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業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM

3つの特徴と独自機能が
IGBT IPMの課題を解決

BM6337x/BM6357xシリーズ

注目ワード
  • 業界トップクラスのノイズ性能と低損失を両立
  • スイッチング損失と導通損失を減らす
  • スイッチングの高速化
  • 放射ノイズ=EMIを増加
  • DC入力の3相AC出力IGBTインバータ
  • EMC対策の緩和
  • 部品点数やコストの削減
  • サーミスタを外付けしなくても済む
  • 抵抗値を測定することで機種を識別
  • 保護機能は重要
  • 短絡保護
  • SCP
  • 制御電源電圧低下時誤動作防止回路
  • UVLO
  • 熱遮断回路
  • TSD
  • FO端子
  • 白物家電や小型産業機器のモータ用インバータに向けて開発

-それでは、BM6337x/BM6357xシリーズが開発背景となっている各課題にどのように対応しているのか、具体的に教えてください。

最初にBM6337x/BM6357xシリーズの最も重要なポイントは、業界トップクラス*のノイズ性能と低損失を両立させたことです。*2021年4月22日現在 ローム調べ

-いままで、ノイズに関する話はありませんでしたが。

低消費電力化のためにIGBT IPMの低損失化を図る試みは、基本的にどのメーカーでも行っていると思います。IGBTの損失を低減するには、概論としてスイッチング損失と導通損失を減らすことになります。スイッチング損失を減らすには一般的にスイッチングの高速化が有効ですが、同時に放射ノイズ=EMIを増加させてしまいます。近年、低損失を優先するあまりEMIが大きくなり、EMC(電磁両立性)を満足するための対策がままならず、低損失に加え低ノイズであることが強く求められています。BM6337x/BM6357xシリーズはこの点に注力しながら、小型化とさらなる使いやすさの実現を目指して開発したIGBT IPMになります。

それでは、特徴を説明して行きますが、その前にBM6337x/BM6357xシリーズがどんなものかイメージできないとわかりにくいので概要を説明しますね。

BM6337x/BM6357xシリーズは、IGBT、ゲートドライバ、ブートストラップダイオード、回生用ファストリカバリダイオードを1パッケージに搭載したIPMで、DC入力の3相AC出力IGBTインバータになります。定格は、VCESが600Vで、ICは±10A/±15A/±20A/±30Aの4種類です。各電流定格に対して、IPMの過熱保護機能(TSD:熱遮断回路)にて自律的に過熱保護するBM6337xシリーズと、温度モニタ出力(VOT)を利用し、任意の温度で外部よりIPMを制御することで過熱保護するBM6357xシリーズの二種類があります。パッケージは各機種に対してHSDIP25とHSDIP25VCの2種類を用意しています。

IGBT IPM BM6337x/BM6357xシリーズのブロック図。/IGBT IPM BM6337x/BM6357xシリーズに採用されている2種類にパッケージ。
IGBT IPM BM6337x/BM6357xシリーズのブロック図とパッケージ

重要なポイントになる特徴が3つあります。

  • 1. 業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立
  • 2. 温度モニタ機能の精度を大幅に改善し、外付けサーミスタの削減を検討可能
  • 3. 基板実装後の製品識別機能により、誤実装を検出可能

1つ目は、先に最も重要なポイントとして挙げた、「業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立」した点です。BM6337x/BM6357xシリーズは、内蔵しているFRD(ファストリカバリダイオード)のソフトリカバリ性能とIGBTの最適化によって、一般品に比べて放射ノイズをピーク時の比較で6dB以上低減しています。また、内蔵のIGBTは導通損失とスイッチング損失を低減した最新世代で、従来品に比べて電力損失を6%(fc=15kHz時)低減しています。

業界トップクラスの低ノイズ性能と低損失を実現したBM6337x/BM6357xシリーズ IGBT IPM。

この低ノイズ特性と損失レベルは業界トップクラスで、先ほど説明したように損失低減のためのスイッチング高速化は放射ノイズ増加を招くと言うトレードオフがありながら、非常に高次元で両立しています。

-低損失で低ノイズであることが重要なのはよくわかります。このことによるメリットにはどんなことがありますか?

搭載機器の低消費電力化を図りつつ放射ノイズが小さくなることでEMC対策の緩和が期待できます。基本的にノイズフィルタは必要なのですが、従来のものより簡略化ができる可能性があります。場合によっては、部品点数やコストの削減にもつながります。

-2つ目は、「温度モニタ機能の精度を大幅に改善」したと言うことですが。

一般品の多くは、90℃時の温度モニタ精度が±5%(5℃相当)保証です。BM6337x/BM6357xシリーズは大幅な改善に成功し、サーミスタと同等の90℃時±2%(2℃相当)保証を実現しています。この性能を提供できることで、今までのように高精度の温度モニタ用にサーミスタを外付けしなくても済む可能性があり、可能となれば部品点数や設計工数の減らすことができます。

サーミスタと同等の高精度温度モニタを可能にしたBM6337x/BM6357xシリーズ IGBT IPM。

-3つ目は、「基板実装後の製品識別機能により誤実装を検出可能」とありますが、これはどんな機能ですか?

通常、IPMの機種名はパッケージ裏面に捺印されているため、基板に実装した後は機種名が見えなくなってしまいます。BM6337x/BM6357xシリーズもそうですがパッケージが同じで電流定格が異なる機種があり、他社製品でも同じパッケージを採用した機種があるので、万一誤実装が起きても実装後に外観による識別ができません。BM6337x/BM6357xシリーズは実装後の製品識別を可能にするため、特定の端子間の抵抗値を測定することで機種を識別できる機能を新に追加しました。

一般のIPMは実装すると製品名が確認できない。

-具体的にどうやって識別するのですか?

この図は、ブロック図の該当端子部の抜粋に識別用の抵抗を示した模式図です。HINU/HINV/HINWの各端子は、本来U/V/W相上側GBT制御入力端子ですが、図のように識別用の抵抗も備えています。HVCCはHVICの制御電源端子で、動作時は15V(標準)を印加しますが、識別機能を使う際にはHVCC‐GND端子間を0Vにして、GNDとHINU/HINV/HINWの各端子の抵抗を測定します。図のBM63373S-VA/-VCは10A/600Vの製品で、HINU‐GND間の抵抗値は25kΩ(標準)、HINVとHINWはそれぞれ100kΩ(標準)となっています。表にあるように、製品ごとにHINU‐GND間の抵抗値が異なっており、これを利用して識別します。

測定方法に関してはいくつかの条件があります。詳細はアプリケーションノートを参照してください。

IGBT IPM BM6337x/BM6357xシリーズは、機種識別抵抗を内蔵しており、実装後の機種確認が可能。

IGBT IPM BM6337x/BM6357xシリーズの各機種の識別抵抗値一覧。

なかなかユニークな機能ですね。ここまで、3つの大きな特徴を教えていただきましたが、他に知っておくべきポイントはありますか?

これら3つの特徴に加えて、BM6337x/BM6357xシリーズの保護機能は利便性の高いものになっていますので説明させてください。IGBT IPMは大きな電力を扱うので保護機能は重要です。BM6337x/BM6357xシリーズは基本的な保護機能を搭載しているだけではなく、保護が働いた場合にそれを外部に知らせるFO端子を持たせました。

搭載している保護回路は、短絡保護(SCP)制御電源電圧低下時誤動作防止回路(UVLO)、過熱保護(TSD:熱遮断回路、BM6337xシリーズのみ)になります。UVLOはハイサイドとローサイドの両方に搭載されていますが、他の2つはローサイドだけにある保護機能です。これらの保護機能は良く知られたもので、基本的に自身を破壊などから保護します。

FO端子はエラー出力で、保護回路が作動するとそれを外部に知らせることができますが、単にフラグを立てるだけではなく、出力する信号の長さによってどの保護機能が作動したかを知らせます。表にあるように、例えば短絡保護であれば、保護機能発生時間が45µs以下であれば、FOは45µsの信号を発します。この信号時間を制御用外部MCUで検出することで、どのような保護が作動したかがわかり、記録も可能です。保護機能とFO出力については、アプリケーションノートに説明がありますので、詳しくはアプリケーションノートを参照してください。

IGBT IPM BM6337x/BM6357xシリーズの保護機能作動検出時のFO出力の信号出力時間。

-なるほど。これはIPMという名称の通りIntelligentですね。

そうですね。このような機能を含んでいることがIPMのメリットです。

-最後になってしまいましたが、BM6337x/BM6357xシリーズのラインアップとアプリケーションを紹介いただけますか。

最初に簡単に説明した通り、BM6337x/BM6357xシリーズは600V耐圧のIBGT IPMで、電流定格が10A/15A/20A/30Aの4種類になります。BM6337xシリーズとBM6357xシリーズの違いは、BM6337xシリーズはIPMの過熱保護機能(TSD:熱遮断回路)にて自律的に過熱保護をし、BM6357xシリーズは温度モニタ出力(VOT)を利用し、任意の温度で外部よりIPMを制御することで過熱保護する事になります。さらにパッケージが2種類用意されているので、計16機種になります

製品ラインアップ

品名 電流定格(A) コレクタ-
エミッタ間電圧
VCES(V)
温度モニタ
機能
TSD*
過熱保護
パッケージ名
(mm)
BM63373S-VA 10 600 業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM:3つの特徴と独自機能がIGBT IPMの課題を解決
HSDIP25
(38.0mm×29.4mm×3.5mm)
BM63374S-VA 15
BM63375S-VA 20
BM63377S-VA 30
BM63373S-VC 10 業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM:3つの特徴と独自機能がIGBT IPMの課題を解決
HSDIP25VC
(38.0mm×33.7mm×3.5mm)
BM63374S-VC 15
BM63375S-VC 20
BM63377S-VC 30
BM63573S-VA 10 業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM:3つの特徴と独自機能がIGBT IPMの課題を解決
HSDIP25
(38.0mm×29.4mm×3.5mm)
BM63574S-VA 15
BM63575S-VA 20
BM63577S-VA 30
BM63573S-VC 10 業界トップクラスの低ノイズと低損失を両立した600V耐圧IGBT IPM:3つの特徴と独自機能がIGBT IPMの課題を解決
HSDIP25VC
(38.0mm×33.7mm×3.5mm)
BM63574S-VC 15
BM63575S-VC 20
BM63577S-VC 30

*TSD:Thermal Shut Down

BM6337x/BM6357xシリーズは、白物家電や小型産業機器のモータ用インバータに向けて開発されています。主なアプリケーションとしては、このようなものがあります。

  • ・AC100~240Vrms(DC400V以下)系モータ制御用インバータ装置
  • ・エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの白物家電向けのインバータ
  • ・産業用ロボット搭載の小容量モータなどの小型産業機器向けインバータ
  • ・その他、インバータ制御を行う、コンプレッサやモータ搭載アプリケーションなど

こちらに、具体例がありますので、是非参照してください。
https://www.rohm.co.jp/solution/industry/motor/motor-iso-240v-ac-servo

-それでは、まとめをお願いします。

IGBT IPMは、ディスクリートIGBTと駆動回路や保護回路が1つのパッケージに組み込まれているので、省スペースで設計が簡単なのが特徴です。このように利便性の高いIPMですが、近年パワーデバイスに関しても小型化、低消費電力化への貢献が求められており、BM6337x/BM6357xシリーズはこれらを背景に開発を行った新製品です。

BM6337x/BM6357xシリーズの重要なポイントとして3つの特徴を挙げましたが、特に業界トップクラスの低ノイズ性能と低損失を実現したことが大きな貢献になると考えています。これは説明した通り、低損失に主眼をおいたことで放射ノイズが増えEMC対策がままならいという問題を解決に向けるとともに、部品点数や設計工数の削減にもつながるポイントです。

他にもサーミスタと同等の高精度温度モニタ機能、製品識別機能、作動した保護機能の種類を知らせるFO端子など、ユニークな機能を備えており、白物家電や小型産業機器のモータ用インバータアプリケーションに適したIGBT IPMになっています。

仕様や機能などは細部まで説明できませんでしたが、データシート、アプリケーション他、「関連情報」に示した資料などで是非確認をお願いします。仕様の概要については、Tech Web内のTECH INFO 知って得するキーポイントの「600V耐圧IGBT IPM:BM6337xシリーズ -仕様編-」が参考になると思います。

-どうもありがとうございました。