Bluetooth®|基礎編

iBeaconとは? 具体的な仕組みや利用シーン、メリットを解説

2024.06.26

この記事のポイント

iBeaconとは、Apple社が開発した近接通知システムです。Bluetooth Low Energy(BLE)技術を駆使しており、GPSが苦手とする屋内の正確な位置取得が可能です。iBeaconは、ショッピングモールで顧客の位置を取得し、iPhoneなどのスマートフォンへお店のクーポンを配布するなど、特定の情報を送信する取り組みに活用されています。このように、iBeaconは低消費電力で効率的な通信を実現し、ユーザー体験を向上させる技術です。

この記事では、iBeaconの仕組みやGPS・NFCとの違い、利用事例を紹介します。前提となるビーコンの技術も詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。

iBeaconとは

iBeacon(アイビーコン)とは、2013年にApple社が発表した近接通知技術です。この技術は、ビーコンデバイスからスマートフォンへ情報を発信し、プッシュ通知を表示します。iBeaconはiOS7以降のデバイスに標準搭載されており、Androidデバイスでも受信可能です。

iBeaconの特長は、GPSが不向きな屋内での位置測定が得意な点です。受信機がビーコンデバイスの範囲に入ったり出たりすることや、距離を正確に検知して情報を送信できます。例えば、お店に近づいたユーザーに製品のクーポンを配布することが可能です。

この正確な位置測定には、「Bluetooth Low Energy(BLE)」という近距離無線技術が利用されています。BLEは、近距離のデバイス同士を無線で繋ぐ技術で、従来のBluetoothよりも省電力です。そのため、ユーザーのスマートフォンの電力消費を抑えられます。Androidデバイスは、Android4.3からBLEの受信に対応しており、Android5.0以降では受信だけでなく発信も可能です。

iBeaconの登場以前から「ビーコン」は存在していました。例えば、雪崩に巻き込まれた登山者の捜索に使用する「雪崩ビーコン」や「Webビーコン」、「道路交通情報通信システム(VICS)」などがあります。2013年にApple社がiBeaconを発表すると、「BLEビーコン」が普及しました。iBeacon以外にも、「Eddystone」や「LINE beacon」など、さまざまなBLEビーコンが登場しています。

iBeaconの仕組み

iBeaconの仕組みを理解するためには、必要なハードウェアとソフトウェアの構成を把握することが重要です。iBeacon技術は、ビーコンデバイスが発信する信号をスマートフォンが受信し、その情報をクラウドサーバーと連携して処理することで機能します。これにより、位置情報や近接情報を正確に取得できます。以下では、iBeaconを利用する際に必要な4つの主要なハードウェアおよびソフトウェアとその動作フローについて詳しく説明します。

・iBeaconで必要な4つのハードウェア

iBeaconを利用する際は、下記4つのハードウェアおよびソフトウェアが必要です。

  • ・電波を発信するビーコンデバイス
  • ・電波を受信するスマートフォン(または受信専用デバイス)
  • ・iBeacon対応アプリケーション
  • ・クラウドサーバー

これら4点を使用し、iBeaconは以下の流れで作動します。

  • 1.ビーコンデバイスが、ビーコンIDを含む電波を一定間隔で発信する
  • 2.iBeacon対応アプリケーションを入れたスマートフォンが、電波を受信する
  • 3.iBeacon対応アプリケーションが起動し、クラウドサーバーにビーコンデバイスを識別する「ビーコンID」を問い合わせる
  • 4.クラウドサーバーからビーコンIDに紐づくコンテンツを取得し、スマートフォンに表示する

iBeaconで必要な4つのハードウェア

このように、ビーコンデバイスとスマートフォンは双方向の通信は行いません。ビーコンデバイスが一方的かつ不特定多数に電波を送信する「アドバタイズ(ブロードキャスト通信)」となります。さらに、クラウドサーバーとの通信はユーザーのスマートフォンが行うため、ビーコンデバイスはインターネットに接続しません。

・iBeaconのアドバタイズ

ビーコンデバイスは、スマートフォンなどの受信機に向けて常に「アドバタイズパケット」を発信しています。アドバタイズパケットとは、ビーコンデバイスの識別に必要な「UUID」「Major値」「Minor値」「TxPower値」といった数値が含まれた通信です。各種数値は、BLEの標準フォーマットに準拠しています。

iBeaconのアドバタイズ

  • 1. UUID
    UUIDとは、固有の識別子です。ビーコンデバイスを特定の種類や組織のものとして識別します。
  • 2. Major値
    Major値とは、同一UUIDのビーコンデバイスのグループ分けに使用する数値です。
  • 3. Minor値
    Minor値は、同一のUUIDとMajor値を割り当てられたビーコンデバイスの識別に用います。

例として、ショッピングモールの各店舗にビーコンデバイスを設置する場合、以下のように設定します。

  • 1. UUID:全ビーコンデバイスで共通
  • 2. Major値:フロアごとに異なる
  • 3. Minor値:店舗ごとに異なる

この設定により、アドバタイズパケットを受信したスマートフォンには、フロアや店舗ごとの情報が表示されます。

TxPower値

TxPower値は、「RSSI(信号強度)」を示します。スマートフォンなどの受信デバイスが受信したRSSIの強さから、ビーコンデバイスと受信デバイス間の距離を測定します。距離には誤差が生じるため、以下の3つの距離グループに分類されます。

  • ・Far(遠い):およそ10メール以上
  • ・Near(近い):およそ数メートル以内
  • ・Immediate(極めて近い):およそ1メートル以内

こうした距離グループにもとづき、スマートフォンへの表示内容をこまかく設定可能です。

GPSやNFCとの違い

iBeaconとGPS、NFCは位置情報を取得する技術ですが、それぞれの特性と用途が異なります。iBeaconはBluetooth Low Energy(BLE)を利用し、小型ビーコンデバイスからの信号を受信して近距離の位置情報や近接情報を取得します。iBeaconは屋内での精密な位置特定に優れており、GPSやNFCとは異なる用途で使用されます。

・GPSとの違い

GPS(Global Positioning System)は、位置情報の取得システムとして広く普及しています。iBeaconとは異なり、GPSは人工衛星を利用します。広範囲の位置特定を得意としており、屋外での利用に適しています。一方、地下など人工衛星の電波を受信できない場所では利用できません。また、細かな測定が難しいため、屋内の利用には不向きです。つまり、iBeaconは「屋内・狭い範囲」、GPSは「屋外・広範囲」に適しています。

・NFCとの違い

iBeaconと関連する技術として、NFC(Near Field Communication)もあります。NFCはiBeaconよりも通信距離が短く、10センチメートル程度の距離で通信できます。また、ユーザーはカードリーダーへの読み取り動作が必要です。一方、iBeaconはユーザーによる操作は不要で、ビーコンデバイスの受信圏内に入るだけでプッシュ通知などの機能が作動します。

メリットと利用シーン

iBeaconは、近距離無線通信技術を活用したデバイスで、さまざまなシーンでの活用が期待されています。特に、商業施設やオフィス、公共施設などでの利用が進んでおり、多くのメリットが存在します。以下に、iBeaconの具体的なメリットと利用シーンを紹介します。

・メリット

iBeaconを利用するメリットは、次の3つです。

1.ユーザーのデバイスに自動で情報を表示できる

iBeacon対応デバイスは、自動でiBeaconのデータを受信します。ユーザーがビーコンデバイスに近づくだけで、「チラシ配布」や「ポイント付与」などの処理が自動で実行される仕組みです。デバイスはバックグラウンドで処理を行うため、ユーザーがアプリを開いたりカードリーダーを使ったりする必要がありません。例えば、店舗に入ると自動で割引クーポンが配布される場合や、イベント会場でポイントが付与される場合など、iBeaconを活用することでユーザーの利便性が向上します。

2.屋内でも高精度な案内が可能

iBeaconは、屋内でも数センチから数メートルの範囲で距離を測定するシステムです。GPSに比べて高精度ですが、誤差が生じる場合もあります。この技術を利用すると、店舗内でユーザーの位置に応じてスマートフォンに案内を表示することができます。例えば、特定の商品棚の前に来たときに、その商品の詳細情報やクーポンを自動的に表示することが可能です。

3.導入ハードルが低い

iBeaconの導入費用はIT機器の中では安価です。ビーコンデバイスの購入費用は数千円程度であり、乾電池で動作するため維持費も低く抑えられます。また、複雑な配線処理が不要で、簡単に設置できます。iBeacon対応アプリの運用管理は必要ですが、導入のハードルが低い点は大きなメリットです。

・利用シーン

続いて、iBeaconの主な利用シーンを5つ紹介します。

1.商業施設

1つ目の事例が、商業施設での利用です。来店者のスマートフォンへのクーポン配布や、スタンプラリーに活用されています。加えて、スタッフや来店者の動線分析への利用も可能です。

商業施設

2.水族館・美術館

水族館や美術館では、来館者の位置測定にiBeaconが用いられています。来館者の位置に合わせて、スマートフォンに展示内容のナビゲーションを配信します。なお、来館者は、事前または来館時に専用アプリのインストールが必要です。

水族館・美術館

3.オフィス・工場・倉庫

業務工場や倉庫などの現場にビーコンを設置し、従業員や荷物の位置を測定します。従業員の動線および工数を正確に把握することで、効率化が可能です。オフィスでは、会議室の利用状況の可視化に役立ちます。

オフィス・工場・倉庫

4.みまもり

iBeaconは、高齢者や児童のみまもりにも活用されています。コイン型やカード型など、小型ビーコンをみまもり対象の人が身につけて使用します。センサー付きビーコンであれば、対象者周辺の温度検知も可能です。また、病院患者の抜け出し防止にも利用されています。

みまもり

5.バス

京都市営バスは、iBeaconを導入しました。バスにビーコンデバイスを設置し、停留所のディスプレイにバスの位置情報を表示します。バスの接近を通知することで、利用者の利便性を向上させる狙いです。

バス

iBeaconとは近距離の情報発信・受信に特化したシステム

iBeaconは、近距離の位置測定および情報発信を行う技術であり、さまざまな場面で活用されています。商業施設や美術館、見守りサービスなど、幅広い用途でそのメリットが実感されています。iBeaconは導入が容易で、低コストのデバイスと簡単な設定がその普及を促進しています。このため、今後さらに多くの分野での利用が期待されます。

今後もiBeacon技術の進化により、私たちの生活やビジネス環境に大きな影響を与えることが期待されます。例えば、より精度の高い位置測定や迅速な情報提供が実現し、ユーザー体験が向上するでしょう。

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