プリントヘッド|基礎編
サーマルプリントヘッドの抵抗値とばらつき
2025.01.20
サーマルプリントヘッドは、基板上の発熱体に電流を流すことで発生するジュール熱によって、感熱紙又は熱転写リボンなどの熱反応材料が反応し、印字が行われます。そのサーマルプリントヘッドの発熱特性を決める重要な要素に抵抗値があります。
サーマルプリントヘッドには多数の発熱素子が並んでいますが、ヘッド内の抵抗値のばらつきが小さい方が、それぞれの素子が均等に加熱され、印字の濃度ムラの発生が抑えられます。また、抵抗値の決定には印字電圧(VH)や印字速度にも考慮が必要です。一般的に高電圧や高速印字には低い抵抗値が、低電圧や低速印字には高い抵抗値が適しています。
サーマルプリントヘッドにおける抵抗値は、発熱体の平均抵抗値(\(R_{ave}\))とコモン抵抗値(\(R_{com}\))、ドライバーオン抵抗(\(R_{ic}\))の合成抵抗で検討します。
良好な印字品質を得るためには、それぞれの抵抗値の特性と役割を理解し、適切な抵抗値を設定する必要があります。
サーマルプリントヘッドの抵抗値について
サーマルプリントヘッドの抵抗値は、その値やばらつきにより印字品質やエネルギー効率に大きく影響します。
回路全体の電流分配や発熱量などに影響を与えるため、平均抵抗値(\(R_{ave}\))、コモン抵抗値(\(R_{com}\))、ドライバーオン抵抗(\(R_{ic}\))それぞれのバランスを考慮して最適な性能を引き出す設計が求められます。
各抵抗値の詳細について、以下にサーマルプリントヘッド本体の外観例と等価回路図の例を使用して説明します。

①平均抵抗値(\(R_{ave}\))
平均抵抗値(\(R_{ave}\))は発熱体抵抗(\(R_{res}\))とリード抵抗(\(R_{lead}\))を合わせた値で、同一ヘッド内のすべての発熱体の抵抗値を平均化した値を指します。発熱体の抵抗値に応じて、利用するサーマルプリントヘッドの平均抵抗値のばらつきを表した公差(%)を設定しています。
平均抵抗値が適切であれば、発熱体の加熱も安定し、均一な印字品質や効率的なエネルギー消費につながります。
\(R_{ave}\) = \(R_{res}\) + \(R_{lead}\):平均抵抗値
\(R_{res}\):発熱体抵抗
\(R_{lead}\):リード抵抗
平均抵抗値を数式で記述する場合、発熱体がNドットあるヘッドについて、i番目の発熱体をドット番号#iとして、発熱体抵抗値を\(R_{resi}\)、リード抵抗(個別配線抵抗)を\(R_{leadi}\)と定義すると、以下のように表現できます。
ドット番号#iの発熱抵抗値
\(R_i=R_{\mathrm{res}i}+R_{\mathrm{lead}i}\)
発熱体数がNであるサーマルプリントヘッドの平均抵抗値\(R_{ave}\)の計算式
\(R_{\mathrm{ave}}=\displaystyle \frac{1}{N}\sum_{i=1}^{N}R_i\)
仕様書に記載している平均抵抗値は、上記計算による\(R_{ave}\)を示しています。
実際には、個々の発熱体抵抗値及びリード抵抗(個別配線)の値には、ばらつきが存在します。サーマルプリントヘッドの抵抗値では、個別の発熱体抵抗値と配線抵抗値を区分することはできないため、各々の抵抗値は考慮しておりません。なお一般的に、発熱体抵抗に対してリード抵抗値は小さいため、その影響度も小さくなっています。
個別の発熱体抵抗値\(R_{resi}\)のばらつきや、\(R_{leadi}\)のばらつきはありますが、ドット番号#iの発熱抵抗値\(R_i\)は、ヘッドの平均抵抗値\(R_{ave}\)に対して、一定の規格値を満足するように製造しています。
②コモン抵抗(\(R_{com}\))
コモン抵抗とは、サーマルプリントヘッド内の印字電圧入力部(VH)から発熱体までの共通電極部の配線(コモンライン)に配置される抵抗です。この抵抗は、すべての発熱体が共通して接続される回路部分において、電流を制御し、全体の電流を安定させるために使用されます(発熱体抵抗値及びリード抵抗値を除く)。
コモン抵抗値は製品のサイズや仕様により変わります。厳密には、各ドット番号においてコモン抵抗の値は変動することとなりますが、ヘッド内で最もコモン抵抗値が高くなる中央ドットのコモン抵抗値を、代表してヘッドのコモン抵抗値として設定しています。
③ドライバーオン抵抗(\(R_{ic}\))
サーマルプリントヘッド製品内で使用するドライバー回路がオン状態のときに生じる抵抗で、サーマルプリントヘッドの各発熱素子を制御するためのスイッチがオンになったときに発生する内部抵抗となります。なお使用するドライバーICによりドライバーオン抵抗は変わります。
ドライバーオン抵抗が大きすぎると印字濃度が不足しやすく、逆に小さすぎると過剰な電流が流れ、印字濃度にムラが生じる可能性があります。したがって均一な印字品質のためには、用途に合わせた適切なドライバーオン抵抗の設計が重要です。また、トランジスタなどのスイッチング素子の選定においては、オン抵抗ができるだけ低い素子を使用することで電圧降下を最小限に抑え、発熱素子への電流供給を最大化できます。
ドライバーICのオン抵抗値は、各ドットにオン抵抗値が設定されます。そのためドット番号によって抵抗値が変動することになりますが、ばらつき値が小さいこと、ロジック電圧により変動することを考慮し、計算上は一律の値として扱っています。
抵抗値と印字電圧(VH)・印字速度の関係
サーマルプリントヘッドの抵抗値は、印字電圧(VH)や印字速度と密接に関連しています。
印字電圧(VH)
印字電圧は発熱素子にかかる電圧です。印字電圧が高いほど発熱素子にはより多くの電力が供給され、温度が高くなります。高温による故障を防ぐため、使用される電圧帯に応じて発熱体抵抗値を設定しています。
印字速度
高速でも高品質な印字を実現するためには、短時間で発熱体が必要な温度に達し、また急速に冷却される必要があります。一方で印字速度が遅い場合は、放熱速度を抑えている構造のため、発熱体が過剰に発熱しないようにしています。そのため、高速印字には抵抗値を低く、低速印字には抵抗値を高く設定するのが一般的です。
印字速度は、1ドットラインの印字時間である印字周期(SLT)によって決まります。
モバイル、POS、バーコード向けなど、用途に合わせた抵抗値の提案も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。