ダイオード|基礎編

pn接合(pn junction)とは

2026.05.13

pn接合とは、p型半導体とn型半導体を接合した半導体の代表的な構造です。接合部に電圧を加えると一方向だけに電流が流れる整流作用が生じ、この特性を利用してダイオードやトランジスタなど多くの電子部品がつくられています。身近な例としてLEDは、pn接合部で電子と正孔(ホール)が再結合する際に光を放つ性質を応用しています。この記事ではpn接合の仕組みや特性を、初心者にもわかりやすく解説します。

pn接合の基本構造

p型半導体とn型半導体の基礎

半導体材料においては、シリコンやゲルマニウムなどの元素に不純物を添加(ドーピング)することで、電気的な性質を大きく変化させることが可能となります。pn接合を理解するためには、p型とn型の各特徴を把握する必要があります。

p型半導体の特徴

p型半導体は、正孔が多数キャリアとして振る舞う性質を持ちます。具体的には、シリコンなど四価元素の半導体に対して三価元素(ボロンなど)を添加すると、価電子帯における電子の欠損が生じ、これが正孔として機能します。

p型半導体のシリコン結晶構造

  • 不純物の添加によって正孔が多数キャリアとなる
    p型材料では、三価元素が「電子が足りない」ような格好となり、結合に1つ欠けた部分を正孔として扱います。正孔は正電荷をもつように振る舞うため、この欠損が電流の担い手となります。
  • p型材料の代表例、正孔移動度の概略など
    シリコンにボロンを添加したp型半導体は、正孔を主体に電流が流れます。正孔移動度は電子移動度よりも相対的に小さく、p型半導体の導電率は同程度のドーピングをしたn型半導体よりもやや低いことが多いです。

こうした性質を理解しておくと、後ほど登場するpn接合内での正孔の動きをイメージしやすくなります。

n型半導体の特徴

n型半導体では、電子が多数キャリアとして働きます。典型的には、五価元素(リンやヒ素など)をシリコンに添加し、自由電子を増やして導電率を高めます。

n型半導体のシリコン結晶構造

  • 不純物の添加によって電子が多数キャリアとなる
    五価元素は価電子が1つ多いため、半導体結晶の共有結合に参加した後も余分な電子が1つ残ります。これが自由電子として動き回れるため、n型半導体は負電荷のキャリアが多数を占める性質を持ちます。
  • n型材料の代表例、電子移動度の概略など
    シリコンにリンを添加した場合、結合から余った電子が自由に動けるようになります。一般的に電子は正孔より移動度が高いため、同じドーピング濃度でもn型半導体のほうがp型より高い導電率を得やすいです。

不純物濃度を上げるとキャリア濃度が増え、導電率は通常向上します。ただし、濃度が高くなりすぎるとキャリアの動きが悪くなり、導電率の改善が鈍くなります。そのため、実際の製造では最適な濃度のバランスが重要です。

pn接合の形成と空乏層

pn接合とは、単一の半導体結晶内でp型領域とn型領域が接している構造です。この接合部分では、電子と正孔が拡散・再結合することによって、空乏層と呼ばれるキャリアの少ない領域と内蔵電位が生じます。この特性は、ダイオードやトランジスタなど、電子部品の動作原理の基礎となっています。

pn接合の形成メカニズム

p型とn型を単一結晶上で接合すると、接合面近傍において多数キャリアが拡散し合います。p型側の正孔はn型側へ、n型側の電子はp型側へ移動し、接合部付近では再結合が活発に起こります。

  • p型とn型を単一結晶上で接合する
    実際の製造工程では、ウエハ上にドーピングプロセスを施すことでp型/n型を局所的につくり分ける技術を用います。これにより、一つの結晶基板上にp型領域とn型領域が隣接した状態が作り出されます。

半導体の製造フロー(イメージ)

  • 接合面近傍で起こるキャリア拡散と再結合
    初期の段階では、p側の正孔とn側の電子が入り乱れて拡散していきます。しかし、移動したキャリアの間では再結合が起こり、境界付近の領域はキャリアがほとんど残らない「空乏」な状態となります。

pn接合による拡散と再結合

この過程によって形成される空乏層が、pn接合の基本的な構造を規定します。

空乏層と内蔵電位

p型とn型が接合して空乏層が形成されると、p側とn側のイオン化した不純物が露出する形になります。p型側では負に帯電したアクセプタが、n型側では正に帯電したドナーが配置されるため、その境界に電界が生じます。

  • 空乏層(depletion region)の形成
    移動できるキャリアが少ない領域を空乏層と呼びます。空乏層には有効なキャリアがほとんど存在しませんが、イオン化不純物の固定電荷は残っており、内部電界を生む源となります。
  • 内蔵電位(約0.6~0.7V)によるキャリア移動の阻止
    シリコンの場合、室温で0.6~0.7V程度の内蔵電位差が発生します。この内蔵電位によって、p側・n側から来るキャリアは容易に反対側へ移動できなくなります。結果として、外部からエネルギー(電位差)を加えない限り、大きな電流は流れない状態がつくり出されます。

空乏層の形成

内蔵電位はpn接合が無電源状態でも自発的に発生し、電荷の移動を制限しています。この特性こそが、ダイオードなどの一方向電導を生む基盤です。

pn接合ダイオードの動作原理

pn接合に電圧を加えることで、空乏層の厚みや内蔵電位の実効値が変化し、電流の流れ方も大きく変わります。ここでは、ダイオードの順方向バイアスと逆方向バイアスに分けて解説します。

順方向バイアスと逆方向バイアス

外部からpn接合に電源を接続し、p側をプラス、n側をマイナスにした状態を順方向バイアスと呼びます。このとき空乏層が狭まり、比較的容易に電流が流れるようになります。

  • 順方向バイアス時:空乏層が狭まり電流が容易に流れる
    p側に正の電位、n側に負の電位を印加すると、内蔵電位との差分が小さくなるため、キャリアがバリアを乗り越えやすくなります。内蔵電位を超えるほど電圧が大きくなると、大きな電流が流れ始めます。

pn接合の順方向バイアス印加時の動作

  • 逆方向バイアス時:空乏層が広がり電流は極めて小さい(リーク電流に限定)
    p側にマイナス電位、n側にプラス電位を印加すると、内蔵電位が大きくなるため、キャリアは更に移動しづらくなります。結果として、逆方向電流はリーク電流程度のわずかなものにとどまり、通常動作ではほぼ無視できるほど小さいです。

pn接合の逆方向バイアス印加時の動作

この特性を利用して、ダイオードは交流波形を整流(AC→DC変換)したり、スイッチング動作に利用されたりします。

電流特性とショックレー方程式

pn接合ダイオードの電流—電圧特性は、以下の「ショックレー方程式」によって近似的に表されることが多いです。

\(I=I_0\begin{pmatrix} e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

ここで、

  • Iはダイオードに流れる電流
  • I0は逆方向飽和電流(非常に小さい値)
  • qは電荷素量(約1.602×10−19 クーロン)
  • Vはダイオードにかかる電圧
  • kはボルツマン定数(約1.38×10−23J/K)
  • Tは絶対温度(K)

ダイオードの電流–電圧特性

  • ショックレー方程式導出の概要

p型側の中の「少数キャリア電子」濃度をnp(x)、n型側の中の「少数キャリア正孔」濃度をpn(x)とします。定常状態・一次元・低レベル注入などの条件のもとで、p型側の少数キャリア電子には

\(D_n\displaystyle\frac{d^2Δn_p (x)}{dx^2}-\displaystyle\frac{Δn_p(x)}{τ_n}=0\)

という拡散方程式が成り立ちます。ここで、Δnpはp型領域中の電子濃度、Dnは電子の拡散係数、τnは電子が再結合して消えるまでの平均時間です。同様にn型側の少数キャリア正孔についても同じ形の式が成り立ちます。

少数キャリア濃度に関する拡散方程式のイメージ

上述の二階微分方程式の解は

\(Δn_p (x)=Δn_p (0)e^{-x/L_n}\)

という指数関数形になります。ここでLnは電子の拡散長であり、下記の数式で表されます。

\(L_n=\sqrt{D_n τ_n}\)

Δpn(x)も同様の形になります。

\(Δp_n (x)=Δp_n (0)e^{-x/L_p}\)

順方向バイアスVを印加すると、接合の障壁がqVだけ変化します。ボルツマン統計から、p型領域中の少数キャリア電子濃度np(0)

\(n_p (0)=n_{p0}e^{qV/kT}\)

となります。ここで、np(0)は平衡時の少数キャリア濃度です。
つまり増分Δnp(0)

\(Δn_p (0)=n_p (0)-n_{p0}=n_{p0}\begin{pmatrix} e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

となります。n型領域中の少数キャリア正孔についても

\(Δp_n (0)=p_{n0}\begin{pmatrix} e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

となります。

ショックレーのダイオード方程式:順方向電圧Vで接合端の少数キャリア濃度がe^(qv/kT)倍になる境界条件

電子拡散電流は

\(I_n=qAD_n\displaystyle\frac{dn_p (x)}{dx}|_{x=0}\)

で与えられます。ここでAは電流が流れるデバイスの断面積です。なお、ここでは電流の向きよりも大きさに注目するため、以下では電流の符号は適宜整理し、絶対値に相当する量で議論します。

\(np(x)=n_{p0}+Δn_p (x)\)

であるので、

\(\displaystyle\frac{dn_p (x)}{dx}|_{x=0}=\displaystyle\frac{dΔn_p (x)}{dx}|_{x=0}=-\displaystyle\frac{Δn_p (0)}{L_n}\)

を得ます。したがって、その大きさを用いて

\(I_n=qAD_n\displaystyle\frac{Δn_p (0)}{L_n}=qAD_n\displaystyle\frac{n_{p0}}{L_n}\begin{pmatrix} e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

となります。同様に正孔拡散電流は

\(I_p=qAD_p\displaystyle\frac{p_{n0}}{L_p}\begin{pmatrix} e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

となります。総電流I

\(I=I_n+I_p=\begin{bmatrix}qA\begin{pmatrix}\displaystyle\frac{D_nn_{p0}}{L_n}+\displaystyle\frac{D_pp_{n0}}{L_p}\end{pmatrix}\end{bmatrix}\begin{pmatrix} e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

であり、電圧に依存しない部分を

\(I_0=qA\begin{pmatrix}\displaystyle\frac{D_nn_{p0}}{L_n}+\displaystyle\frac{D_pp_{n0}}{L_p}\end{pmatrix}\)

と定義することで、ショックレー方程式:

\(I=I_0\begin{pmatrix}e^{qV/kT}-1\end{pmatrix}\)

を導くことができます。

温度依存性

pn接合ダイオードの特性は温度によって変化します。結晶格子振動が増加し、キャリアの再結合や衝突頻度が増えるからです。

ダイオードの電流-電圧特性 温度特性

  • 内蔵電位の温度特性
    シリコンダイオードの場合、温度が上昇すると内蔵電位が少し低下する傾向があります。これは、熱エネルギーの増加によってキャリアがより移動しやすくなることにも起因します。
  • 逆方向電流の増大や動作特性の変化
    逆方向飽和電流I0は温度上昇に伴い増加するため、同じバイアス電圧下でも逆方向電流がやや大きくなります。高温環境で使用する場合は、このリーク電流や特性変化を考慮した設計が必要です。

pn接合ダイオードの応用例

ツェナーダイオードは、pn接合の逆方向バイアスにおけるブレークダウン現象を利用したデバイスです。Zener効果によって特定の電圧を超えると急激に電流が流れ始めるため、電圧を一定に保つことができます。

ツェナーダイオードによる電圧制御

ツェナーダイオードは、pn接合の逆方向バイアスにおけるブレークダウン現象を利用したデバイスです。Zener効果によって特定の電圧を超えると急激に電流が流れ始めるため、電圧を一定に保つことができます。

  • 逆方向バイアスでのZener破壊
    ツェナーダイオードでは、pn接合のドーピングを高くするなどしてブレークダウン電圧を低めに設計し、安定した動作を実現しています。

ツェナーダイオードのブレークダウン電圧

  • 電源の電圧リファレンスや保護回路への応用
    電圧リファレンス素子や過電圧保護に用いられ、回路設計では重要な役割を果たします。

ツェナーダイオードによる電圧リファレンスの例

ブレークダウンにはZener効果とアバランシェ効果の2種類があり、電圧の高低によってどちらの効果が支配的になるかが異なります。しかし一般には、いずれも「ツェナーダイオード」として同様の用途で扱われます。

その他ダイオードの活用

pn接合の一方向伝導特性や、逆方向での特性を活用して、多様な電子部品がつくられています。

  • 整流ダイオード(AC→DC変換)
    交流(AC)を整流し直流(DC)に変換する基本構成として使用されます。ブリッジダイオードや半波整流など、多岐にわたる形態があります。

整流ダイオードによる交流から直流への変換

  • LEDやレーザーダイオードなどの発光素子(※本ページでは概要のみ触れる)
    正バイアス時に電子と正孔が再結合し、光を放出する現象を利用します。素材によって放出される光の波長が変化し、赤色から紫外線領域まで応用されています。

LEDの発光原理

こうした多彩な応用例はいずれもpn接合の特性を巧みに活用した結果であり、電子工学全般において中心的な存在です。

まとめ

p型とn型半導体を単一結晶上で接合することによって、空乏層と内蔵電位が生じ、pn接合ならではの電気的特性が生まれます。pn接合には、外部からかけるバイアス電圧によって空乏層の厚みや内蔵電位が変化し、電流が大きく流れるかどうかが制御される仕組みが備わっています。

こうした一方向性の性質はダイオード特性と呼ばれ、整流器や保護回路、発光素子など幅広い分野で活用されています。さらに、ショックレー方程式などを用いてダイオードの電流—電圧特性を定量的に把握すれば、回路設計の精度を高めることも可能です。

ツェナーダイオードによる電圧安定化や各種ダイオード応用は、いずれもpn接合の物理現象を応用したものです。半導体デバイスの基礎を学ぶ上でpn接合をしっかり理解することは重要であり、電子回路の設計や解析を行う際にも欠かせない知識といえます。