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エンジニアコラム

回路設計とEMC設計の塩梅

第6回 製品仕様書(3)
一般的なEMC評価指標例

全数検査の規格値項目の中にはEMC評価指標がある

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こんにちは! ロームの稲垣です。

第6回は製品仕様書の3回目です。前2回のコラムで、製品仕様書の概要が掴めたかと思います。製品仕様書に関係して良くいただく質問に、半導体集積回路(LSIやIC)は製品仕様書に記載されている規格値を、どれ位の割合や頻度で検査しているか、というものがあります。例えばこんな質問です。

 Q:出荷検査は1,000個に1個の割合?それとも100個の1個の割合?
 Q:規格値のすべての項目を検査する?主要項目のみ?
 Q:検査は製品ロットが新しくなった時だけ実施?

そして私たちは、

 A:全数・全項目の検査を実施している

と、回答しています。製品として出荷するものは全て、1個1個を自動出荷試験機で検査を行います。検査項目数は製品の種類にもよりますが、数100項目から数1,000項目にもなりますが、全項目の検査を行います。中には高温試験まで実施しているものもあります。

もう少し詳しい話をすると、半導体集積回路(LSIやIC)の元になるシリコン・ウエハ(円盤状のシリコン基板の上に複数のLSIやICが作られている)の状態で全数検査・全項目検査を行います。その後、1個毎スクライブ(切り離し)して、パッケージ封止(樹脂封止等)をして、再び全数検査・全項目検査を行います。このように、複数回の出荷試験に適合したものだけを製品として出荷しています。製品の品質保証においては多様な手法や考え方がありますが、ロームでは全数検査・全項目検査を基本としています。

さて、話を電磁両立性(EMC)に移します。全数検査が実施されている規格項目の中には、EMCの代用評価指標も含まれています。よく見かけるものとして、PSRR(Power Supply Rejection Ratio)、CMRR(Common Mode Rejection Ratio)、EMIRR(EMI Rejection Ratio)等があります。

PSRRは電源電圧変動除去比で、電源電圧を変動させた時にどの程度出力に変動が生じるかを示した比率です。CMRRは同相入力変動除去比で、差動入力を同電位で変動させた時に出力に生じる変動の比率です。

PSRR、CMRR共に差動演算増幅器(オペアンプ)等で規定されるDC特性ですが、周波数特性を持つため10[Hz]~1[MHz]位の周波数範囲でも測定します。10[Hz]等の低周波では100[dB]以上の実力のあるものが多く、おおよその変動は1/100,000以下となります(電気的特性としては右肩下がりで低周波程良い特性となる)。

最後のEMIRRは、EMI耐性や電磁干渉除去比と呼ばれます。高周波雑音にどの程度耐える事ができるかを示す指標となります。少し難しいですが、入力端子(+側)にRF(高周波)信号を印加したピーク電圧と、入力換算のオフセット電圧シフト量の比をデシベル表示したものです。

EMIRRは1[MHz]~数[GHz]位の周波数範囲で測定し、値が大きい程良い特性となります。EMIRRは数[GHz]で100[dB]位の値となり、右肩上がりの特性です。差動演算増幅器等では、半導体集積回路の周波数応答性能が高周波になる程悪くなるので、自然とEMIRRが良い値となります。

これらの値を比較検討する事で、製品のEMC特性の一部を評価する事ができます。EMC特性はIEC国際規格(CISPR含む)やISO国際規格による規定が数多くあるので、ここでは「一部」と表現しています。

御一読頂きまして、どうもありがとうございます。

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