流回生時2とします。

モータドライバHブリッジ電流供給時回路状態/モータドライバHブリッジ回生時回路状態/モータドライバHブリッジ回生時回路状態

(b)電流回生時1は、電流供給時にオンしていたQ1をオフ、Q4はオンのままです。この状態では、オフしているQ2の寄生ダイオードとオンしているQ4を通じて電流が回生します。

(c)電流回生時2は、電流供給時にオンしていたQ1とQ4をオフし、すべてのMOSFETがオフ状態です。この場合、Q2とQ4の寄生ダイオードを通じて電流が回生します。

次に、追加の電流を流してしまう寄生トランジスタを説明するために、モータドライバICの出力MOSFETの構造模式図(断面図)を示します。上記回路図では、ハイサイドはPch、ローサイドはNchのMOSFETを使っているので、下図にもそれぞれの構造を示してあります。

モータドライバICの出力MOSFETの構造模式図(断面図)

出力Nch MOSFETには、ドレインDのN型拡散層と、素子分離P型拡散層と、電源につながるN型拡散層(ここでは出力Pch MOSFETのソースSに接続)により、寄生NPNトランジスタQaができます。

このNch MOSFETのソース-ドレイン間の寄生ダイオードDi_aに回生電流が流れると、素子分離P型拡散層がGNDに接続しているため、寄生NPNトランジスタQaのベース-エミッタ間のダイオードにも順方向の電圧が発生します。このために寄生NPNトランジスタQaがオンしてコレクタ電流を流し、電源Eaから電流を引き込みます。

出力Pch MOSFETに関しても原理的には同じです。ドレインDのP型拡散層と、ソースSと共通のバックゲートN型拡散層と、素子分離などのP型拡散層とで寄生PNPトランジスタQbができます。

このPch MOSFETのソース-ドレイン間の寄生ダイオードDi_bに回生電流が流れると、寄生PNPトランジスタQbがオンしてコレクタ電流を流し、GNDに電流を流し出します。

出力MOSFETの寄生ダイオードに回生電流が流れた時、このように寄生トランジスタにより電源-GND間に電流が流れます。一般的に流れる電流は回生電流より2桁程度下より小さい電流ですが、ICの使用しているプロセスやMOSFETのレイアウトにより大きく変わります。したがって、出力MOSFETの寄生ダイオードを通じて電流回生を行う使い方をする場合は、これらの寄生トランジスタにより流れる電流の大きさの確認が必要です。

例えば、(c)電流回生時2において、電源電圧Ea=24V、回生電流Io=1.0A、Nch MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧VF_N=0.8V、Pch MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧VF_P=0.95V、Nch MOSFETの寄生トランジスタとPch MOSFETの寄生トランジスタが電源-GND間に流す電流の回生電流に対する比を各々k1=1/100とすると消費電力Pcは以下のようになります。

 Pc=Io×(VF_N+VF_P+2×k1×Ea)
  =1×(0.8+0.95+2×1/100×24)=1.75+0.48=2.23W

この例では、寄生トランジスタが流す電流による消費電力への影響は決して無視できない大きさです。電源電圧Eaが高い場合には注意が必要です。