2017.06.13
この記事のポイント
・EMC(電磁両立性、電磁適合性)は、EMIとEMS両方の性能を両立することを意味する。
・EMI(電磁妨害、電磁干渉、電磁障害)は、電磁波の放射/放出(Emission)による他への妨害。
・EMS(電磁感受性)は、電磁波妨害(EMI)に対する耐性(Immunity)。
「スイッチングノイズ-EMC」というタイトルで、スイッチング電源に関するEMCやその対策などの解説をして行きます。最初にEMCに関する基礎的なことを確認し、続いてノイズ対策に話を進める予定です。
1回目は「EMCとは」と題して、スタートラインとなるEMC関連の用語を確認します。EMCもそうですが、英語の略語が多く、似たアルファベットが並びます。各用語の意味をきちんと理解して使わないと、場合によっては意味が通じなかったり、話がかみ合わなかったりすることがあるかもしれません。
EMCはElectromagnetic Compatibilityの略で、日本語では「電磁両立性」や「電磁適合性」という語が使われることが多いと思いますが、他の表現も若干あるかもしれません。「他の機器に電磁妨害を与えず、他の機器から電磁妨害を受けても本来の性能を維持すること」を意味しており、両方の性能を両立させる必要性から「電磁両立性」と呼ばれています。
「他の機器に電磁妨害を与えず」とありますが、これは、こういった配慮をしないと他の機器に電磁妨害を与えることを意味しています。EMI(Electromagnetic Interference)は電磁妨害(電磁干渉、電磁障害)を表す用語です。電磁波を出すことが妨害につながることから、Emission(放射、放出)という言葉と対で使われることがよくあります。スイッチング電源で言えば、スイッチングによってスイッチングノイズが発生することが該当します。
この逆の「他の機器から電磁妨害を受けても」に関する用語は、EMS(Electromagnetic Susceptibility)-電磁感受性になります。EMSにはImmunity(耐性、耐量、排除能力)が対で使われます。EMIを受けても、誤動作などの障害を起こさない耐性が求められます。
EMIの種類として、伝導ノイズ(Conducted Emission)と、放射(輻射)ノイズ(Radiated Emission)があります。これらは英語の略語より日本語が使われることが多いと思います。伝導ノイズは、ワイヤや基板配線を経由して伝わるノイズです。放射(輻射)ノイズは、空中に放出(放射)されるノイズです。これらに対してEMSでは、それぞれに耐量が求められます。関係を以下に示します。
以上ですが、端的に言うと、EMCはEMIとEMSが規格や規制を満足するかどうかが論点となるものです。上記の説明を表にまとめました。
用語 | 意味 | 特記 |
---|---|---|
EMC:Electromagnetic Compatibility 電磁両立性、電磁適合性 |
他の機器に電磁妨害を与えず、 他の機器から電磁妨害を受けても 本来の性能を維持すること。 |
EMIとEMS両方の性能を両立させる 必要性から電磁両立性と呼ばれる。 |
EMI:Electromagnetic Interference 電磁妨害、電磁干渉、電磁障害 |
電磁波の放射/放出(Emission)による 他への妨害。 |
EMCの観点からは、EMIを出さない/ 最小限にとどめることを要求される。 |
EMS:Electromagnetic Susceptibility 電磁感受性 |
電磁波妨害(EMI)に対する 耐性(Immunity)。 |
EMCの観点からは、EMIを受けても 障害が発生しない耐性を要求される。 |
伝導ノイズ Conducted Emission |
ワイヤや基板配線を経由して伝わるノイズ | |
放射(輻射)ノイズ Radiated Emission |
空中に放出(放射)されるノイズ |
次回は「スペクトラムの基礎」を予定しています。
これからEMCに取り組む設計者向けに、EMCのイメージを掴んでもらうためのハンドブックです。半導体デバイス、製品仕様、回路・基板の3つの観点とEMCの関係について、感覚的に理解を進めます。