AC-DC コンバータ|基礎編

AC-DC変換の基本

2024.06.12

この記事のポイント

・電子回路からみるとAC-DC変換はDC電源の大元なので、基礎理論は押さえておく。

AC-DC変換は、交流(AC)電圧を直流(DC)電圧に変換する技術です。主な方法には、トランス方式とスイッチング方式があります。トランス方式では、低周波トランスでAC電圧を変換し、ダイオードブリッジで整流、コンデンサで平滑してDC電圧を得ます。一方、スイッチング方式は、AC電圧を整流・平滑後、スイッチング素子で高周波ACに変換し、高周波トランスを介して再整流・平滑してDC電圧を生成します。この方式は高効率で小型化が可能ですが、回路が複雑で高耐圧部品が必要です。AC-DC変換は、電子機器にDC電圧を供給するために不可欠です。

AC-DC変換が必要な理由

最初に、「なぜ、AC-DC変換が必要なのか?」という、少し原点的なことのおさらいをしたいと思います。

わかりきった話ではありますが、家庭やビルに送られてくる電気は日本では主にACの100Vや200Vです。しかしながら、その電気によって動作する電気製品に組み込まれているほとんどの電子回路は、5Vや3.3VといったDC電圧で動作します。中には、モーター機器や白熱電球など、AC電圧でそのまま駆動するものもありますが、最近はモーターとスイッチだけといったような単純な機器はほとんどなく、何らかの電子制御回路が搭載されており、それらはすべてDC電圧で動作しています。また、白熱電球もLEDへの置き換えが進んでいますが、ご存じのとおりLEDは基本的にDC駆動です。つまり、「送電網から送られてくるのはACで、電気製品の心臓部である電子回路はDC駆動のため、AC電圧をDC電圧に変換しなければ電気製品は動かせない。」というのが答えになります。「それなら最初からDCを送電すればいいじゃないか」という話になりますが、ACでの送電が行われているのには、歴史的背景を含む理由があります。

AC-DCの利点

エジソンが、1881年に白熱光ランプの電灯を発明したのはご存じかと思います。実は、当時のアメリカではDCでの電力供給が標準方式で、エジソンは白熱電灯を広めるためにDC 110Vの送電網を展開する事業に取り組みました。ところが、DCでの送電では大きな電圧降下が生じるため1.5kmの範囲にしか送電できず、発電所を街の中に建てる必要がありました。今では信じられないような話です。それに対しテスラは、ACの発電、送電、使用方法を考案し、エジソンと争ったのが電流戦争です。最終的には、簡単に変圧できて電線が長く細くても大きな損失なしに送電できるACシステムの利点をもって、テスラ側が勝利したことで現在に至ります。

ACのメリット

  • ・ACは変圧器を用いて簡単に電圧の変換(昇圧、降圧)ができる。
  • ・高電圧/低電流の送電では電圧降下(I2R損失)を低減できる。
  • ・ACからDCへの変換も容易なのでDC駆動機器への給電も容易。

実際には、発電所からは数千から2万VといったAC高電圧が送られ、家庭の直前で電柱にある変圧器で100Vや200Vに降圧されています。

余談ですが、現状では、宅内のコンセントからの電源がACであるため、各機器がそれぞれにAC-DC変換回路をもつ必要があります。この点に関しては、省力化や小型化といった観点からは無駄と言わざるを得なく、最近、各地で試験運用や研究がなされているスマートハウス構想では、宅内のコンセントから直接DCを給電するシステムも考えられているようです。かといって、電力送電網のインフラが急にDCに変わるわけではないので、AC-DC変換が不要になるわけではありません。このようなシステムでは、家のDC給電装置の大元として高い力率と効率の大電力AC-DCコンバータや、ローカルに中電力のAC-DCコンバータが必要になることでしょう。

整流の基本:全波整流と半波整流

さて、続いてもう一つ基本的なことのおさらいをします。前述した中に「ACからDCへの変換も容易」というくだりがありましたが、これが「整流」という作用であり、AC-DC変換の根底なので確認をしておきます。

図 1

図1は、整流の基本となる全波整流と半波整流の作用を示したものです。いずれも、入力のAC電圧をダイオードでマイナス側の振幅をクランプします。半波整流は、1個のダイオードでマイナス側をクランプするのみなのでマイナス分がなくなり、呼称のとおり半分の波形になります。全波整流は、4個のダイオードを組み合わせたダイオードブリッジを使い、マイナス側を反転させてプラス側に出してきますので全波形がDCとなります。

DC化した後はコンデンサを使い平滑します。平滑してもリップル(Ripple:脈流)は残り、その振幅であるリップル電圧はコンデンサの容量と負荷によって変化します。コンデンサの容量と負荷が同じ場合、全波整流と半波整流では全波整流の方のリップル電圧が小さくなります。

トランス方式

AC-DC変換の一つの方法として、トランスフォーマ、つまり変圧器をメインに使った方式を説明します。図2は、トランス方式の一般的な構成になります。

ここでは例として、入力電圧を100VACとします。この100VACをトランスによって、所望のDC電圧が得られるAC電圧に降圧(変圧)します。この部分はAC-AC変換になります。変圧値(トランスの二次側に発生する降圧値)は、トランスの一次側と二次側の巻線比によって設定します。

図 2:トランス方式の AC-DC 変換

もし、入出力間の絶縁が必要な場合には、このトランスを利用して絶縁することができます。

そして、降圧されたAC電圧はダイオードブリッジ整流器によってDCに変換され、コンデンサがそれを平滑し最終的にリップルの小さなDC電圧に変換されます。整流されたDC電圧は、ACのピーク電圧(AC×√2)からダイオードの順方向電圧を引いた値です。

出力の安定化が必要ない場合は、このDC電圧を出力として使うことができます。電圧の初期値はトランスの巻線比に依存することになり、負荷電流が増えれば電圧は低下します。安定化が必要であれば、電圧レギュレータを使って安定化します。この場合、トランスの二次側の電圧は、レギュレータの変換に適した電圧に設定します。例えば最終的に12VDCをつくるのであれば、整流後の電圧を18VDCくらいとし、動作するために低からず、損失を抑えるために高からずといった具合に設定するのが一般的です。

トランス方式に使う部品

トランス方式のAC-DC変換に使う実際の部品の例を示します。

図3:トランス方式のAC-DC変換に使用する部品例 左からトランス、ダイオードブリッジ整流器、電解コンデンサ

AC-AC変換をするトランスですが、ACの周波数は50/60Hzなので低周波トランスが使われます。電源用に設計されたトランスは、電源トランスとか商用周波数用トランス(商用トランス)などと呼ばれます。トランスの大きさ(体積)は電源の出力電力に比例すると考えてください。分かりやすい身近な例はACアダプタで、電流容量の大きなものは大きくて重いはずです。トランスの基本構造は、コアと呼ばれる鉄芯と一次及び二次の巻線となります。コアには一般的に珪素鋼板を使用します。

ダイオードブリッジ整流器は、4本のダイオードが整流用に結線されて1つのパッケージに入ったものです。形状は写真の型以外に、SIPやDIPの四角いパッケージのものもあります。また、単品の整流ダイオード4個を組み合わせてダイオードブリッジをつくっても構いません。ダイオードも許容電流が増えればサイズが大きくなる傾向にあります。

コンデンサは基本的には電解コンデンサを使います。必要な容量は負荷や許容できるリップルによって変わりますが、おおよそ数百~数千μFとなります。電源の出力電力が大きくなるとコンデンサも大きくなります。

一般的な電子回路の電源電圧をつくる回路では、高電圧を扱うのはトランスだけになります。他の部品はつくるDC電圧に応じた定格のものを選びます。

スイッチング方式

スイッチング素子を使うAC-DC変換方式を図4に示します。

スイッチング方式は、最初に100VACをダイオードブリッジで整流します。トランス方式では、まずトランスでAC/ACの降圧を行いましたが、スイッチング方式は高いままのAC電圧をそのまま整流します。したがって、ダイオードブリッジは高電圧に耐えうる仕様のものが必要になります。100VACはピーク値では140Vほどになります。

次にコンデンサを使って平滑します。こちらも高電圧仕様のものを使用します。

続いて、この高いDC電圧を、スイッチング素子をON/OFFすることによってチョッピング(切り分け)をして、高周波トランスを介して二次側にエネルギーを伝達します。このときのON/OFF周波数、つまりスイッチング周波数は、入力ACの周波数である50/60Hzに比べてかなり高い数十kHzの周波数を使い、図4のような方形波のACに変換します。

図 4:スイッチング方式の AC-DC 変換

この高周波のAC電圧は二次側の整流ダイオードで整流され、そしてコンデンサで平滑され、設定されたDC出力電圧に変換されます。図では高周波ACの整流波形が省略されていますが、1つのダイオードを使った半波整流なので図1を参照願います。また、所望のDC電圧に変換するには、図4にあるようにスイッチング素子の制御回路が必要になります。(この回路構成はフライバックと呼ばれる方式の例です。フライバック方式については後述します。)

高いDC電圧を切り分けてACにして、再び整流-平滑によって低いDC電圧に変換する方法は、通常のスイッチングDC-DC変換と同じです。スイッチングDC-DC変換の過程を細分化すると、DCからACに、そしてDCへということになります。なお、3端子レギュレータを使ったリニア方式のDC-DC変換は、単純にDCをDCに変換します。

整流-平滑後のスイッチングDC-DC変換の原理

ACを整流してDCに変換する原理については先に説明しましたので、その後の動作にあたるスイッチング方式のDC-DC変換の原理についても簡単に説明します。

図5:PWMを例にしたスイッチング方式DC-DC変換の原理

図5は、代表的な制御方法であるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式による降圧の原理を示しています。PWMは、周期(周波数)を一定としてONとOFFの時間比、つまりデューティサイクルを調整する制御方法で、さまざまなアプリケーションで使用されています。PWMでは、DC電圧をスイッチによって必要なデューティサイクルのACに変換し、再び整流してDCに戻すことで所望のDC電圧を得ます。例えば100VDCをスイッチによって周期の25%をON、残りをOFFという25:75のACに変換します。そのACを整流-平滑、つまり平均化してDCにすると電圧は25%分に該当する25VDCに変換されます。実際には、DC-DC変換は電力変換であり、変換効率を加味しなければならないので、図のようにちょうどにはなりませんが、このような原理に基づきます。また、負荷電流が増えれば電圧が降下し、制御回路はパルス幅を増やして電圧を設定値に戻すために帰還制御を行うので、パルス幅も一定ではありません。

話を整理すると、AC-DC変換は入力のAC電圧をそのまま整流-平滑してDCに変換し、そのDCを再度高周波のACに変換して、再び整流-平滑して所望のDC電圧に変換するという流れになります。前述のトランス方式に比べ、AC-DC変換を2回も行うので複雑に感じるかもしれません。確かに複雑になるのですが、大きなメリットがあるため、近年ではスイッチング方式を採用するAC-DCコンバータが増えてきています。メリットについては後述します。

スイッチング方式に使う部品と実装例

図6の写真は、スイッチング方式のAC-DC変換に必要な部品と回路実装例です。基本構成は図4と同じで、出力電圧をPWM制御回路にフィードバックすることで安定化制御を行っています。

図6:PWMスイッチング方式 AC-DCコンバータの部品と実装の例

部品は先のトランス方式に似ていますが、ダイオードブリッジ、一次側の電解コンデンサ、スイッチング素子(トランジスタ)は、すべて高電圧に対応した仕様のものになります。

トランスは数十kHzの高周波で動作する必要がありますので、高周波トランス、又はスイッチングトランスと呼ばれるものになります。スイッチングトランスのコアは、一般的にフェライトを使用します。

スイッチング素子は、基本的にトランジスタを使用します。パワートランジスタとかスイッチングトランジスタなどいくつか呼び名がありますが、スイッチング電源用の高電力MOSFETがポピュラーになってきています。スイッチングトランジスタは、必要な出力電力に合わせて選択しますが、出力電力があまり大きくない場合には、スイッチングトランジスタを内蔵している制御ICを利用して部品点数を減らすことができます。

出力電圧を安定化する制御回路ですが、トランジスタやOP-Ampなどの個別素子を使用して構成することも可能です。しかしながら最近では、正確な安定化制御はもちろん、さまざまな保護機能も提供してくれることから、AC-DC変換用ICを使用することが多くなってきています。特にAC-DC電源を回路基板上に載せる場合は、AC-DCコンバータ用ICを中心に設計をするのが現実的かと思います。なお、この回路の制御ICは基板裏の下の方の真ん中あたりに実装されています。SOP8という小さなパッケージですが、制御機能の他、複数の保護機能を備えています。

トランス方式とスイッチング方式の比較

トランス方式とスイッチング方式のAC-DC変換について、動作や回路の概要について説明をしてきましたが、ここでその比較と長所と短所をまとめます。

トランス方式 スイッチング方式
  • ◎ 比較回路が簡単
  • ◎ ノイズが少ない(出力にリニアレギュレータがある場合)
  • ◎ 安価
  • △ 体積、重量がかさむ
  • △ 発熱が大きい
  • △ 効率が劣る
  • △ 回路が複雑
  • △ スイッチングノイズあり
  • △ 高耐圧部品が多い
  • ◎ 小型軽量化が可能
  • ◎ 発熱が少ない
  • ◎ 効率が高い

図 7:トランス方式 AC-DC 変換

図 8:スイッチング方式 AC-DC 変換

回路構成を比較すると、変換方式の違いから若干ですがスイッチング方式の回路の方が複雑です。また、スイッチング方式は、必ず制御回路(基本的にIC)が必要になります。

使っている部品は似通っていますが、スイッチング方式の方は高耐圧部品を多く使います。これに関しては、コストにも影響が出てきます。

しかしながら、一番の違いは効率で、体積/重量に関してもスイッチング方式が有利です。

一つ例をあげるとすれば、最近、特に携帯機器の充電用ACアダプタが小さく軽くなったことにお気づきでしょうか。図9は、よく見かけるACアダプタですが、左はトランス方式、右はスイッチング方式です。仕様を見ると、明らかに小さい右の方の出力が1W以上も大きくなっています。

図 9

これは、スイッチング方式では、一度DC化したAC入力(50/60Hz)を高周波のACに変換することで、トランスや出力コンデンサは小さいものが使用できるようになり、フォームファクタを大幅に小さくできるからです。基本動作の項で、「スイッチング方式はAC入力を整流-平滑した後はDC-DCコンバータと同じ」という説明をしましたが、これについても全く同じです。効率に関しても同様で、スイッチングによって必要な電力のみを取り出すことにより効率が向上し、当然ながら発熱も抑えられています。

設計においては、効率、サイズ、コストとの兼ね合いになりますが、これらの方式による違いや長所短所の理解があれば最適な選択が可能だと思います。近年、ACアダプタの待機電力が問題になっていますが、その一つの対応策としてスイッチング方式の採用があるのだと考えられます。

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