2014.07.15
・電源の場合は設計開始時点で仕様が完全に決まっていないことが多々あるが、可能な限り仕様を固めてから設計に取りかかる。
・現実的な電源設計においては、電源ICが担う部分が大きく、使うICによって回路や部品が決まる。
・量産に向けての判断では、要求仕様に対して適合、不適合だけではなく、トレードオフによる調整も必要。
基本的な確認を終えたところで、設計の手順について説明します。
これは、AC/DCコンバータに限らず、おおよその設計はこのような手順を取ります。最初に要求仕様を確認して、それを実現するための部品を選択します。ここで、「制御用電源ICの選択」となっているのは、最近の電源設計ではほとんどの場合電源用ICを利用するため、実質的に電源ICを選択してそのICを中心に設計を行うことになります。続いて、ICが必要とする部品を選定し定数などを計算して設計を進めます。図面が上がったら試作品を作り、性能の評価を行い、量産、そして出荷という流れになります。
1番目は、要求仕様を明確にすることから始まります。本来、これが一番最初で一番大切なのですが、電源仕様は「回路全体の仕様が決まらないと決めることができない」という宿命があり、全体の設計期間の終わりごろに大急ぎで設計をしなければならないなど、電源設計者を困らせるポイントかもしれません。とはいっても、何か決めなければ進みませんので、仮仕様を作り進めていくことが多いと思います。
厳密なことをいうと、「仕様がはっきりしないと設計はできない」のが本当のところなのですが...
仕様固めに必要な主な確認項目を書き出しました。入力条件を例にとると、国内向けだけなら100VACを考えればよいのですが、世界に向けて販売するものであれば、さらに広範囲な電圧への対応が必要になったり、国によっては電圧が不安定なところもあるので、どのくらいのマージンをもつかなど、仕様によって部品の選択が大きく変わります。
他の項目も、要求仕様に適合する電源を設計するために詳細な吟味が必要になります。
2番目は、制御用の電源ICの選択となります。1で確認した要求事項をもとに、適する電源方式、トランス方式かスイッチング方式か、降圧か昇圧か、フライバックかフォワードか、そしてAC/DCコンバータでは重要な検討事項の絶縁型か非絶縁型かといったこと決めて制御ICの選択に入ります。つまり、制御ICの選択は、電源方式を決めることになります。
現実的な電源設計においては、電源ICが担う部分が大きく、使うICによって回路や部品が決まってきます。言い換えれば、ICを中心に設計をしていくといってもよいと思います。
ICと電源方式が決まると、ICのアプリケーション例などを参考に設計を進めることになります。トランス設計も含め、周辺回路のコンデンサや抵抗などの定数を決定していきます。
設計では、電気、電子の知識はもちろん、部品の知識、そして特に経験が必要になります。こういった知識や経験をもとに設計を進めますが、わからないことやうまくいかないことがでてくる場合があります。そのような場合は、部品メーカのサポートを利用して、無駄なく迅速に設計を進めることが可能です。
さて、図面完成し、部品リストもでき、基板レイアウトができれば、試作・評価に入ります。
試作においては、まずは基本動作の確認から始めますが、動作が正しいかどうか判断が難しい場合があるかと思います。そのような場合には、設計している仕様に合致するとは限りませんが、ICメーカがそのICの評価ボードを用意していることが多いので、それを利用する手があります。確実に動作している評価ボードを利用して、設計した回路が正しい動作をしているか比較検討することができます。
そして、デバックや最適化が終われば、量産に向けての判断をします。この時に、要求仕様を完璧に満足できないことがあります。その際には、どうしても譲れない仕様は再設計となったり、トレードオフ、つまり何かを少し妥協して全体として目標に近づけるなどの検討が必要になります。
おおよそは、このような手順で設計を進められればよいかと思います。
AC/DCコンバータを理解し設計に進むための基礎内容がわかる資料をご用意いたしました。
AC/DC変換の基本から高電圧DC/DC変換の方式、そして設計手順概要や検討事項など、設計への導入が示されています。
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