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技術トレンド 電子機器の一歩進んだ低消費電力化を支える 第5世代プレーナ型ショットキーバリアダイオード

2022.06.29

この記事のポイント

・脱炭素化へのさらなる取り組みが求められ、さまざまな電気・電子機器の電源において、高効率なスイッチング電源が活用されるようになってきた。

・スイッチング電源のさらなる高効率化の実現に向けて、前世代比25%の高効率化を実現したロームの第5世代プレーナ型ショットキーバリアダイオードが貢献する。

カーボンニュートラル達成に向けて、一層高まる低消費電力化への要求

近年、世界中で大きな気象災害が次々と発生するようになりました。気象災害と地球温暖化の明確な関係を示すことは容易ではありません。しかし、深刻化する気候変動に伴って、今後、豪雨や猛暑のリスクがさらに高まり、農林水産業や生態系、健康、産業・経済活動などにこれまで以上に大きな影響をもたらす可能性が指摘されています。

もはや、目先の豊かさや成長だけを追求するために最適化した産業・社会システムでは、持続可能な未来は描けなくなりました。危機的状況に対処するため、世界の120以上の国と地域が、2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げて、脱炭素化に向けたさまざまな取り組みを進めています。日本政府も、2021年に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定。太陽光や洋上風力といった再生可能エネルギーの活用促進だけでなく、自動車や工場設備、さらには家庭やオフィスで利用するあらゆる機器・設備の低消費電力化を推し進めていくことを表明しています。

現代社会に欠かせない電子機器にも、同様にさらなる低消費電力化が求められています。私たちは、電子機器の低消費電力化に向けた手段として、パソコンやスマートフォンに搭載されているプロセッサーやディスプレイ、通信回路のような特に消費電力が大きい目立つ部品での対策だけを思い浮かべがちです。もちろん、これらの低消費電力化も重要ですが、脱炭素化に貢献していくためには、電源回路や保護回路など機器の安定動作および信頼性確保に欠かせない回路にも、低消費電力化の工夫を盛り込む必要があります(図1)。こうした社会の要請を受けて、これまで電力効率よりも価格の安さを優先してリニア電源が使われていたアプリケーションでも、より小型で電力効率の高いスイッチング電源が利用される例が増えてきています。

図1 脱炭素化に向けて、電子機器の電源回路でもさらなる低消費電力化が求められている

高効率・小型なスイッチング電源用途に向くダイオードの選び方

車載機器や産業機器、民生機器などでは、スイッチング電源内での整流や電子回路を過電圧などから守る保護回路に、高効率・小型なショットキーバリアダイオード(SBD)が利用されています。ショットキーバリアダイオードとは、一方向だけに電流を流す電子素子であるダイオードのうち、金属と半導体の接合による電気的障壁を利用したものです。pn接合ダイオードに比べて順方向電圧(VF)特性が低く、電力損失が少なく、スイッチング特性にも優れた特性を備えています。電力効率の高いスイッチング電源の実現に向くため、一層の脱炭素化への貢献を追求するアプリケーション開発の潮流に後押しされて、ショットキーバリアダイオードの応用が拡大しています。

ただし、より多くのアプリケーションに適用するためには、用途に応じて、最適な特性のショットキーバリアダイオードを選択することが欠かせません。ショットキーバリアダイオードには、pn接合ダイオードに比べて逆方向に流れるリーク電流(IR)が大きく、発熱し、適切な熱設計を施さないと熱暴走を起こす欠点があります。そして、一般に、VFとIRの間にはトレードオフの関係にあり、低VFを求める用途と低IRを求める用途それぞれを見極めて、適した特性を持つショットキーバリアダイオードを個別に選択し、使い分ける必要があります。

ショットキーバリアダイオードの利用シーンは千差万別であり、求められる特性もまた多様です。アプリケーションごとに、VFとIRの最適バランスを見極め、さらに適した耐圧、流せる電流の許容量に応じたショットキーバリアダイオードを選択すること極めて重要です。

さらなる高効率化にむけて第5世代プレーナ型ショットキーバリアダイオードを投入

トレードオフの関係にあるVFとIRですが、ショットキーバリアダイオードの素子構造や製造プロセスを改善すれば、双方をより高レベルでバランスを取れるようになります。

ロームでは、超VF低の「RBSシリーズ」、低VFの「RBRシリーズ」、低IRの「RBQシリーズ」、超低IRの「RBxx8シリーズ」と、応用適性が異なる多様な製品を提供しています(図2)。特に高い品質が求められる車載市場をはじめとする幅広いアプリケーションで活用されています。

図2 応用先のニーズに合致した多様なショットキーバリアダイオードを用意

そしてロームは、同時に継続的な特性改善も推し進めています。2021年6月には、RBRシリーズRBQシリーズに新たな独自のプレーナ型素子プロセスを導入した第5世代品を追加投入。いずれのシリーズにおいても、前世代比25%の高効率化を実現しました。RBR/RBQシリーズともに、車載信頼性規格AEC-Q101に準拠し、高信頼性を確保した製品も用意しています。

さらなる低消費電力化と小型化に貢献する第5世代RBR/RBQシリーズ

RBRシリーズに追加した製品では、想定する応用で求められるIR特性を維持しながら、同サイズの従来製品に比べて、VF特性を約25%低減し、さらなる低損失化を実現しました(図2)。同等性能同士で従来製品と第5世代品を比較した場合には、より小型化なパッケージの製品を選択できるようになりました。

図3 基本特性を大幅に改善した第5世代ショットキーバイリアダイオード
(左)RBRシリーズと従来品の順方向電圧(VF)の比較、
(右)RBQシリーズと従来品の逆方向電流(IR)による逆電力損失の比較

第5世代品としてRBRシリーズに追加した12製品(6製品それぞれに民生品用と車載品用を用意)は、2.5mm×1.6mmサイズのPMDEパッケージに素子を封止しています。これまで3.5mm×1.6mmサイズのPMDUパッケージに封止されていた素子と同等の特性を、PMDEパッケージのチップに置き換えて実現可能であり、実装面積を従来比で約42%削減できます。応用先として、比較的低電圧で駆動する電気自動車(EV)のオンボードチャージャーやLEDヘッドランプ、カーアクセサリー、ノートPCなどでご採用いただいております。

一方、RBQシリーズの追加製品では、逆電力損失を従来比で60%低減しました。これによって、高温動作時での熱暴走のリスクを一層低減し、優れた温度特性を実現しました。第5世代品としてRBQシリーズに追加した12製品(6製品それぞれに民生品用と車載品用を用意)はいずれも100V品です。高電圧での駆動や高温下での利用が想定される、産業機器向け電源やオーディオ、ノートPC、各種電動車(xEV)、エンジン制御用ECU、AC-DCコンバータやDC-DCコンバータの2次側整流などでご採用いただいております。

ロームのショットキーバリアダイオード、RBR/RBQシリーズは、電子機器の脱炭素化の実現に向けて欠かせないデバイスだと言えます。

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