2020.12.18
・温度センサとは温度を計測するセンサ。
・温度センサには非常に多くの種類がある。
・温度センサICは、出力の観点からアナログ出力とデジタル出力に分けることができる。
・温度センサICは、温度データを出力する以外にも、付加機能を備えているものがある。
今回は、身近なセンサである温度センサについてです。温度センサには非常に多くの方式、種類があります。ここでは、温度センサICを中心に説明します。
温度センサとは
文字通り温度を計測するセンサで、温度を電圧や抵抗値などに変換します。最も身近な例としては、温度(気温)計や体温計、水温(湯温)計などがあります。基本的に、温度を制御したい場所の温度を計測し、温度を調整するなどの用途になります。
IoTにおいても温度データは非常によく利用されます。もちろん温度制御にも使われますが、どちらかと言えば温度データを適宜取得することで異常を検知するための情報とするなど、温度と状態・状況の関係を分析して利用することが多いかもしれません。
温度センサの種類
前述のように温度センサには非常に多くの種類があります。したがって、その分類も観点によって違ってきます。以下の図は、一般によく使われる分類の仕方です。また、種類が多いため主なセンサを示してあります。
以下に各センサの概要をまとめました。
温度センサIC | トランジスタやダイオードの温度特性を利用したセンサ。アナログ出力(電圧)とデジタル出力タイプがある。IC化されているので簡単に使用でき、デジタル出力タイプはマイコンとの通信も容易。温度測定に加えて、サーモスタット機能、携帯機器への使用を見込んだ省電力モードなどの付加機能のバリエーションを持つ。 |
---|---|
測温抵抗体 | 白金、ニッケル、銅などを利用した測温抵抗体の抵抗値が、温度に対してほぼ直線的に増加する特性を利用する。白金は安定性、直線性が高く、精度よく広い温度範囲での測定が可能。RTD(Resistance Temperature Detector)とも呼ばれる。 |
サーミスタ | 半導体の抵抗温度特性を利用。小型で高感度だが、直線性が課題。NTC(Negative Temperature Detector)とPTC(Positive Temperature Detector)があるが、通常温度測定に使えるのはNTCサーミスタ。スマートホンの過熱検知、冷蔵庫、エアコンの温度制御など、大小さまざまな機器に使われている。 |
熱電対 | 2種類の金属線の先端を接合させ接合部に発生する熱起電力(ゼーベック効果)を利用して温度差を測定する。熱電対にはさまざまな種類があり、主要なものはJIS規格で特性が決められている。-200℃~+1700℃と広範囲の温度測定が可能で、工業用途が多い。 |
バイメタル | 熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせたもので、温度によってスイッチのオン・オフを自動的に切り換えるサーモスタットは代表的な用途の1つ。膨張式温度センサ下にも分類される。 |
圧力式・膨張式 | 圧力式は、液体や飽和蒸気の圧力が温度によって変化することを利用したセンサ(温度計)。液体としては水銀が最も多く利用される。 膨張式は、液体封入ガラス温度計(例:寒暖計)などに使われる。温度上昇による液体の体積変化を毛細管内の液面位置を読み取る。 |
熱型 | 放射温度計で、赤外線を受けたセンサ素子の温度変化を、抵抗変化、熱起電力、焦電効果などにより電気信号として出力。 |
量子型 | 放射温度計で、センサ素子が赤外線の光量子によって直接励起されたことによるセンサ素子の抵抗や電圧などの変化を電気信号として出力。 |
実際の温度センサICの例
温度センサICはトランジスタやダイオードの温度による特性変化を利用したもので、ICチップ上にセンサ部分、検出と出力に必要な基準電圧源やアンプ、そして付加機能やデジタルインタフェースなどが作り込まれています。温度センサICは基本的に、そのICが実装されている部分もしくは近傍の雰囲気温度を計測します。
温度センサICは、出力方式の観点からアナログ出力とデジタル出力に分けることができます。
●アナログ出力温度センサIC
シンプルなアナログ出力温度センサICの例として、BD1020HFVの基本仕様、ブロック図、出力 vs 測定温度のグラフを示します。
BD1020HFV
ブロック図が示すように、温度センサ部と内部電源(REGULATER)、そして電圧を出力するためのバッファアンプというシンプルな構成です。これは温度センサICの基本構成であり、これをコアとして機能が付加された派生品ができています。グラフはこの温度センサICの出力が、高い直線性を持っていることを示しています。高い精度が得られるとともに補正などが必要なく使いやすいというメリットがあります。
パッケージは表面実装タイプで小型です。裏面中央にある金属パッドはブロック図のPGピンと一体です。このパッドにICチップが搭載されており、原則的にこのパッドの温度が出力されます。したがって、PCピンは測温したい場所、もしくはその近傍に接続します。
一般に、アプリケーションにおいて測定値そのものを表示したり記録したりする場合は、アナログ電圧をADコンバータなどでデジタル化し温度に換算する処理が必要になります。マイコンにアナログポート、ADコンバータが備わっていれば、このICの出力をそのまま接続可能な場合があります。
●デジタル出力温度センサIC
デジタル出力温度センサICは、測温データをデジタル信号で出力します。例として、2線式シリアルインタフェース搭載のBH1900NUXを示します。
BH1900NUX
BH1900NUXは2線式シリアルインタフェースを搭載したデジタル温度センサICです。ブロック図のTemperature Sensor部は、先に紹介したアナログ出力温度センサICと基本的に同等で、デジタル化のためのADコンバータ(ADC)と制御ロジック、Host(マイコンなど)との接続用シリアルインタフェースを備えています。小型パッケージにより、測温したい近傍に設置できます。
ALERTピンは、このICが備える付加機能であるサーモスタットモード用の出力です。温度が設定したしきい値を超えた場合にフラグを出すことができます。
BD1020HFVとBH1900NUXは、ロームセンサ評価キットの温度センサモジュールに使われていますので、チェックしてみてください。
ローム主催セミナーの講義資料やDCDCコンバータのセレクションガイドなど、ダウンロード資料をご用意いたしました。