2021.03.16
・14種類のモードで示した動作状態と電流経路を理解する。
・動作の違いから電流波形に違いが生じ、進みレグと遅れレグのMOSFETでは損失が異なり、発熱に差異が生じるので熱設計を行う際は注意が必要。
・ZVS動作の成立条件の式から、軽負荷時ではIL1が小さいためZVS動作が成立しにくく、重負荷になるにつれてZVS動作が成立しやすくなることがわかる。
PSFB回路におけるZVS動作は、スイッチを構成するMOSFETの出力容量COSSが放電し、Body Diodeに順方向電流が流れている時にそのMOSFETをターンONさせることで成立します。
PSFB回路のQ1~Q4のドレイン電流と一次側トランスに流れる電流波形を示します。
電流の正の向きをドレイン→ソースの向きとすると、Q1~Q4にそれぞれマイナス方向のドレイン電流が流れる期間、すなわちMOSFETのBody Diodeに順方向電流が流れている期間があることが確認できます。たとえばQ3においては、Mode(7)の区間です。この期間中はドレイン電圧がほぼ0なので、この期間中にターンONすることでZVS動作が成立します。
また、進みレグと遅れレグで、位相をずらしただけの同形の電流波形が生じるのではないこともわかります。このように波形が異なる理由は、この電流波形の下部に示したMode(1)~Mode(14)についての、それぞれの電流経路を考えると理解できます。各モードの番号と位置は、前出のタイミングチャートと同じです。
以下にMode(1)~Mode(14)の動作と電流経路を示します。
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このような電流経路の変化から、特にMode(7)と(14)の説明にあるように、遅れレグのMOSFETのONにより、入力電源とLSが直列接続され、LSのエネルギーが急速に減少します。この動きは進みレグでは起こらないため、結果として進みレグと遅れレグの電流波形に違いが生じることになります。この電流波形の違いから、進みレグのMOSFETと遅れレグのMOSFETでは損失が異なり、発熱に差異が生じるので熱設計を行う際は注意が必要です。
Mode(5)と(6)、(12)と(13)の説明にあるように、遅れレグにおいて、LSに蓄積されているエネルギーがMOSFETのCOSSに蓄積されているエネルギーより大きくないとMOSFETの充放電が完了しないため、ZVS動作が成立しません。Mode(5)を例に取ってこの条件を式で表すと、以下の(1)式のようになります。IL1はMode(4)終了時点のIL、EOSS_Q3、EOSS_Q4はそれぞれQ3、Q4の出力容量の充放電完了に必要なエネルギーを表しています。
この(1)式から、軽負荷時ではIL1が小さいためZVS動作が成立しにくく、重負荷になるにつれてZVS動作が成立しやすくなることがわかります。
ローム主催セミナーの講義資料やDCDCコンバータのセレクションガイドなど、ダウンロード資料をご用意いたしました。
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