2017.08.17
・ネットワークトポロジーとは、通信ネットワークの接続形態のこと。
・ネットワークトポロジーの特徴を理解して、構築するシステムに適するものを選択する。
・本章の①無線方式の選択~③ネットワークトポロジーの検討は、本来は個別の作業ではなく包括的に行うもの。
この「無線設計ガイダンス」は、無線設計の経験があまりない、もしくは初めてという人が無線設計を始めるためのものです。ここでは、一例として、近年のIoTの1つである、ビルの空調に通信ネットワークを導入して、快適かつ省エネな空調システムを構築することをイメージしながら、以下の手順で、各々においてどの様なことをするのかを解説して行きます。
今回は③ネットワークトポロジーの検討です。
③ネットワークトポロジーの検討
前回までで、Wi-SUN対応Sub-GHz無線モジュールを利用すること、無線モジュールの選択、そして基本の動作確認を行いました。これで、とりあえず通信ができることがわかったのですが、次のステップとして「ビルの空調に通信ネットワーク」というシステムを構築するためのネットワークトポロジーを決めることになります。
ネットワークトポロジーとは、通信ネットワークの接続形態のことです。代表的な通信ネットワークトポロジーであるP2P、Star、Tree、Meshを図に示します。文字通りの形態をしており、由来がわかると思います。
P2P型ネットワークは、Peer to Peerの略語で、ピア トゥ ピアまたはピア ツー ピアと呼ばれています。基本的には対等役割を持った者同士の1対1の通信になります。サーバとクライアントの関係で言えば、双方がこのどちらの役目も果たす双方向通信のイメージです。
Star型ネットワークは、1台のハブにすべての端末を接続する形態で、今日のLANにおける主流のトポロジーです。1本のケーブルに障害が発生しても他の端末の通信に影響は出ませんが、ハブが故障した場合、すべての通信に影響が出ます。
Tree型ネットワークは、ルートノードと呼ばれる1つの木から枝分かれするように伸びていく形態です。USBのような、1対多通信になるネットワークが1つの例です。端末に障害が発生しても他には影響しませんがルートノードのハブが故障するとすべてが影響を受けます。ルートノードに複数のハブが接続し、それぞれのハブに端末が接続するものをクラスタツリー(cluster tree)と呼びます。クラスタは集団の意味です。
Mesh型ネットワークは、図のように網の目状にであり、各端末は少なくても他の1つの端末と1対1で接続しています。その中で、各端末が他のすべての端末と接続している形態をフルコネクト(full connect)型と呼びます。また、フルコネクトではないものをあえてパーシャルメッシュ(partial mesh:部分メッシュ)型と呼ぶ場合もあります。フルコネクト型では、1つの端末が故障しても他の端末間の通信には障害が起きないので、障害耐性はネットワーク中でもっとも高くなりますが、設置と管理コストがかかります。
さて、今回の例ではどのネットワークトポロジーを使うのが良いのでしょうか?それには、設置場所、つまりビルの構造や階数によって端末をどのくらい設置するのかなどを検討する必要があります。今回は下図のシステムを構築することにします。
ビルの各フロアに親機を1台置き、それに子機(端末/センサ)を10台設置することにします。また、各フロアの親機は有線で集中管理室につなぎます。いきなりすべてを無線化するのはハードルがかなり高いので、ここでは現実的にまずはフロアのみの無線化を前提に検討を進めます。
適するネットワークトポロジーが決まりましたが、1つ確認しなければならないことがあります。Sub-GHz無線モジュール「BP35C0」を使うこと決めましたが、この無線方式およびモジュールが、スター構造に対応しているかどうかということです。
これに関しては、「②-2 無線デバイスの仕様確認」で確認したプロトコルスタックと、どの様なファームウェアが入手可能なのかを確認します。
BP35C0に関しては、ロームからHANデュアルスタックおよびHANデバイススタックが提供されています。これはHAN:Home Area Network用のプロトコルで1対多、つまりスター構造が実現可能なので、問題なく今回検討したネットワークトポロジーでシステムを構築できることが確認できました。
次回は、「④ハードウェアの検討」を予定しています。
Sub-GHz無線はM2MやIoT、ワイヤレスセンサネットワークなどの新市場をはじめ、幅広い分野での活用が検討されています。このハンドブックは、Sub-GHz無線の活用から機器開発の基礎までを解説しています。
Sub-GHz無線はM2MやIoT、ワイヤレスセンサネットワークなどの新市場をはじめ、幅広い分野での活用が検討されています。このハンドブックは、Sub-GHz無線の活用から機器開発の基礎までを解説しています。