SiCパワーデバイス|応用編

ブリッジ構成における注意点-プローブのCMRR

2022.06.28

この記事のポイント

・ブリッジ構成におけるHS MOSFETの測定では、使用するプローブの同相信号除去比(CMRR)が高周波領域で低下し、波形変動が大きくなる場合がある。

・特にVGSの測定では数Vレベルのサージを測定することから、観測した波形が本来の波形かCMRR不足による変動波形かを見分ける必要ある。

・光絶縁方式差動プローブのCMRR周波数特性は非常に優れており、本来の波形を観測可能。


SiC MOSFETゲート-ソース間電圧測定:ブリッジ構成における注意点-
プローブのCMRR

ブリッジ構成におけるハイサイド(HS)MOSFETの測定では、高電圧差動プローブや差動ペアプローブ(*4)を用いて波形観測を行いますが、使用するプローブの同相信号除去比(CMRR)が高周波領域で低下し、波形変動が大きくなる場合があります。特にゲート-ソース間電圧VGSの測定では数Vレベルのサージを測定することから、観測した波形が本来の波形かCMRR不足による変動波形かを見分ける必要あります。

図13に、ブリッジ構成におけるHSをスイッチングした時とLSをスイッチングした時の波形の比較を示します。使用した差動電圧プローブは、YOKOGAWA製701297(150MHz、1400V)です。波形の比較において、LSをスイッチングした時の転流側(HS)VGSが大きく変動していることがわかります。これは、転流側が20~50V/nsといった高速なdV/dtで変化した時、プローブのCMRRの低下によって発生したものです。

HSをスイッチングした場合とLSをスイッチング場合のVGS波形の比較
図13. HSをスイッチングした場合とLSをスイッチング場合のVGS波形の比較

この理由の確認のために、差動電圧プローブのCMRR性能を測定した結果を図14に示します。電圧プローブヘッドのプラス側とマイナス側をHSおよびLSのDriver Source端子に接続して測定しています。この測定方法は、テクトロニクスのアプリケーションノート「ABCs of Probes」(*5)に詳しく記載されていますので参照して下さい。

絶縁型電圧プローブのCMRR性能
図14. 絶縁型電圧プローブのCMRR性能

図14のターンオン時、ターンオフ時の波形では、Driver Source端子の電位にHS、LS共にスイッチング時に電圧変動が発生しています。ところが、スイッチング動作終了後に、LSはスイッチング前の状態に戻るのに対し、HSは一定電位が残っています。これがCMRRの誤差になります。この残留電位は、時間経過(数μs)により消滅します。今回の測定では、Driver Source端子の電位はVDSが立ち上がるときは負側へ、立ち下がる時は正側へ変動していますが、差動プローブの特性により、逆方向に変化することもあります。最近では、CMRRの影響を受けない測定機器として、光絶縁方式の差動プローブが測定機器メーカから製品化されており、正確な波形測定の有効な解決手段として注目されています。

光絶縁方式の差動プローブと一般的な高電圧差動プローブの性能比較を示します。光絶縁方式の差動プローブは、テクトロニクスIsoVu®技術を用いたテクトロニクス製光アイソレーション型差動プローブ(TIVH08、MMCX50X)です。

測定に使用した基板(P02SCT3040KR-EVK-001)には、光アイソレーションプローブを接続するMMXCコネクタを実装するためのパターンが準備されており、図15に示すように光アイソレーションプローブと一般的な高電圧差動プローブを同時に接続して測定しました。これまで説明してきたように、測定箇所や差動電圧プローブの設置箇所による波形の影響を極力取り除くため、電圧プローブの測定箇所はSiC MOSFETの直下に短い延長線をはんだ付けし、ダンピング抵抗100Ωを接続しています。図16に、各プローブのゲート-ソース間電圧VGSの波形を示します。

一般的な高電圧差動プローブ(奥)と光アイソレーション型差動プローブ(手前)
図15. 一般的な高電圧差動プローブ(奥)と光アイソレーション型差動プローブ(手前)

一般的な高電圧差動プローブと光アイソレーション型差動プローブによって観測したHSスイッチング時のVGS波形とCMRR性能比較
図16. 一般的な高電圧差動プローブと光アイソレーション型差動プローブによって観測したHSスイッチング時のVGS波形とCMRR性能比較

HSをスイッチングしているためHSのゲート-ソース間電圧VGSは、一般的な高電圧差動プローブではCMRR低下によりターンオン後に駆動電圧18Vを上回り、ターンオフ後に0Vを下回っています(緑線)。一方、光アイソレーションプローブは18Vおよび0VにCMRRの影響と考えられる変動は見られず、スイッチング動作の正確な波形が観測できていると考えられます。

これらの結果は、図17に示すCMRRの周波数特性からも明白です(*4、*6)。光アイソレーションプローブのCMRR周波数特性は高電圧差動プローブに比べて非常に優れており、数十MHzの同相ノイズも十分に除去できることがわかります。

一般的な高電圧差動プローブと光アイソレーション型差動プローブのCMRR特性の比較
図17. 一般的な高電圧差動プローブと光アイソレーション型差動プローブのCMRR特性の比較

IsoVu®はテクトロニクスの登録商標です。
*4. 参考資料:「インバータ回路の評価方法」 アプリケーションノート(V1.3)岩崎通信機株式会社, 2018年12月
*5. 参考資料:「ABCs of Probes」 Application Note (No. EA 60W-6053-14)Tektronix, 2016年1月
*6. 参考資料:「Complete ISOLATION Extreme COMMON MODE REJECTION」 White Paper(0/16 51W-60485-1)Tektronix, 2016

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