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昇圧型DC/DCコンバータの動作原理

昇圧型DCDCコンバータとは

トランジスタ

低い電圧を高い電圧に上昇させる

昇圧型DC/DCコンバータは、DC(直流)からDC(直流)に変換しますが、変換する際に入力電圧よりも高い電圧を出力(昇圧)する電子回路です。たとえば、電圧が低いバッテリー電源からでも、昇圧型DC/DCコンバータを使用することで高い電圧を得ることが可能です。

また、入力電圧よりも低い電圧を出力(降圧)する降圧型DC/DCコンバータも存在します。DC/DCコンバータは、入力電圧から高い電圧も低い電圧も取り出すことができる重要な電子回路です。

さまざまな電子機器が開発される中で、扱う直流電圧も多様化しており、必要な電源も変わっています。そのため、電圧を意図した強さに変更できるDC/DCコンバータは多くの機器で利用されています。

ICなどの半導体デバイスは、5Vや3.3Vなど低い電圧で動作するものが多いため、電源は電子回路よりも大きな電圧を出せるものを選び、電圧を下げる(降圧)形で利用されるのが一般的です。

リニアレギュレータとスイッチングレギュレータの違い

DC/DCコンバータは変換する方式の違いにより、「リニアレギュレータ」と「スイッチングレギュレータ」に分かれます。

リニアレギュレータは、入力と出力の間に制御素子を入れ、降圧する仕組みをもつ装置です。直列に接続されただけのシンプルな構成であり、回路が簡単という特長を持ちます。ただし、制御素子で降圧する際に熱が発生し、これにより電流が消費されるため、変換効率が約30〜50%、高くてもせいぜい70%と効率が悪いというデメリットがあります。

また、入力と出力の降圧比が大きいほど発熱し、効率が悪くなるだけでなく熱対策も必要になります。熱対策としては筐体を逃がす、ヒートシンクを取り付けて放熱するといった方法が挙げられます。変換効率や発熱のことを考慮し、リニアレギュレータは小電力向けの電源に適します。

スイッチングレギュレータは、リニアレギュレータとは異なり降圧だけでなく昇圧や反転(負電圧)などさまざまな変換が可能です。スイッチ素子を用いて必要な出力電圧になるまでスイッチをONにして電力を供給し、出力電圧が必要な値まで到達したらスイッチ素子をオフにします。スイッチのON/OFFを繰り返すことで電圧を調整します。

スイッチングによる変換はリニアレギュレータの発熱と異なり変換効率は90%前後と高く、また、効率がよいだけでなく発熱も小さいという特長があります。

しかし、スイッチングの動作によるノイズが発生するため、ノイズ対策の設計が必要です。また、スイッチ素子以外にもコイルやコンデンサなど外付け部品も必要となり、ノイズ対策も含め設計が複雑になりやすいというデメリットがあります。ただし近年ではスイッチングICの中にコイルやコンデンサといった必要な部品が内蔵されているものもあり、回路設計が楽なものもあります。

スイッチングレギュレータでは発熱の少ない回路を作れることから、低電圧大電流が必要となるデジタル回路の電源に適しています。

※本記事では昇圧について解説しているため、DC/DCコンバータはスイッチングレギュレータのことを意味します。

DC/DCコンバータの用途

DC/DCコンバータは、あらゆる電化製品や電気システムに広く使用されています。たとえばパソコンや洗濯機、ゲーム機、電気自動車など、多くの家電製品、電気製品で使用しているといってよいでしょう。

家庭ではAC100Vの電源が使用できるコンセントがありますが、電気製品が必ずしも100Vの交流電源をそのまま使って動いているわけではありません。製品の中で100Vの交流電源を直流電源に変換し、DC/DCコンバータによって電源電圧を昇圧または降圧してさまざまな回路に供給しています。

たとえばノートPCは、コンセントにACアダプタを接続して電源をいれると起動します。ノートPCにはACアダプタ以外にもバッテリーが内蔵されており、バッテリーの充電が必要です。また、CPUやメモリなどの集積回路、ディスプレイやディスク、キーボードやマウスなどの入力装置といった、さまざまな装置が内蔵されているため、それらの装置にもそれぞれ異なる電圧量を供給しなければいけません。そのため、DC/DCコンバータが装置にあわせて電源電圧を昇圧または降圧します。これにより、各装置が正常に機能しノートPCが動作します。

ノートPCに限らず、多くの電気製品で集積回路を始めとした電子回路が組み込まれており、DC/DCコンバータもあわせて組み込まれて動作しています。ただし、トースターや電気ストーブのようにヒーターを扱うものなど一部の製品は、100V交流電流をそのまま使用している、つまりDC/DCコンバータが組み込まれていない製品も存在します。

昇圧型の動作原理

ここでは昇圧型DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)の動作原理について解説します。基本構成はそれほど難しくなく、入力電源、コイル、スイッチ、出力コンデンサを用いて、昇圧が可能です。

昇圧型DC/DCコンバータの動作原理

コイルの性質を利用して電圧を上げる

電圧を昇圧するには、コイルの性質を利用します。コイルには、急激な電流の変化が生じると、元々の状態を維持しようとする力が働きます。

回路の間にスイッチをつなぎ、スイッチをONにして元々電気が流れていない状態から電流を流すと、コイルの性質で電流を流させまいとしてエネルギーを蓄積し、一定以上の電気は流れないようにします。逆に、スイッチをOFFにして電気が流れないようになると、それまで蓄積していたエネルギーを放出し、元々入力されていた電気以上の電圧で電気を流す(高電圧)動きをします。

昇圧型DC/DCコンバータはこの、電流が流れている状態(スイッチがONの状態)からスイッチをOFFにすることで発生する高電圧を利用します。スイッチのON/OFFを高速に切り替えることで、元々流している電圧よりも高い電圧を作り出すことができます。

スイッチをONにした時の動作

スイッチをONにすると、入力電源からコイルを経由してスイッチへと電流が流れます。このまま電気を流し続けると電流が増加しますが、コイルは電流が増加するのを妨げようとす動くため、コイルにエネルギーが蓄積されます。

昇圧型DC/DCコンバータの動作原理

スイッチOFFにした時の動作

スイッチをOFFに切り替えると、コイルは電流をそのまま流し続けようとする性質により、高電圧が作り出され、それまでコイルに蓄積されたエネルギーを放出します。この放出された電流がコンデンサに流れていき、コンデンサに充電されます。

昇圧型DC/DCコンバータの動作原理

スイッチをONにしている間はコイルに電気が蓄積され、OFFにした瞬間にコイルに蓄積されたエネルギーが放出されることで入力電源以上の電圧がコンデンサに充電されます。このステップで、スイッチのON/OFFを交互に繰り返していくと、電圧を任意のレベルまで昇圧することができます。

高い電圧に変換したい場合は、大容量のコンデンサが必要です。またスイッチ素子はトランジスタやMOSFETといった半導体素子が用いられます。

出力電圧はどこまで上昇する?

ここで気になるのは、出力電圧はどこまで上昇させることができるのか、という点です。この点は回路の設計で考えるべきところですので、解説していきます。

スイッチをONにしている間の電流変化量を考えていきます。コイルに蓄積される電圧をVIN、スイッチをONにしている時間をTON、インダクタンスをLと定義すると、スイッチをONにしている間に増加する電流は以下のように表されます。スイッチをONにしている時間TONが長いほど、コイルに蓄積される電流の増加量はあがっていきます。

 ION = 1 / L × VIN × TON

次に、スイッチをOFFにしている間の電流変化量を考えてみましょう。スイッチをOFFにするとコイルに蓄積されているエネルギーが放出されるため、コイルの電流は減少します。この減少量を求める数式は以下のように表されます。

 IOFF = 1 / L × (VOUT-VIN) × TON

電圧の上昇は、スイッチをONにしている間に増加する電流と、スイッチをOFFにしている間に減少する電流が同じ分だけ上昇します。そのため、IONとIOFFが等しいときのVOUTを算出する数式は以下のように導き出されます。

 VOUT = ( TON + TOFF )/ TOFF × VIN

昇圧比が大きくなると、最大出力電流が低下する

昇圧により電圧が増加することはわかりましたが、出力電流はどうなるか見てみましょう。スイッチがONからOFFに切り替わるまでの間にVINから供給される電流の平均をIIN、スイッチがOFFの間にVOUTが出力する電流をIOUTとします。電力は電圧(V)×電流(I)で求められるため、以下の数式になります。

 VIN × IIN = VOUT × IOUT

このため、昇圧により出力電圧を大きくすると、逆に出力電流が低下することがわかります。

たとえば、入力電圧(VIN)を5V、入力電流(IIN)を20Aとした場合の例を考えてみましょう。出力電流(IOUT)は、以下の数式で求められます。

 IOUT =(VIN × IIN)/ VOUT

出力電圧を10Vとすると、IOUT =(VIN × IIN)/ VOUT =(5 x 20)/ 10 = 10
出力電圧を20Vとすると、IOUT =(VIN × IIN)/ VOUT =(5 x 20)/ 20 = 5
出力電圧を25Vとすると、IOUT =(VIN × IIN)/ VOUT =(5 x 20)/ 25 = 4

以上から、出力電圧を増やせば増やすほど(昇圧比が大きくなるほど)、出力電流が低下することがわかります。上記数式では変換効率を考慮していませんが、変換効率を考慮すると出力電流がさらに低下します。

昇圧の動作原理を理解しよう

今回は、DC/DCコンバータの昇圧の仕組みについて解説しました。DC/DCコンバータはリニアレギュレータとスイッチングレギュレータの2つがありますが、昇圧できるのはスイッチングレギュレータのみです。また、スイッチングレギュレータは効率がよいため多くの電気回路で用いられています。

スイッチングレギュレータは、コイルの性質を利用して昇圧します。しかし、昇圧比が大きくなるに従って最大出力電流が低下するという点に注意が必要です。

昇圧・降圧の仕組みについては、電子回路の考え方としては基本となるものですので、コイルの性質および昇圧の動作原理についてしっかり押さえておきましょう。

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