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エンジニアコラム

5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る

第5回
車載向けプライマリ電源IC外付けMOSFET用途に開発したDFN2020WFパッケージ

注目ワード

車載向けMOSFETの新製品開発を担当しております柳沼と申します。今回、ADAS(先進運転支援システム)向け電源ICの外付けMOSFETに最適な小型パッケージDFN2020WF(2020サイズ)を新たに開発しました。そして、その新パッケージにローム第4世代微細プロセスを使用したNch MOSFETチップを搭載した新商品をリリースします。

昨今、自動車業界の中で目まぐるしい進歩を続けているのがADASに代表されるような自動運転に繋がる技術分野です。ADASの中でも、ミリ波レーダーやLidarといったセンシングユニットは、次世代自動車の「目」の役割として期待されていることから、今後もさらなる技術進歩が予想されます。一般にセンシング機能の高度化は、回路規模の増大を招きます。そのため、プライマリ電源ICに求められる電流供給能力の増加が顕著な傾向にあります。

一般的に、パワートランジスタを内蔵した電源ICの電流供給能力は大きくても数A程度ですが、これ以上の電流が必要になる場合は、パワートランジスタを外付けとする電源ICを使用して電源を構成する必要があります。

こういった背景から、このような用途に最適なMOSFETを提案するために、小型かつ10A以上といった大電流能力を持ったMOSFETを開発しました。そして、パッケージ設計に関しては、車載向け、中でもADAS用プライマリ電源ICの外付けMOSFET用途をキーワードに、以下の特長を持たせました。

1つ目の特長は、端子側面にメッキ処理を施すことで実現したWF(Wettable Flank)構造です。

WF構造とは、基板実装時において端子側面部に半田フィレットが形成される構造を指します(図1参照)。側面に半田フィレットが形成されることにより、半田付け状態を目視確認することが容易になります。

車載向け機器は、AOI(自動光学検査)の実施により半田付け実装の良否判定することが必須とされますが、WF構造の部品を用いることで半田付け状態のAOIを確実に実施することが可能になります。

また今回、ローム独自の工法を採用することで、メッキ処理された端子側面高さを100µm以上確保可能です。メッキされた端子側面が高くなれば半田実装時のフィレットも高くなり、半田付け状態の視認性も向上します。したがって、AOI検査をより確実に実施することが可能になります。

図1:Wettable Flank構造

2つ目の特長は、一般的な端子配置形状(DFN2020WF-L8)に加えて、ローム独自の端子配置形状(DFN2020WF-L7)も用意した点です(図2参照)。

一般的な端子配置は、ドレインとソースがパッケージ側面で隣り合う配置になっていますが、ローム独自の端子配置では、ドレインと向き合う位置にソース端子を配置しました。

ドレイン端子とソース端子が隣り合うことがない構造にすることで、半田ブリッジや異物などによるドレイン‐ソース間のショートリスクを排除できます。

プライマリ電源IC外付け用途のように、MOSFETのドレイン‐ソース間のショートモードが後段回路ブロック全体に影響を及ぼすような場合に、物理的にリスクを低減可能な形状と言えます。

図2:DFN2020WF-L8とL7の違い

これらの特長を持つ新開発パッケージを用いて、まずはNch 40V(ID=12A、Ron_typ=21mΩ、Qg_typ=9.1nC、Cisss_typ=520pF)の新製品をリリースします。今後、Pch第5世代微細プロセスを用いた-30V/-40V品の展開も予定しています。

最後に、今後予定している車載向け新製品について少し。

まずは、Nch第4世代微細プロセスの40Vシリーズを順次展開予定です。パッケージとしては、今回のDFN2020WFに加え、TO252、HPLF5060(5060サイズ)、HSMT8AG(3333サイズ)を予定しております。HPLF5060では、ワイヤ接続ではなくクリップ接続を用いることで120Aまでの大電流性能を5.0×6.0mm小型サイズで提供可能になります。HSMT8AGではローム独自の端子形状とすることで、温度サイクル試験時の実装信頼性が向上しています。また同様にこれらのパッケージを用いて、Pch第5世代微細プロセスの-30V/-40Vシリーズも展開して行く予定です。

今後も車載向け用途において「使いやすい」を特長とした製品開発を続けて行きますので、よろしくお願いします。

5回にわたりました当コラムは今回で最後になります。最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。