無線設計のポイントとしてここまで、回路設計のポイントと基板設計のポイントについて説明してきました。今回は、基板実装を終えた次のアクションとなる「調整、測定時」のポイントを説明します。 無線設計のポイント:調整、測定時 ここまでの流れを確認する意味で、「回路設計」と「基板設計」のポイントも併せて示します。「調整、測定時」のポイントは、回路および基板設計の良し悪しを確認する作業です。
〈回路設計のポイント〉
-
- ・基本の回路は推奨(リファレンス)回路に従う
- ・アンテナも推奨回路に従う
- ・マスタークロックは通信規格仕様と開発機器の温度仕様に合わせて選択する
- ・RFのSAWフィルタの要/不要は環境により異なる
- ・無線部回路のインダクタ(コイル)やコンデンサは極力偏差が少ないものを使う
- ・インダクタ(コイル)は積層型より巻線型を推奨
〈基板設計のポイント〉
-
- ・グランド(GND)は極力強化する
- ・VCO、ループフィルタ回路は特に最短で配線を引く
- ・RFの配線の下層に他の配線は引かないようする
- ・配線を曲げる時には、直角ではなく角度をつけて曲げる
- ・RFのマッチング配線は、50Ωのインピーダンスラインを使う
〈調整、測定時のポイント〉
-
- ・調整は所望の特性が出ていない場合に実施する必要が生じる
推奨(リファレンス)回路などに基づいて設計されていれば基本性能は確保されているはずですが、基板の大きさや材質、配線材/幅などにより寄生パラメータの発生具合が変わるため、ほぼ調整は必須です。
- ・各種測定を開始する前に確認および調整しておく基本項目
- 1)マスタークロックの発信周波数
周波数のズレが大きい場合は、水晶や発振器が仕様を満たしているかどうか確認する必要があります。
場合によってはメーカに問い合わせます。
- 2)VCO発振周波数
キャリブレーション(調整)の結果で判定します。
- ・送信パワー、受信感度のバランスを見ながら、ネットワークアナライザ、スミスチャートを使ってマッチング回路を調整する
- ・標準規格を満足するようスプリアスの確認を行う
- ・アンテナのインピーダンスも確認する
チェックポイントでは所望のパワーが出力されていても、アンテナを通すとパワーが出ていないということが起こり得ます。
これらが、調整、測定時の重要なポイントになります。この中で、青で示した「VCO発振周波数キャリブレーション」、「マッチング回路の調整」、「スプリアスの確認」については次回から詳細を説明する予定です。
キーポイント:
・調整は所望の特性が出ていない場合に必要になる。
・主要なチェックポイントは、マスタークロック、VCO、マッチング、スプリアス、受信感度、送信パワー、アンテナインピーダンス。