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エンジニアコラム

5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る

第2回
オン抵抗を大幅に低減した、
第5世代-40V/-60V耐圧PchパワーMOSFET

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はじめして。ロームの白石と申します。第2回目は、私が担当している低耐圧MOSFETの新製品の中から、ロームの第5世代微細プロセスを用いて新規に開発した、「-40/-60V耐圧 PchパワーMOSFETシリーズ」を紹介します。

最初に、今回新たにPchパワーMOSFETを開発した背景を説明したいと思います。一般的にNch MOSFETが多く使用されていますが、Pch MOSFETにはその特徴ゆえの需要があり、市場要求の変化に対応するための開発が求められています。

Nch MOSFETが多く使われるのは、一般に同サイズのPch MOSFETに比べてオン抵抗が低いことが理由です。これは損失低減につながりますので、特に近年の重要なポイントになります。Nch MOSFETは移動度が高い電子をキャリアとするのに対し、Pch MOSFETは正孔をキャリアとするため移動度が電子よりも約3倍大きく、電流が流れにくいことから、素子サイズが同じならオン抵抗が高くなってしまいます。

一方、Nch MOSFETにも検討課題があります。ハイサイド側にNch MOSFETを使用する場合、ゲート電圧を入力(ドレイン)電圧より高くしなければオンしません。そのため、ゲート電圧用に別途昇圧回路を設けるなど、回路構成が複雑になってしまいます。対するPch MOSFETは、ゲート電圧を入力電圧(ソース)より低くすれば駆動できるので特別な駆動回路は必要なく、回路構成が簡素化できるといった利点があります。

このような利点からPch MOSFETは、工作機械、ロボット用モータ、産業機器FAN、電源回路向けのスイッチング用途として幅広く使用されています。またDCモータ、ステッピングモータ駆動用Hブリッジ回路やスイッチング電源回路のハイサイドスイッチとして使用されることも多く、Nchのローサイドスイッチとの組み合わせで使用されます(図1参照)。

図1:Pch MOSFETが使用される代表的な回路と用途例
図1:Pch MOSFETが使用される代表的な回路と用途例

こういった市場、用途で使われているPch MOSFETですが、昨今の産業機器や民生機器では電源の入力電圧により高い電圧、例えば24Vなどを使用するケースが増えていることから、より高いドレイン・ソース間の耐圧を持つものの需要が高まっています。

しかしながら、必要とされる高い耐圧を実現すると、オン抵抗が上昇するというトレードオフが生じます。

一般的に産業機器や民生機器向け電源のスイッチング周波数は比較的低いため、MOSFETに関わる損失は導通損失が支配的となり、MOSFETのオン抵抗が直接的に影響を及ぼします。これは、簡単に許容できないポイントです。耐圧を高めつつオン抵抗も低減するための手立ての1つとして、素子面積を大きくするアプローチがありますが、結果としてパッケージも含めたMOSFETのサイズも大きくなってしまいます。

そこで今回、高入力電圧に対応しつつ低いオン抵抗を実現するために、ローム第5世代微細プロセスを用いて耐圧-40V/-60VのPch MOSFETシリーズを新たに開発しました。

第5世代微細プロセスを用いたことで、ゲートトレンチ構造を従来よりも75%微細化でき、電流密度を高めることに成功しました。これによりA・Ron(単位面積あたりのオン抵抗)は業界トップレベルを実現しました。オン抵抗は従来品に比べ-40V耐圧品で62%、-60V耐圧品では52%削減することができました(図2参照)。

図2:第5世代-40V/-60V耐圧Pch MOSFET従来品と新製品のA・Ron改善結果
図2:第5世代-40V/-60V耐圧Pch MOSFET 従来品と新製品のA・Ron改善結果

例えば、第5世代新シリーズのRD3L07BAT(TO252/-60V/-70A/12.1mΩ)は素子サイズの最適化により、前シリーズに比べてドレイン電流(電流容量)は5倍、オン抵抗(VGS=10V Max)は85%低減を実現*しています。 *同耐圧従来品RD3L140SP(TO-252/-60V/-14A/84mΩ)との比較

アプリケーションは産業機器をはじめ、さらに広がることが予想されるため、パッケージのラインアップも拡充しました。従来から産業機器向けに使用されているTO-252、SOP8、TSMT8(3028 size)、TSMT6(2928 size)、より放熱性の高いシリーズとなる裏面放熱パッケージHSOP8(5060 size)、HSMT8(3333 size)、HUML2020L8(2020 size)と、幅広い機器、用途、実装条件に対応可能なパッケージを用意しました(図3参照。表内の各品番をクリックすると、該当製品詳細ページへリンクします。)


5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る:第2回 オン抵抗を大幅に低減した、第5世代-40V/-60V耐圧PchパワーMOSFET

図3:拡充されたパッケージラインアップ

最後に、今後の新しい低耐圧MOSFETシリーズのリリース予定を少し。

産業機器用FANモータ用途、通信基地局・サーバー電源向けDC/DC、同期整流/ORing回路向け36V/48V/54V入力に対応する、次世代の微細プロセスを用いた40V/60V/100V/150V耐圧Nch パワーMOSFETシリーズのリリース予定があります。

また、より高い入力電圧に対応するロードスイッチ向け100V Pch DualパワーMOSFETシリーズや、Hブリッジ回路向けに±40/±60/±100V/Nch+Pch Dual パワーMOSFETシリーズもリリース予定です。

これらの素子が搭載されるパッケージに関しても、従来のパッケージに加えて、ワイヤレス構造を用いた大電流パッケージや、より小型のパッケージの展開も予定しています。

それでは、次回に続きます。どうぞご期待ください。