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2014.10.20 AC/DC
スイッチング電源の動作には、不連続モードと連続モードがあります。今回の設計事例では、不連続モード動作を使うので、ここでこれらのモードについて説明します。下の表に特徴とメリット/デメリットをまとめてあります。「動作」の項目にある波形は、トランスの一次巻線と二次巻線に流れる電流を示しています。また、キーワードに付随する「↑」と「↓」は、「高上」と「低下」を意味しています。
連続モード動作では、スイッチオン時の整流ダイオード逆回復時間(trr)* の間に逆電流が流れ、この逆電流による損失が発生します。低電圧のスイッチングDC/DCコンバータでは、整流ダイオードの逆電圧が低く逆電流も小さくなるので、出力リップル電圧などを優先して連続モードを使うのが一般的です。
それに対してAC/DCコンバータの場合は、ダイオードの逆電圧が高く大きな逆電流が流れて大きな損失が生じてしまうため、逆電流を流さないように不連続モードを使用することが多くなります。ただし、ピーク電流が大きくなるので、負荷が大きい場合には連続モードで動作させることもあります。
それぞれにメリット/デメリットがありますが、60W程度までであれば一般には不連続モードが適します。それ以上の場合は、トランスの許容サイズなどを考慮して判断することになります。今回の設計事例は36Wなので、不連続モードを選択しました。
比較項目 | 不連続モード | 連続モード |
---|---|---|
動作 | ![]() OFFとON間に電流ゼロ期間があり、電流が連続して流れない。 |
![]() 電流が連続的に流れ、スイッチング周波数と同じ周波数でON/OFFする。 |
トランス | インダクタンス↓、サイズ↓、コスト↓ | インダクタンス↑、サイズ↑、コスト↑ |
整流 ダイオード |
高速リカバリタイプ、コスト↓ | より高速なリカバリタイプが必要、コスト↑ |
スイッチング トランジスタ |
許容電力↑、サイズ↑、コスト↑ | 許容電力↓、サイズ↓、コスト↓ |
出力 コンデンサ |
リップル電流↑、サイズ↑ | リップル電流↓、サイズ↓ |
効率 | スイッチング損失↓、効率↑ | スイッチング損失↑、効率↓ |
*ダイオードの逆回復時間
PN接合ダイオードに順方向電圧を加えると順方向電流が流れる。この状態から急激に逆方向電圧を加えると、ある時間の間本来は流れない逆方向電流が流れる。この状態が回復するまでの時間を逆回復時間という。
・連続モードと不連続モードの違いを理解する。
・AC/DCでは不連続モードを使うことが多い