2021.04.13
・スイッチング素子のSiC MOSFETは、VGSに変化に対するRonの変動が大きいのでゲート駆動電圧VGSの設定が重要になる。
・SiC MOSFETのゲート駆動電圧VGSの検討は、効率と安全面のバランスを考慮する。
ここでは、PFC回路のスイッチング素子として使用しているSiC MOSFETに対する、適切なゲート駆動電圧VGSの値について検討します。
回路は、Power Device Solution Circuit/AC-DC PFCの一覧にあるシミュレーション回路「A-2. PFC BCM Diode-Bridge-Less Vin=200V Iin=2.5A」を例にします(図9参照)。回路図の詳細は、こちらからも確認できます。
この例では、図9に示したローサイドのスイッチング素子であるSiC MOSFET SCT2450KEを駆動するための適切なVGSの値を、シミュレーションを利用して検討します。
図9:PFCシミュレーション回路「A-2. PFC BCM Diode-Bridge-Less Vin=200V Iin=2.5A」
図10のように、従来のSi(シリコン)MOSFETのオン抵抗Ronは、オン状態ではVGSに対してほぼ一定です。それに対してSiC MOSFETは、図11のようにVGSに対してRonが大きく変化するため、VGSの設定はSi MOSFET以上に重要です。つまり、SiC MOSFETはVGSが低いと、導通損失が増えて効率が悪化します。逆に高効率を求めてVGSを高くし過ぎると定格を超過する恐れが出てくるので、VGSを適切に設定することが非常に重要になります。
図10:Si-MOSFETにおけるRonとVGSの関係
図11:SiC-MOSFETにおけるRonとVGSの関係
図9のPFC回路において、SiC MOSFETのVGSの値を変化させたときの効率シミュレーション結果を図12に示します
図12:SiC MOSFETのVGSを変化させた時の効率シミュレーション結果
VGSが14V以下では、Ronの上昇により効率が急激に低下します。この現象は温度が低いほど顕著になり、この領域ではデバイスが破壊する可能性が大きくなるため使用できません。逆にVGSが大きいほど効率は良くなりますが、定格(VGS=22V)を超えては使用できません。したがって、このシミュレーション結果から効率と安全性のバランスを考慮すると、VGS=18V前後での使用が適切であると言えます。実際にロームのSiC MOSFETは、通常VGS=18V前後での使用が推奨されています。
ローム主催セミナーの講義資料やDCDCコンバータのセレクションガイドなど、ダウンロード資料をご用意いたしました。
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