プリントヘッド|基礎編

サーマルプリントヘッドの構造種類と製造方法

2024.06.27

サーマルプリントヘッド(TPH)は発熱体の構造及び製法から、“厚膜TPH”と“薄膜TPH”に大別することができます。薄膜TPHのカテゴリーでは、ロームの独自構造として“ステップフリー構造”と“STPH構造”のラインアップがあります。
“厚膜TPH”と“薄膜TPH”の最も大きな違いは、発熱体の厚みです。製造方法も異なり、“厚膜TPH”はスクリーン印刷で形成され、“薄膜TPH”はスパッタリングで形成されます。またTPHはセラミック基板単体で構成されている製品と、プリント基板を併用して構成されている製品があります。 “厚膜TPH”と“薄膜TPH”の構造には、それぞれメリットとデメリットがあります。

TPHの構造

”厚膜TPH”と”薄膜TPH”の構造の違いと、それぞれの特徴について説明します。

発熱体部の構造の違い

発熱体部の構造は“厚膜TPH”と“薄膜TPH”で大きく異なっており、発熱体が厚いTPHは厚膜TPH、発熱体が薄いTPHは薄膜TPHとなります。“厚膜TPH”はスクリーン印刷で形成され、発熱体厚みは数μmとなっています。“薄膜TPH”はスパッタリングで形成され、発熱体厚みはサブミクロン単位となっています。

厚膜TPH厚膜TPH

薄膜TPH薄膜TPH

共通部分の構造

発熱体部が形成されているセラミック基板を除き、基本的なTPH構造は“厚膜TPH”と“薄膜TPH”に二分されます。その構造は、セラミック基板単体で構成されている製品(一体構造)、プリント基板を併用して構成されている製品(二体構造)があります。

一体構造一体構造

二体構造二体構造

TPHは発熱体への通電状態を制御するためにドライバICを実装しています。ドライバICにはワイヤーで接続されている機種や、フリップチップ実装されている機種があります。TPHを制御するための入力信号、発熱体と接続する出力信号がそれぞれ接続されています。

また使用時に発熱体からの熱量により製品温度が上昇することで、誤動作により製品が損傷する可能性があります。そのため、温度状態を検出するためのサーミスタを実装しています。

製品においては、コネクタが実装されている機種、放熱板が貼付されている機種があります。コネクタはフラットケーブルに対応したモデルや電線ケーブルに対応したモデルがあり、TPHへ信号入力するインターフェースです。放熱板は発熱による温度上昇を適切に調整する機構となります。

製造方法

スクリーン印刷で製造される“厚膜TPH”と、スパッタリングで製造される“薄膜TPH”について、各々の構造の製造方法について説明します。スパッタリングとは、ウエハ表面に膜を付ける「成膜」の方法の一種です。

厚膜TPHの基板製造

  • 1. セラミック基板にグレーズを印刷します。印刷後は、乾燥、焼成の工程を経て、構造化されます。
  • 2. 配線は印刷のみでの形成ではなく、配線材料の印刷の後、フォトリソグラフィ、エッチングにより配線を形成します。
  • 3. 発熱体、及び共通電極、保護膜に関しては印刷することで形成します。
  • 4. 硬質保護膜に関してはスパッタにより成膜します。
  • 5. 発熱体抵抗値はトリミングしており、製品仕様の抵抗値になるように調整しています。

薄膜TPHの基板製造

  • 1. セラミック基板にグレーズを印刷します。印刷後は、乾燥、焼成の工程を経て、構造化されます。
  • 2. 発熱体、配線材料をスパッタして、フォトリソグラフィ、エッチングにより配線を形成します。
  • 3. マスキングして保護膜をスパッタにより成膜します。
  • 4. 発熱体抵抗値はトリミングしており、目的の抵抗値になるように調整しています。

実装工程

セラミック基板単体、あるいは二体構造(分離型構造と呼ばれることもある)に対して、ドライバICを複数実装することになります。ICの入出力パッドと基板回路はワイヤーボンディングで接続されます。フリップチップICについては、実装とボンディングを同時に実行します。個々の発熱体と接続する配線は、ドライバICの出力パッドと1対1で接続されています。対して、入力信号は複数のドライバICに対してシリアル接続もしくはパラレル接続しています。
ドライバICは樹脂でコーティングして外部影響より保護します。
製品においては、コネクタの実装、放熱板の貼付をします。

各構造の特徴

“厚膜TPH”と“薄膜TPH”の構造について、それぞれメリットとなる特性もあれば、デメリットとなる特性もあります。ここでは各々の一般的な特徴の違いについて説明します。

厚膜TPHと薄膜TPHの特徴

厚膜TPH 薄膜TPH
メリット
  • ・印刷により生産性が高い
  • ・抵抗値選択の自由度が高い
  • ・製品の平均抵抗値ばらつきが小さい
  • ・機械的負荷への耐性が高い
  • ・発熱体の配列が均一
  • ・隣接する発熱体の抵抗値ばらつきが小さい
  • ・発熱体の熱容量が小さく高速性が高い
  • ・発熱体部表面の平滑性が高い
デメリット
  • ・発熱体寸法の小型化が困難
  • ・プリンター組み込み位置の許容範囲が狭い

製品構造の特徴

  • 単体構造
  • 二体構造(分離型構造)
  • メリット
  • ・製品の部品点数が少なく生産性が高い
  • ・機械的強度が安定
  • ・配線抵抗値ばらつきが小さい
  • ・信号配線の柔軟性が高い
  • デメリット
  • ・部品の追加実装の余裕度が小さい
  • ・製造工数が多い