この記事のキーポイント
・「SiC MOSFET:ブリッジ構成におけるゲート-ソース間電圧の挙動」を考察していくに当たって、MOSFETをブリッジ構成で使用する最も簡単な同期方式boost回路を例とする。
・例示回路の構成、動作、電圧・電流波形を理解する。
「SiC MOSFET:ブリッジ構成におけるゲート-ソース間電圧の挙動」を考察していくに当たって、今回はその前提となるブリッジ構成と動作に関する説明をします。
SiC MOSFETのブリッジ構成
以下に示す回路図は、MOSFETをブリッジ構成で使用する最も簡単な同期方式boost回路です。この回路に使用されているSiC MOSFETのハイサイド(HS)とローサイド(LS)は交互にオンしており、HSとLSが同時にオンすることを防止するために、HSとLSが共にオフしているデッドタイムが設定されています。下右の波形が、そのゲート信号(VG)タイミングを示しています。
この回路におけるHSおよびLSのMOSFETのドレイン-ソース電圧(VDS)とドレイン電流(ID)の波形の概形を以下に示します。この波形は、インダクタLの電流が連続動作となる、いわゆるハードスイッチング状態を前提にした波形です。
横軸は時間を表し、時間領域Tk(k=1~8)の定義は各々以下の通りです。
- T1: LSがONしMOSFETの電流が変化している期間
- T2: LSがONしMOSFETの電圧が変化している期間
- T3: LSがONしている期間
- T4: LSがOFFしMOSFETの電圧が変化している期間
- T5: LSがOFFしMOSFETの電流が変化している期間
- T4~T6: HSがONするまでのデッドタイム期間
- T7: HSがONしている期間(同期整流期間)
- T8: HSがOFFしLSがONするまでのデッドタイム期間

次回からはこれらを前提に話を進めていきますので、このブリッジ回路の動作、そして電圧・電流の波形をイメージできるようにしてください。