IoT技術情報サイト
2020.11.24 センサ
「地磁気センサ」の記事の中で、磁気センサの1つとしてホールセンサを紹介しましたが、ホールセンサは代表的な磁気センサであり、非常に多く利用されアプリケーションも広範なので別個に取り上げました。
ホールセンサとは
ホールセンサとは、半導体を利用した代表的な磁気センサの1つです。ホール効果と呼ばれる電流磁気効果を応用したホール素子からなります。ホール素子は電圧を出力しますが、その電圧が非常に小さいため一般にオペアンプなどの増幅器を必要とします。そのため、ホール素子とオペアンプをワンパッケージ(多くはワンチップ)にしたホールICが作られています。IC化することで、外付け部品を削減でき扱いも容易です。
ホールセンサは、磁界の強さと向きを電圧の大きさと正負に変換します。主な用途は回転検出、位置検出、開閉検出、電流検知、方位検出などで、その応用範囲は非常に広範です。最も多く利用されているのは、冷蔵庫のドアや電子機器の蓋やケースなどの開閉検出などの非接触スイッチ用途としてです。また、磁界の大きさに比例したリニア電圧を出力するので、電流値などの値そのものを検出することも可能です。
ホール素子の動作原理
ホール素子に電流IHを流し、電流に対し直角に磁束Bが近づく(透過)すると、ローレンツ力の影響により電流と磁束との直角の方向に電圧VH(ホール電圧)が発生する現象を利用しています。これは、アメリカの物理学者Edwin Herbert Hallによって発見されたのでHall(ホール)効果と呼ばれています。
出力される電圧は、磁束密度に比例して増減します。また、フレミング左手の法則から、磁界の向き(N極・S極)によって電圧の向きが変わります。したがって、磁界の有無(大小)だけではなく、磁界の向きも検知できます。
ホールICの種類
ホールICは、出力の観点から大きく2つに分類することができます。
また、前述のように磁界の向き(N極・S極)も検知でき、その検知の仕方には主に3種類あります。
片側検知は、N極かS極のどちらかのみの磁界を検知して、磁束密度のしきい値でスイッチ動作を行い、ロジック(H/L)を出力します。コンパレータの動作と同じと考えることができ、比較的単純な開閉検知用途など非接触スイッチとして使われます。
両極検知は、N極とS極の両方を検知し、出力は片側検知同様にロジック(H/L)を出力します。S極検知用とN極検知用の2つの出力をもっているタイプは、磁界の極性の判別ができます。こちらも、開閉検知用途に多く利用されています。
交番検知は、N極とS極の入れ替わりを交互に検知します。入れ替わりをロジック信号に変換するので、その周期から回転速度などを計測したり、パルス数を移動距離に換算したりすることができます。モータやファンなどの回転制御、ホイールキーやトラックボールなどに利用されます(右図参照)。
半導体であるホールセンサは従来の物理スイッチに比べて摩耗などの故障がなく、小型化が可能です。これらのメリットから、多くのアプリケーションで利用されています。
・ホールセンサは半導体を利用した代表的な磁気センサの1つで、ホール効果を応用したセンサ。
・ホールICはホール素子とオペアンプが一体化しており扱いが容易。
・ホールセンサは磁界の強さと向きを電圧の大きさと正負に変換する。
・主な用途は回転検出、位置検出、開閉検出、電流検知、方位検出など。
・ホールICはリニア出力とデジタル出力に大別できる。
・磁界の向きの検知ができ、主な検知方式として、片極検知、両極検知、交番検知がある。