2019.09.10
・従来の絶縁型フライバックコンバータの二次側の置き換えなので、実際の動作確認は非常に重要。
・軽負荷時に二次側MOSFETが共振動作によりONしてしまう場合があり、対策は4つほどある。
1) DRAIN 端子接続抵抗R1を小さくする
2) 強制OFF時間が長い機種(IC)に変更する
3) 二次側MOSFETのドレイン-ソース間にスナバ回路を追加する
4) トランスの巻線比Ns / Npを小さくする
・各対策にはトレードオフとなる注意事項がある。
前回、トラブル①として「二次側MOSFETがすぐにOFFしてしまう場合」を取り上げ対策を示しまた。そして、同時にこの対策の注意点があることも示しました。今回は、この注意点に対する対処を説明します。
以下の回路図は前回示したものと同じもので、二次側MOSFETの誤OFFを防ぐための対策①-1として、フェライトビーズの追加とフィルタ用抵抗R1の調整(増加)を示したものです。しかしながら、この対策においてR1の値が大きすぎる場合、軽負荷時に二次側MOSFETが誤ってONしてしまう場合があります。そのメカニズムを右下の図を使って説明します。
このトラブル②に関しては、対策が4つほどあります。しかしながら、トラブル①の対策に対してこのトラブル②が生じているのと同様に、各対策にはトレードオフとなる注意事項があります。対策が4つあることから、最初に対策と注意事項をまとめました。
トラブル②:軽負荷時に二次側MOSFETが共振動作によりONしてしまう場合 | |
対策 | 注意事項 |
---|---|
対策②-1 DRAIN 端子接続抵抗R1を小さくする |
R1を小さくしすぎるとノイズフィルタ効果も小さくなるため、トラブル①の「二次側MOSFETがすぐにOFFしてしまう」状態に逆戻りする可能性がある |
対策②-2 強制OFF時間が長い機種(IC)に変更する |
強制OFF時間を長くしすぎると、重負荷時に二次側MOSFETのONが遅れてしまう可能性がある |
対策②-3 二次側MOSFETのドレイン-ソース間にスナバ回路を追加する |
共振動作が起こる範囲(無負荷~中負荷)では、スナバ回路の追加によって待機電力が増加し、効率も悪化する |
対策②-4 トランスの巻線比Ns / Npを小さくする |
一次側MOSFETのVDS耐圧マージンが減る |
※トラブル②に対する対策という意味で「対策②-n」という番号を使用。
フィルタ用抵抗R1の値を小さくすることで、VDS2の共振振幅が低くなり、誤って二次側MOSFETがONする動作を防ぐことができます。トラブル①の対策としてR1の値を大きくする方法を挙げましたが、R1を大きくしすぎた場合、もしくは、最初の選択値が大きすぎた場合には、R1の値を見直して小さくする方向で調整を行います。
※注意事項:R1を小さくしすぎるとノイズフィルタ効果も小さくなるため、DRAIN端子電圧に発生するノイズにより、トラブル①の「二次側MOSFETがすぐにOFFしてしまう」状態に逆戻りする可能性があります。対策が堂々巡りになる場合は、他の対策を試みることになります。
二次側MOSFETがOFFしてから共振一周期(誤ONが発生する期間)より長い時間、二次側MOSFETを強制OFFすることで誤ON動作をマスクすることが可能です。
この設計事例で採用した電源ICのBM1R001xxFシリーズは「設計に使うIC」で説明したように、強制OFF時間(Compulsion OFF Time)が異なるピン互換シリーズです。強制OFF時間は、DRAIN端子に発生する共振波形で二次側MOSFETの誤ON、つまりトラブル②を防止するためのマスク時間で、同期整流化する回路の条件に基づいて強制OFF時間を選択できるように、BM1R00146F~BM1R00150Fの5機種が用意されています。
本事例では、強制OFF時間が2μ sec(Typ.)のBM1R00147Fを選択しましたが、対策として強制OFF時間が3.6μ sec(Typ.)とより長いBM1R00149Fを用いた例を示します。
※注意事項:強制OFF時間を長くしすぎると、重負荷時に強制OFF時間によって二次側MOSFETがONするタイミングが遅れてしまうことがあるため、重負荷時での動作確認が必要です。以下はあくまで例ですが、強制OFF時間が4.6μ secとこの設計では長すぎるBM1R00150Fを使った場合に生じるONタイミングの遅れと、マスキング効果とOFF時間が適正なBM1R00149Fを使った場合の波形です。
下図のように、二次側MOSFETのドレイン-ソース間に、RsnbとCsnbによるスナバ回路を追加することによってVDS2の振幅を減衰させます。
※注意事項:共振動作が起こる範囲(無負荷~中負荷)では、スナバ回路の追加によって待機電力が増加し、効率も悪化するので、確認と検討が必要になります。
トランスの巻線比を変更することによってVDS2の振幅を減衰させることができます。
※注意事項:波形図が示すように、一次側MOSFETのVDS1が大きくなるため、一次側MOSFETのVDS耐圧マージンが減ります。VDS1が耐圧以上にならないようにトランス巻線比を考慮が必要です。
AC/DCコンバータを理解し設計に進むための基礎内容がわかる資料をご用意いたしました。
AC/DC変換の基本から高電圧DC/DC変換の方式、そして設計手順概要や検討事項など、設計への導入が示されています。
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