SiCパワーデバイス|応用編

SiC MOSFETゲート-ソース間電圧測定時の注意点:一般的な測定方法

2022.05.17

この記事のポイント

・DUTの端子に延長ケーブルをはんだ付けし、電圧プローブを接続し測定すると、スイッチング速度が速い場合観測波形が大きく変化する。

・測定のために取り付けた延長ケーブルの影響によって本来の波形とまったく違う波形が観測される。

・観測されている波形が本来の波形かそうでないかを、常に念頭において観測する必要がある。

SiC MOSFETは優れたスイッチング特性を備えていますが、スイッチング時の電圧や電流の変化が非常に大きいために、Tech Web基礎知識 SiCパワーデバイス「SiC MOSFET:ブリッジ構成におけるゲート-ソース間電圧の挙動」で説明した、ゲート-ソース間に発生するサージを正確に測定する必要があります。ここでは、ゲート-ソース間の電圧測定において注意するべき点について説明します。なお、SiC MOSFETを例にして説明をしますが、説明する内容は一般のMOSFETやIGBTなどのパワーデバイス全般に共通の事柄として参考にしてください。

SiC MOSFETゲート-ソース間電圧測定:一般的な測定方法

電源ユニット等の製品に使用されているパワースイッチングデバイスは、一般的に冷却のためのヒートシンクを取り付けていることが多く、デバイス端子間の電圧測定において、電圧プローブなどをデバイスの端子に直接取り付けることは通常できません。そのため、デバイスの端子に延長ケーブルをはんだ付けし、製品の筐体外で電圧プローブを接続し測定することがあります。

図1は、ローム製評価基板(P02SCT3040KR-EVK-001)にヒートシンクを取り付けて、延長ケーブルに電圧プローブを接続した例です。被測定デバイス(以下DUT)の端子に、電圧プローブ接続用の延長ケーブル(長さ約12cm)をはんだ付けし、輻射ノイズの影響を抑えるために延長ケーブルをより線にしています。この測定方法を用いて、図2に示すブリッジ構成によるダブルパルス試験を実施し波形を観察した例を示します。

延長ケーブルに電圧プローブを接続してゲート-ソース間電圧を測定。

図1. 延長ケーブルに電圧プローブを接続して
ゲート-ソース間電圧を測定

ダブルパルス試験回路。

図2. ダブルパルス試験回路

ダブルパルス試験回路のハイサイド(HS)とローサイド(LS)にローム製SiC MOSFETのSCT3040KRを実装し、HSをスイッチングし、LSは常時オフ状態(ゲート電圧=0V)にします。図1で示した延長ケーブルは、HSのゲート端子とソース端子に直接はんだ付けしています。

図3に測定したゲート-ソース間の電圧波形を示します。外付けゲート抵抗RG_EXTが10Ωの場合、延長ケーブルの影響はそれほど大きくありませんが、RG_EXTを3.3Ωに設定しスイッチング速度を速くすると、電圧や電流の変化によるノイズや回路的な高周波動作を誘発し、測定波形が大きく変化しています。これは、測定のために取り付けた延長ケーブルの影響によって測定機器での周波数帯域が変化し、余分なインピーダンスの付加により本来の波形とまったく違う波形が観測されている例です。

延長ケーブルを取り付けて測定を実施したゲート-ソース間電圧の波形。本来の波形とはまったく異なる。左:ターンオン波形、右:ターンオフ波形。

ターンオン波形

延長ケーブルを取り付けて測定を実施したゲート-ソース間電圧の波形。本来の波形とはまったく異なる。左:ターンオン波形、右:ターンオフ波形。

ターンオフ波形

図3. 延長ケーブルを取り付けて測定を実施したゲート-ソース間電圧の波形。本来の波形とはまったく異なる

注意点として、観測されている波形が本来の波形か、何らかの影響を受けて本来の波形とは違うものが観測されているのかということを、常に念頭において観測する必要があります。そのためには、正確な観測ができる方法はもちろん、観測に影響を与える要因を知っておく必要があります。

図4にこの測定に使用した差動電圧プローブの等価回路を示します(*1、*2)。通常、電圧プローブの周波数特性はプローブのヘッド部を含めて設定されています。しかしながら、DUTの測定端子に延長ケーブルを取り付けると、数十nsの高速なスイッチング波形を観測する場合、浮遊インダクタンスLEXTと電圧プローブ本体の入力容量Cとの間で共振現象が誘発されます。そのため、本来の電圧波形に重畳した高周波の電圧リンギングが発生し、実際のサージよりも大きなサージが観測されることがあります。

差動電圧プローブの等価回路。
図4. 差動電圧プローブの等価回路

  • *1. 参考資料:「ABCs of Probes」 Application Note(No. EA 60W-6053-14)Tektronix, 2016年1月、および「WaveLink Medium Bandwidth(8-13GHz)Differential Probe」 Operator’s Manual(924243-00)TELEDYNE LECROY, May 2014
  • *2. 参考資料:「WaveLink Medium Bandwidth(8-13GHz) Differential Probe」 Operator’s Manual(924243-00)TELEDYNE LECROY, May 2014

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