DC-DCコンバータ|応用編

リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例事例4 : 貫通電流による起動トラブル②

2022.06.28

この記事のポイント

・負荷となる回路ブロックの回路電流が、電源立ち上がり時と立ち下がり時で大きく異なる場合は、起動のトラブルが起こる可能性がある。

・フォールドバック電流制限回路の特性と出力電流(負荷)の特性を十分に評価する必要があることを理解する。

事例4:貫通電流による起動トラブル②

これは「事例3:貫通電流による起動トラブル①」と似ていますが、回路ブロックの回路電流が、電源立ち上がり時と立ち下がり時で異なる場合です。回路電流の例を図1に示します。

リニアレギュレータに接続する回路の回路電流が電源立ち上がり時(赤矢印)と立ち下がり時(青矢印)で異なる例

図1. 回路電流が電源立ち上がり時(赤矢印)と
立ち下がり時(青矢印)で異なる例

リニアレギュレータによる貫通電流がある回路ブロックへの給電とフォールドバック電流制限

図2. 貫通電流がある回路ブロックへの給電と
フォールドバック電流制限

この回路ブロックを、「事例2:定電流負荷による起動トラブル」で説明した、フォールドバック電制限回路を搭載したリニアレギュレータの出力に接続した場合の立ち上がり(図1の赤矢印)を図2に示します。Ⓐ点から動作を開始し、Ⓑ点Ⓒ点へと移動し正常に起動するので、立ち上がりに関しては問題がないように見えます。

次に、リニアレギュレータ起動時に、出力コンデンサと回路ブロックにある複数のコンデンサを充電するための突入電流が流れる場合を想定します。図3は想定される電源構成図です。図4は起動波形ですが、図1で示した立ち下がり時に大きな貫通電流が流れる回路ブロックではなく、そのような電流が流れない回路ブロックを接続した場合を最初に説明します。

リニアレギュレータ。想定される電源構成図

図3. 想定される電源構成図

リニアレギュレータに立ち下がり時に大きな貫通電流が流れない回路ブロックを接続した場合の起動波形

図4. 立ち下がり時に大きな貫通電流が流れない
回路ブロックを接続した場合の起動波形

  
          

リニアレギュレータの入力VINが立ち上がると、それに追従して出力VOUTも立ち上がります。VOUTが1.8Vに達すると接続している回路ブロックが動作し始めます。リニアレギュレータのVOUTが立ち上がり始めると、VOUTに接続されている出力コンデンサ他、複数のコンデンサに突入電流が流れます(図4のⓐ点)。リニアレギュレータの出力電流IOUTが増加し、フォールドバック電流制限回路が作動するので、VOUTが一旦0.6Vまで低下しますが(図4のⓑ点)、コンデンサへの充電が終わると必要なIOUTを供給できるようになるので再び出力電圧が上昇を始め、最終的に設定電圧に達します(ⓒ点)。接続した回路ブロックの電流が、図1のように電源立ち下がり時に増えない場合は、このように正常に起動します。

続いて、図1のように電源立ち下がり時に回路電流が大幅に増加する回路ブロックを接続した場合のリニアレギュレータの起動動作を説明します。同様に出力コンデンサ他、複数のコンデンサの充電を必要とする想定です。図5は電流フォールドバック曲線に、この場合のリニアレギュレータの動作を重ね合わせたグラフで、図6はその動作波形を示しています。
  

リニアレギュレータに立ち下がり時に大きな貫通電流が流れる回路ブロックを接続した場合の起動とフォールドバック電流制限

図5. 立ち下がり時に大きな貫通電流が流れる
回路ブロックを接続した場合の起動と
フォールドバック電流制限

リニアレギュレータに立ち下がり時に大きな貫通電流が流れる回路ブロックを接続した場合の動作波形(起動しない。)

図6. 立ち下がり時に大きな貫通電流が流れる
回路ブロックを接続した場合の動作波形
(起動しない)

       

リニアレギュレータはⒶ点から動作を開始し、VOUTが1.8Vに達すると回路ブロックの動作が始まります。リニアレギュレータのVOUTが立ち上がり始めると、VOUTに接続されている出力コンデンサ他、複数のコンデンサに突入電流が流れ、リニアレギュレータの出力電流IOUTが増加し、Ⓑ点でフォールドバック電流制限が動作します。

これによってVOUTはⒸ点(約0.6V)までフォールドバックします。回路ブロックは、この電圧では図1が示すように800mAほどの電流を必要としますが(Ⓓ点)、フォールドバック電流制限回路により500mAに制限されるため、Ⓒ点(約0.6V)でVOUTは上昇できずラッチ状態になり起動できなくなります。

このように、リニアレギュレータの出力に接続する回路ブロックの回路電流特性が、電源電圧に対して単調増加ではない、あるいは立ち上がり時と立ち下がり時で電流が大きく違う場合は、試作で正常に動作したとしても、フォールドバック電流制限回路の特性と突入電流値のバランスによって、起動に関するトラブルが発生する可能性が隠れていることを理解しておく必要があります。

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リニアレギュレータの基礎として、動作原理、分類、回路構成による特徴、長所・短所を理解するためのハンドブックです。加えて、リニアレギュレータの代表的な仕様(規格値)と、効率と熱計算に関しても解説しています。

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