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エンジニアコラム

第8回 評価回路・基板(2)
接地線(GND・グランド)の取り扱い

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こんにちは! ロームの稲垣です。

第8回は、評価回路・基板の2回目です。半導体集積回路(LSIやIC)の評価基板の接地線の接続方法や、評価基板の接地配線のレイアウト等について解説します。

まず評価基板の接地線の接続方法ですが、基本的には半導体集積回路の接地端子が基準・基点となると考えて下さい。製品によっては、接地端子が複数ある場合もありますが、その多くはLSIやIC直下で短絡されています。評価基板ではそこから基板の外側に向かって接地線が配線されています。

評価基板で基準となる接地電圧は、半導体集積回路(LSIやIC)の接地端子での値となります。この事を頭に入れておくと、正確な測定を行う際に役立ちます。特に雑音レベルやクロストーク等(微小信号)の測定では、接続する接地線の位置に注意する必要があります。ノイズ・メータやスペクトラム・アナライザでは、その位置、つまり半導体集積回路の接地端子のなるべく近くにプローブの接地側を接続すると、真値に近い値が測定できます。

次に複数の評価基板や、複数の半導体集積回路(LSIやIC)がある場合を考えます。良くある質問に、

 「双方の接地線は分離しても良いですか?」

というものがあり、その理由は、

 「アナログ系とパワー系の評価基板があって、実験すると接地線を分離して接続しない方が雑音特性が良いので」

と言うものです。

果たして、そうでしょうか?

答えはノーです。複数の評価基板や評価対象がある場合の基本として、双方の接地端子は必ず短絡する事が大変重要です。もし短絡されていないのであれば、双方間の接地電位差が不定となって正常動作できなくなってしまいます。

質問の例では、意図して短絡はしていないが、回路のどこかを経由して間接的に短絡されているという状態にあったと推測します。実験では上手くいっても、このままの状態で量産に入ると異常動作する不具合が発生する確率が大変高くなります。したがって、接地線の扱いは大変重要な事項となります。

少し発展させて、ユーザーが自身で評価基板のアートワーク(基板レイアウト図)を作成する場合を考えてみましょう。

アナログ系・デジタル系・パワー系の半導体集積回路(LSIやIC)の接地線は、どのように引けば良いでしょうか?

結論から言いますと、2種類の解があります。

1つ目は、全体の電気的特性を優先させる場合の解です。上記の各系(アナログ系・デジタル系・パワー系)の接地線は当然短絡しますが、それぞれの系毎の接地線の間にスリット(切れ目)を入れる方法です。どこで短絡させるかも電気的特性に大きく影響しますが、決して分離してはいけません。

2つ目は、電磁両立性(EMC)の特性を優先させる場合の解です。この場合は、接地線の間のスリット(切れ目)は入れずに、ベタGNDで各系の接地端子を短絡させます。これは電源電流の流れる経路と、接地電流の流れる経路を評価基板の上下(多層プリント基板の場合)で同じ位置にします。この接地電流を電磁両立性(EMC)の世界ではリターン電流と呼びますが、このリターン電流が自由に流れるようにレイアウトする事が重要となります。スリット(切れ目)等があると、迂回する経路を流れて電源電流と接地電流による磁界発生が打ち消されずに、電磁干渉(不要輻射・エミッション)が起きて特性の悪化に繋がるからです。

電気的特性を優先させるか、電磁両立性(EMC)の特性を優先させるか大変悩ましいですが、電磁両立性(EMC)は予想しない誤動作や異常動作に繋がるので、製品の信頼性を高める上でとても大切です。この様に、接地線(GND・グランド)の取り扱いには細心の注意が必要となります。

御一読頂きまして、どうもありがとうございます。

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