IGBTパワーデバイス|基礎編

モータ用途におけるパワーデバイスの使い分け

2022.02.08

この記事のポイント

・概略的には、IGBTは低周波数よりで出力容量が大きい領域、Si-MOSFETは高周波数よりで低出力容量の領域、SiC-MOSFETは高周波数よりで大出力容量の領域をカバーする。

・モータ用途では、低周波数(~ 20 kHz)のスイッチング駆動、大出力容量に対応するIGBTによる構成が一般的。

・SiC-MOSFETの場合、低いスイッチング損失、かつ、大出力容量に対応で優位な面があるが、コストとのバランスより用途は限定される。

パワーデバイスはそれぞれに特徴があり、使用するアプリケーションや必要とされる特性や性能によって使い分けるのが一般的です。今回はモータ用途におけるIGBT、Si-MOSFET、SiC-MOSFETの使い分けのヒントについてです。

モータ用途におけるパワーデバイスの使い分け

下図は、「IGBTの適用範囲」の記事で使用した図と同じもので、動作周波数と出力容量(VA)における、各パワーデバイスの特徴から使用に適した領域を示しています。IGBT、Si-MOSFET、SiC-MOSFETのディスクリートがカバーする領域を比較すると、以下のように言い表すことができます。もちろん、各パワーデバイスともに多種多様なので、一般的な概略的特徴に基づくものです。

  • ① IGBTとSi-MOSFETの比較では、IGBTが低周波数よりで出力容量が大きい領域、Si-MOSFETは高周波数よりで低出力容量の領域をカバーする。
  • ② IGBTとSiC-MOSFETでは、SiC-MOSFETは高周波数より、かつ大出力容量よりの領域をカバーする。
  • ③ Si-MOSFETとSiC-MOSFETでは、周波数帯は同様だが、Si-MOSFETは低出力容量より、SiC-MOSFETは大出力容量よりの領域をカバーする。

出力容量と動作周波数から見た各パワーデバイスの適用範囲のイメージ。

これらの特徴をもう少し具体的に、そしてモータ用途での使い分けのヒントを示したのが、次の図になります。使い分けの観点としては、条件による損失の違いが重要になってきます。損失は、導通損失とスイッチング損失に分けて考えていきます。以下、IGBT、SiC-MOSFET、Si-MOSFETはすべてディスクリートで、「+SBD」、「+FRD」は該当のディスクリートダイオードを外付けの意味です。

導通損失では、流す電流がおおよそ5A以下の領域であればSi-MOSFETがIGBTより優位ですが、それ以上ではIGBTが優位です。この電流領域はSiC-MOSFETがカバーする領域ではないので、IGBTかSi-MOSFETの検討になります。家庭用エアコンの室外機のように軽負荷で定常運転する割合が多いアプリケーションなど、小電流で動作するシステムではSi-MOSFETが優位になります。上記①のIGBTとSi-MOSFETのカバレッジの比較にも合致します。

スイッチング損失に関しては、PWM周波数(スイッチング周波数)が速くなるにつれてIGBT+FRD(ファストリカバリダイオード)とSiC-MOSFET+SBD(ショットキーバリアダイオード)の比較では、SiC-MOSFET+SBDの方が優位になり、上記②に該当します。これは、IGBT+FRDの特徴であるターンオン時のリカバリ電流とターンオフ時のテール電流に起因し、SiC-MOSFET+SBDではテール電流が流れないなど、スイッチング損失が大幅に改善されるのが理由です。

しかしながら、モータ用途を考えると、一般的なモータは通常20kHz以下の比較的低い周波数で使用されること、また、SiC-MOSFETはコスト面では不利なことなどから、特別な用途での使用が多いのが現状です。現在のモータアプリケーションでは、性能、損失、コスト面のバランスから、IGBTが主流になっています。

モータ用途を前提としたパワーデバイスの特徴比較。

このように、パワーデバイスそれぞれの特徴、そしてコストも含めた検討を行い、用途に対して最もバランスのよいものを選択することになります。インバータをはじめとしたモータ駆動用では、上記で例としたIGBTディスクリート+FRDに加えて、モータ用途を前提としたFRD内蔵IGBTディスクリートやIGBT IPM(インテリジェントパワーモジュール)が幅広く使われています。

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