プリントヘッド|基礎編
サーマルプリントヘッドのドライバIC
2024.11.14
ドライバICとは、電子機器を駆動・制御するための集積回路のことです。熱を使用して印字をする仕組みのサーマルプリントヘッドでは、プリントヘッド内の多数の発熱体(ヒーター)の熱を制御するために専用のドライバICが使用されます。サーマルプリントヘッドに搭載されたドライバICを制御することにより、複数の発熱体の中から必要な部分のみの発熱を得ることが出来ます。ここではドライバICの制御に必要な4つの信号(CLK / DI / LAT / STB)や、動作原理について詳しく説明します。
ドライバICの信号と動作原理
サーマルプリントヘッドは文字、又はイメージを出力するために、用紙の進む方向に対し垂直方向のデータを、DI端子からCLK信号に同期させて1ドットずつ、1ライン分入力します。入力されたデータはサーマルプリントヘッドに搭載されたドライバIC内に保持され、1ライン分のデータが揃ったところで、LAT信号の合図により、シフトレジスタからラッチレジスタに移動します。
STB信号を入力することによって、ラッチレジスタ内で保持されたデータのHighのドットにだけ抵抗体に電圧が掛かり、発熱することで感熱紙が発色します。STB信号がオフになり通電が止まると、発熱体が冷却されて次の印字サイクルが始まります。この動作を毎ライン連続的に行い、かつ感熱紙が発熱体上を通過することにより、任意の文字や画像が出力されます。
ドライバICの信号の種類
サーマルプリンターで印字を行うには、専用のドライバIC内に設けられた複数の信号に応じて複数のヒーターの熱を制御する必要があります。以下に各信号の種類と役割について説明します。
①DI(データイン)信号
ドライバICに印字パターンのシリアル(直列)データを入力するためのデジタル信号です。サーマルプリントヘッドの複数の発熱体に対して、それぞれ「どのピクセルを加熱するか」といった情報を送り、印字のパターンを決定します。
②CLK(クロック)信号
電子回路やデジタルシステムにおいてタイミングを制御するために使用される信号です。サーマルプリントヘッドでは、データイン(DI)信号と連動して動作し、主にデータの転送や処理を正確に行うために使用されます。具体的には、DI信号の電圧がHighの状態でCLK信号がLowからHighに変わると、サーマルプリントヘッドにHighのデータが入力されます。逆にDI信号の電圧がLowのときにCLK信号が変わると、サーマルプリントヘッドにLowのデータが入力されます。
③LAT(ラッチ)信号
ドライバICのファンクションの一つで、外部から与えられる印字データを一時的に保持するための制御信号です。ラッチ信号は、データがシリアルにすべて転送された後に発生します。LAT信号が立ち上がると、シフトレジスタにシリアルで転送されたデータが「ラッチ(確定)」され、発熱体に反映されて印字が実行されます。
④STB(ストローブ)信号
サーマルプリントヘッドに入力された信号(LAT信号でホールドされた信号)に対応する発熱体に、特定のタイミングで電流を流し駆動させるトリガーとなる制御信号です。本信号のパルス幅によって発熱体への通電時間が決定されます。この通電時間を調整することで、印字の濃度や品質を調整することが可能です。また、発熱素子の駆動には大きな電力が必要となるため、STB信号により適切なタイミングで必要な時間だけ発熱させることで、消費電力を抑えながら効率的に印字を行います。
LAT信号/STB信号はヘッドによって正論理、若しくは負論理※1が設定されます。
※1正論理(アクティブハイ)負論理(アクティブロー):デジタル回路で用いる信号の解釈方法の表現。正論理は高い電圧が論理値 1 を、低い電圧が論理値 0 を表し、一方、負論理では高い電圧が論理値 0 を、低い電圧が論理値 1 を表します。
サーマルプリントヘッドのドライバICによる印字フロー
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- データ転送
- :DI信号でシリアルデータがシフトレジスタに送信され、クロック信号(CLK)で同期
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- データラッチ
- :LAT信号でデータがラッチされ、確定
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- 発熱駆動
- :STB信号でラッチされたデータに基づき、発熱体が駆動される
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- 印字
- :発熱体が紙に熱を加えて印字
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- 冷却
- :発熱体が冷却され、次のサイクルに移行
【印字例】

【タイミングチャート例】

このように、サーマルプリントヘッドのドライバICは、シリアルデータの転送、ラッチ、発熱体の駆動を制御し、印字動作を実現しています。またこれが連続的に行われることで、サーマルプリンターは高速かつ正確に印字を行います。
注意事項
サーマルプリントヘッドは精密電子部品であり、機械的、電気的衝撃により破壊する恐れがありますので、取り扱いには十分注意を行ってください。
電源入力時について
発熱体に損傷を与えないように、下記のシーケンス(電源オン/オフ)になるように制御してください。
電源投入時:VDD→VHの順
電源遮断時:VH→VDDの順
上記の順序が逆になると発熱体に損傷を与えると同時に正しい制御が行えません。
最大定格エネルギーについて
STB信号を入力すると発熱体にエネルギーが印加され、発熱します。サーマルプリントヘッドは印加エネルギーが一定以上になると発熱体が破損し、印字品位や発熱体の寿命に悪影響を及ぼします。そのため、STB信号の入力時間は最大定格エネルギーを超過しないようにご使用ください。
※印加エネルギーは、発熱体で消費される電力とSTBの通電時間の積で表すことができます。
静電気対策について
サーマルプリントヘッドを取り扱う作業者は、静電気によるサーマルプリントヘッドの破壊を引き起こす恐れがありますので、常にグランド接地のリストバンドを使用して作業を行ってください。作業場についても10Ω以下の値にてグランド接地を行ってください。また、使用される設備についてもグランド接地を行い、取り扱われる工具などは導電性のものを御用意ください。
以上、サーマルプリントヘッドのドライバICについて、実際の動作時に困り事が発生した場合は、お気軽にご相談ください。