この記事のキーポイント
・SPICEモデルの形式には、「デバイスモデル」と「サブサーキットモデル」の2種類がある。
・SPICEデバイスモデルでは、モデルの各パラメータ値を設定する。
SPICEでシミュレーションに使うモデルには、デバイスモデルとサブサーキットモデルがあることを前回説明しました。今回から2回にわたり、ダイオードを例にしてデバイスモデルの詳細を説明します。
SPICEデバイスモデル:ダイオードの動作原理
これからSPICEのデバイスモデルがどのように構築されているか、ダイオードを例に説明していきます。そのために、最初にダイオードの動作原理をおさらいします。半導体の理論が出てきますが、ポイントはデバイスモデルがどんなパラメータによって構成されているかということなので、無理に理論自体を理解しなくても大丈夫です。
以下の図は、シリコンダイオードの基本動作原理を示しています。ダイオードにバイアスをかけると、空乏層内の電場が弱まり、キャリアの拡散が起こって電流が流れます。また、ダイオードの順方向電流Idと、空乏層容量Cjは以下の式で表すことができます。
ダイオードのパラメータ
モデル式は、基本的に半導体の理論式と同じになります。デバイスモデルにおいては、これらのパラメータ値を設定していきます。
SPICEデバイスモデル:ダイオードのデバイスモデル実例
実際のダイオードのデバイスモデルを示します。これはロームが提供しているものです。
記述ルールの箇条書きにもありますが、アスタリスク「*」から始まっているのはコメントアウトです。モデルの簡単な説明など任意です。この例では、「.MODEL」からが実際の内容になります。「+」から始まる行は、パラメータの値を設定しています。デバイスモデルの記述とパラメータ表を比べてみてください。パラメータの設定がデフォルト値で良い場合は記述する必要はありません。
(その2に続く)
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