AC-DC コンバータ|基礎編

AC-DC 変換回路設計の課題と検討事項

2024.06.26

AC-DC変換回路設計には、多くの課題と検討事項があります。設計者は、ディスクリート構成と電源ICの選択、変換効率の向上、小型化、保護機能の実装、各種認証及び規制への対応など、重要な要素を総合的に考慮する必要があります。特に、効率向上や小型化は省エネルギーとスペース節約の要求にこたえるために重要です。この記事では、各課題の詳細と最適な設計アプローチを解説し、実際の設計例や成功事例を通じて効率的で信頼性の高いAC-DC変換回路を設計するための知識と技術を紹介します。

ディスクリート構成と電源ICの選択

ディスクリート構成か電源ICを使うかという検討は減りつつあると思いますが、主にオンボード電源を設計するという観点で記します。いろいろな考えがあるとは思いますが、電源ICを使用するメリットは所々で説明したとおりで、昨今は電源ICをきっちりと使いこなす方が得策だと考えます。最良の制御ができるように必要な回路と機能のほとんどが搭載されており、設計者はそれを調整しながら自身の設計に最適化することで完成度の高い電源を実現することができます。

かつては、電源は電源メーカーのノウハウの塊であり、チューニングのしやすさや機能面、そしてコスト面からもディスクリート構成が優れていた時代がありました。しかし、昨今では電源用ICは多くのニーズを取り入れ、簡単かつ柔軟に、そして高性能な電源を構築できるようなっています。何よりも部品点数が減り、サイズ、信頼性面でも優位です。迅速なTime-to-Marketを要求される機器設計では、設計開始が遅れがちになる電源設計の能率を上げることは、非常に重要になってくると考えます。

① ディスクリート構成と電源ICの選択

  • ・ 高度なノウハウを持つ場合は、ディスクリート構成も選択肢
  • ・ 電源ICは、保護機能など多くのニーズを集積し使い勝手も向上
  • ・ 小型化と信頼性向上の面では、電源ICが優位

効率

電源の効率向上は、現代の省エネ要求に対して最も重要なテーマです。また、待機時の消費電力も重要な改善項目になっており、さまざまな対策が取られています。

スイッチングDC-DCコンバータの効率は95%前後を達成することが可能ですが、AC-DCコンバータの場合は、一次側の変換効率にまだ改善の余地があるのが実情です。また、扱う電力が大きくなればPFC(力率改善)が必要になり、追加の回路とノウハウが必要になります。

AC-DC変換において効率の向上をはかるためには、スイッチング方式の採用が必須です。そのためには前述のように、例えば100VACを直接整流し平滑できるダイオードとコンデンサ、その後の140V近いDC電圧をスイッチできるトランジスタといった高耐圧部品が必要になり、当然ながら若干コストは上がります。これは、省電力化要求とのトレードオフとして重要な懸案事項になります。

② 効率

  • ・ 効率は、入力電力に対する出力電力の比
  • ・ 使う方式、部品によって効率は異なる
  • ・ 規制や認証に対応するためには、効率は重要な項目
  • ・ サイズと効率は、基本的にトレードオフの関係がある
  • ・ DC-DCに比べ、AC-DCの効率は少し厄介で改善の余地も大きい

小型化(部品数、部品サイズ)

小型化も昨今の重要な要求事項です。スイッチング方式にすることで、小型化は実現しやすくなります。AC-DC変換の基本でACアダプタの例を示しましたが、その違いを理解することができると思います。

構成部品の中で大きく重いといわれているトランスは、それでも部品として小型化が進んでいます。二次側のDC-DC変換回路は、スイッチング周波数を高くするとインダクタとコンデンサを小さくすることが可能で、小型化には効果があります。ただし、効率は低下する方向になります。ここでは、サイズと効率の最適化が必要になります。

また、制御ICの周辺機能の取り込みも、部品点数を減らし実装面積を削減するのに役立っています。昨今の制御ICには、5、6種類の保護機能が搭載されています。もし、それらをディスクリートで構成するとなると、かなりの部品とスペースが必要になります。

③ 小型化(部品数、部品サイズ)

  • ・ スイッチング方式が小型化に寄与
  • ・ 制御ICが保護機能などを集積しており、部品数とスペース削減に貢献
  • ・ トランスなど個別部品も小型化を進めている

保護機能

保護機能は、電源にとって安全面だけではなく回路の信頼性にとっても重要な機能です。保護機能を大別すると、入力(過電圧、動作ができなくなる入力電圧の低下など)、出力(過負荷及び短絡、逆電圧、過電圧など)、温度(過剰な自己発熱、周囲温度の上昇など)になります。これらすべてがどの電源回路にも必要になるわけではありませんが、ほとんどが不可欠若しくはあればより良い機能です。前項でも説明しましたが、必要な保護機能のほとんどが制御ICに搭載されていますので、それを積極利用することをお勧めします。

特にAC-DCの場合は、入力はコンセントからのACであることから、時には落雷による大きなサージなどが印加される可能性があります。また、電圧が高く電流も家庭用でさえ30A~50Aといった高電流を流すことができ、障害が起こった場合の損害は甚大になることは誰もが想像できます。

本稿では、AC-DC変換回路の略図などを提示していますが、ACラインのヒューズが省略されています。ほとんどの電源回路では、大元にヒューズを入れることになります。常識と言えば常識なので略図では省略されることが多いのですが、ここで確認をしておきたいと思います。

④ 保護機能

  • ・ 入力電圧の過大/過小、出力過負荷などに対する保護が安全面で必須
  • ・ ディスクリート構成での実現には多くの部品が必要
  • ・ 制御ICがほとんどの保護機能を集積しておりメリット大

認証、規制など

電源には多くの認証や規制があります。よく目にするEnergy Starもその一つで、効率や待機時消費電力に関するものです。安全関連では、PSE認証はACアダプタなど電源ユニットでは必須ですし、ノイズ関連ではEMIやEMCの適合が必要なケースが数多くあります。これらは世界的に共通のもの、国や地域に限定されるものなどさまざまなので、製品の世界展開を考えると、それぞれの国の規格に適合する必要があります。さらには、こういった認証には試験が必要で、そのための時間と費用、そして労力はかなりのものになるということを知っておいてください。

設計において重要なのは、最初の段階でどの認証が必要で、どの規制をクリアしなければいけないかを、しっかり把握しておくことです。これが後から要件として追加されると、一から設計をやり直す破目になったり、製品は完成していても試験が終わらないので出荷ができないなど大変なことになりかねません。

⑤ 認証、規制など

  • ・ 効率/待機電力、安全性、ノイズなどの認証、規制がある
  • ・ 国によって異なる
  • ・ ACアダプタの例:PSE(日本)、CE(EU)、UL(米国)、CSA(カナダ)、EN(EU)など
  • ・ 事前に必要なものを検討し対応を準備する

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AC-DCコンバータの設計を始める初心者のためのハンドブックです。AC-DC変換の基礎と各種変換方式、AC-DCコンバータを設計するための手順や課題について解説しています。

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