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エンジニアコラム

5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る

第1回
xEV向けインバータ回路のゲート駆動向け
バイポーラトランジスタを開発

注目ワード

みなさん、はじめまして!ロームでバイポーラトランジスタの新製品開発を担当しています田中と申します。
今回から5回連載で、パワートランジスタ・パワーダイオードの新製品をそれぞれの開発担当が直接解説するコラムを始めます。新製品プレスリリースなどとは違ったエンジニア目線の記事にしていくつもりですので、よろしくお願いします。

バイポーラトランジスタとあらためて言われると、逆に少し考えてしまうかもしれませんが、ご存じの通り電子部品の基本中の基本の部品です。バイポーラトランジスタはトランジスタの一種で、一般には単にトランジスタと呼ばれることが多いと思います。

バイポーラトランジスタは、N型とP型の半導体を接合した半導体素子です。P-N-PもしくはN-P-Nの構造をとり、正孔と電子の両方、つまり双極で動作することから「バイポーラ」と呼ばれます。一般にはコレクタ、ベース、エミッタの3つの端子があり、電流増幅や回路をオン・オフするスイッチとして利用されます。

ちなみに、バイポーラトランジスタの対となるトランジスタとしてユニポーラトランジスタが存在します。最近あまり聞かない用語ですが、電界効果トランジスタ(FET)が該当します。さて、うんちくはこのくらいにして本題に入ります。

バイポーラトランジスタは、比較的安価で様々な用途で主流のトランジスタでしたが、近年の省エネ要求から高効率化のためにMOSFETやIGBTが使用されるケースが多くなっています。しかしながら、バイポーラトランジスタを使用するほうが優位となるケースも多々あり、そういったアプリケーションのために今回新たにバイポーラトランジスタの開発を行いました。

今回開発したのは、インバータ回路などのゲート駆動向けに高いコレクタ電流(パルス):Icpを保証した、2SAR642PHZG(PNP型)2SCR642PHZG(NPN型)になります。

近年、環境問題や燃料問題から自動車の電動化が加速しています。従来のガソリン車に代わりハイブリッド車や電気自動車の需要が増加し、ガソリン車には存在しなかった様々な機器が搭載されるようになっています。

特に高電圧のバッテリーが搭載されることから、その制御に高耐圧スイッチングデバイスの需要が高まっています。高耐圧スイッチングデバイスを駆動するにはゲートドライバICが必要となりますが、デバイスの動作条件は機器や開発者の意向によって多岐にわたります。

そのため、ゲートドライバICの汎用性を高めるため、ゲートドライバICと高耐圧スイッチングデバイスの間にバイポーラトランジスタによるバッファを備えるケースが増加しています。

例として、ゲートドライバICとスイッチング素子(MOSFETやIGBT)、そしてバイポーラトランジスタで構成されたインバータ回路を示します。

5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る:第1回 xEV向けインバータ回路のゲート駆動向けバイポーラトランジスタを開発

この回路例では、スイッチング素子を駆動するために、スイッチング素子のゲート容量を短時間で十分にドライブできるゲートドライバが必要なります。使用するスイッチング素子に対してゲートドライバICの駆動能力が足りない場合は、バッファとしてバイポーラトランジスタを利用することで対処可能です。

xEVをターゲットに需要が伸びているインバータ回路では、スイッチング素子の電流容量は増加傾向にあり、バッファとして使うバイポーラトランジスタにも高い電流駆動能力が求められています。そのため、今回開発した新製品の2SAR642PHZG2SCR642PHZGは、この市場ニーズ意識した仕様になっており、1msで10Aのコレクタ電流(パルス)ICPを保証しています。以下に主要な仕様を示します。

5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る:第1回 xEV向けインバータ回路のゲート駆動向けバイポーラトランジスタを開発

このように、バイポーラトランジスタが有用なアプリケーションや市場に向けて新製品を開発していきますので、今後も注目をお願いします。