2022.01.11
・IGBT、MOSFET、バイポーラトランジスタの特徴を理解して、アプリケーションよって使い分ける。
パワートランジスタを必要とするアプリケーションでは、IGBT、MOSFET、バイポーラトランジスタなど、各パワートランジスタの得手不得手を理解して使い分けがなされています。以下に各パワートランジスタの特徴をまとめました。
MOSFET(Nch) | バイポーラトランジスタ(NPN) | IGBT | |
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基本構造 |
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制御 | ゲート電圧 | ベース電流 | ゲート電圧 |
許容電流 | △ | ○ | ◎ |
スイッチング速度 | ◎ | △ | ○ |
オン抵抗 | △ | ○ | ◎ |
※◎、○、△相対的な比較イメージ
MOSFETは、電圧駆動で入力インピーダンスが高いので制御に要する消費電力が少なく、キャリアが電子か正孔のいずれかのユニポーラトランジスタなのでスイッチング速度が速いのが利点です。ただし、バイポーラトランジスタのように伝導度変調効果を使えないので、高耐圧になるとオン抵抗が高くなるという欠点を持っています。
バイポーラトランジスタは高耐圧でもオン抵抗*が低いという利点があります。バイポーラトランジスタは動作時に正孔と電子がともに移動し、正孔がN-層に入り込むことで抵抗が低減される伝導度変調効果により、電圧降下が抑えられる特性を持っています。また、バイポーラトランジスタは電流増幅動作をするので、印加した電流よりも大きな電流を流すことできます。欠点は、入力インピーダンスが低く制御にようする消費電力が大きく、両極性のキャリアを使うことからスイッチング速度が遅いことです。
*パラメータとしては飽和電圧になる。
IGBTは入力部がMOSFET構造、出力部がバイポーラ構造の複合デバイスで、MOSFETとバイポーラトランジスタの利点を備えています。入力インピーダンスが高く小電力で駆動でき、大電流に増幅できます。また、高耐圧でもオン抵抗*は低く抑えられています。スイッチング速度はMOSFETには及びませんが、バイポーラトランジスタより速くなっています。
*パラメータとしては飽和電圧になる。
MOSFET、バイポーラトランジスタ、IGBTの比較を行いました。IGBTの利点としては高耐圧で低損失、比較的高速であることが挙げられますが、それぞれに利点がありますので基本的にはアプリケーションによって使い分けることになります。各パワートランジスタの守備範囲や使い分けに関しては、「IGBTの適用範囲」や「IGBTを使ったアプリケーション」を参照してください。