2020.12.18
ここまで11回にわたり、昇圧型DC/DCコンバータの基板レイアウトについて説明してきました。今回は最終回として、今までのポイントと各記事へのリンクをまとめました。
・スイッチング電源の設計において、実装基板のレイアウト設計は回路設計同様に重要。
・この章では昇圧型DC/DCコンバータの基板レイアウトについて解説する。
・基板レイアウト設計において回路の電流経路と流れる電流の性質を理解することは重要(昇圧型DC/DCコンバータに限らない)。
・スイッチングMOSFETのオンとオフ時の電流の差分の系は、基板レイアウトにおいて非常に重要で最大限の注意を払う必要がある。
・基板レイアウトは、回路の電流経路と流れる電流の性質に基づいて設計する。
・CIBYPASSは、必ずICを実装する面と同じ面に配置し、できるだけICの入力端子の直近に配置する。
・CIBYPASSが望ましく配置されている場合、CINはICから2cm程度なら離れても構わない。また、裏面への配置も可能。
・大電流供給と高周波スイッチング電流に対する高速応答の両方が確保できるなら、CINとCIBYPASSを1個のセラミックコンデンサで兼ねることが可能。
・出力電流が小さければ出力コンデンサの容量は比較的小さくて済むため、セラミックコンデンサ1個で出力コンデンサと高周波用デカップリングコンデンサを兼ねることができる。
・フリーホイールダイオードは、ICや出力コンデンサと同じ面の直近に配置する。
・ダイオードとスイッチングMOSFETが接続するノードの配線が長くなると、配線インダクタンスにより誘起された高周波のスパイクノイズが出力に重畳される。
・スパイクノイズの対処にはスナバ回路が利用できるが、損失が生じるので注意が必要。
・インダクタはスイッチングMOSFET Q2の近くに配置し、配線の銅箔面積を必要以上に広くしてはいけない。
・配線幅を決定する指針として電流耐量を参照し、マージンを考慮した幅を選択する。
・インダクタの直下にグラウンド層を配置してはいけない。グラウンド以外の信号線も避けるべき。
・やむを得ずインダクタ直下に配線する場合は、磁力線の漏れが小さい閉磁路構造のインダクタを使用する。
・インダクタ端子間の距離を近くしない。
・基板実装だけでは放熱が不十分な場合はサーマルビアを設け、熱を基板の反対側に伝導させて熱抵抗を低減する。
・サーマルビアは熱伝導性を高めるためにメッキ充填できる内径0.3mm程度の小径ビアを推奨。
・穴の直径が大きすぎると、リフローはんだ付け工程ではんだの吸い上げ問題が発生する。
・サーマルビアの間隔は1.2mm程度とし、ICのパッケージ裏面放熱板の直下に配置する。
・IC裏面放熱板の直下だけでは放熱不足の場合は、IC周辺にもサーマルビアを配置する。
・IC裏面放熱板がグラウンド電位の場合は、広い銅箔パターンを設けてもEMIに悪影響を及ぼさない。
・帰還経路配線はインピーダンスが高くノイズを拾いやすい。
・帰還経路配線がノイズを拾うと、出力電圧に誤差が生じたり動作が不安定になったりする場合がある。
・帰還経路の配線は本文に示した4つのポイントに注意して行う。
・AGNDとPGNDは分離する必要がある。
・PGNDは分断することなくトップレイヤーにレイアウトすることが基本。
・PGNDを分断してビアを介して裏面で接続すると、ビアの抵抗やインダクタの影響で損失やノイズが悪化する。
・多層基板で内層や裏面にグランドプレーンを配置する場合は、高周波スイッチングノイズが多い入力やダイオードのPGNDとの接続に注意を払う必要がある。
・トップレイヤーのPGNDと内層PGNDプレーンの接続は、DC損失軽減のため多数のビアで行いインピーダンスを下げる。
・コモングランドや信号グランドとPGNDの接続は、高周波スイッチングノイズが少ない出力コンデンサ付近のPGNDで行い、ノイズが多い入力やダイオード付近のPGNDで接続してはいけない。
・基板レイアウトのポイントは、ダイオード整流も同期整流も基本は同じ。
・銅箔の抵抗は電圧降下となって表れ、温度依存性がある。
・銅箔のインダクタンスは、場合によっては高電圧を発生させるので要注意。
・インダクタンスの低減には、配線を短くすることが有効。
・コーナー配線は円弧を描くようにして配線インピーダンスの変化を低減し、ノイズを出さないようにする。
スイッチングレギュレータの採用検討や、設計した電源回路確認に必要なスイッチングレギュレータの特性を理解し評価する方法が示されています。
スイッチングレギュレータの採用検討や、設計した電源回路確認に必要なスイッチングレギュレータの特性を理解し評価する方法が示されています。