電源設計の技術情報サイト

技術資料ダウンロード

2021.08.17 SiCパワーデバイス

従来MOSFETの駆動方法

ドライバソース端子によるスイッチング損失の改善

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

この記事のキーポイント

・スイッチングの高速化において、MOSFETの寄生インダクタンスによるスイッチング損失が課題となる。

・ドライバソース端子は、この課題に対処する目的のもの。

MOSFETやIGBTなどのパワースイッチングデバイスは、様々な電源アプリケーションや電力ラインのスイッチング素子として使用されています。そのスイッチング素子で発生するスイッチング損失や導通損失は、可能な限り小さくする必要がありますが、アプリケーションによって損失低減のアプローチは様々です。近年、その1つの手法としてドライバソース端子(いわゆるケルビンソース端子)を有する新しいパッケージが発表されています。この「ドライバソース端子によるスイッチング損失の改善」では、パワースイッチングデバイスがドライバソース端子を持つことの効果と、使用上の注意事項について説明します。

従来MOSFETの駆動方法

ドライバソース端子の説明のために、最初に従来のMOSFETの駆動方法を確認します。

MOSFETは一般的に電圧駆動型であり、ゲート端子への電圧をオンオフすることでスイッチング動作を制御します。以下に従来のTO-247Nパッケージ(3端子)のMOSFETの一般的なゲート駆動回路例を示します。

一般的なMOSFETのゲート駆動回路例。

駆動電源VGとMOSFETのゲート端子Gateの間に外付け抵抗RG_EXTを接続しスイッチング速度を制御しますが、駆動回路にはPCBパターンのインダクタンスLTRACEと、MOSFETのソース端子Sourceに存在するパッケージインダクタンスLSOURCEが含まれており、このパラメータを考慮することがとても重要です。ゲート端子のパッケージインダクタンスはLTRACEに包含されており、ドレイン端子DrainのインダクタンスLDRAINはゲート駆動回路に含まれないため、ここでは省略しています。

この駆動回路の動作は基本的かつ一般的なものなのでここでは割愛しますが、従来のスイッチング速度では見落とされやすい動作として、ドレイン‐ソース間を流れるドレイン電流IDの変化によるLSOURCEでの起電VLSOURCEがあります。以下に駆動回路におけるスイッチング動作中の電圧印加を示します。

MOSFETのスイッチング動作中の電圧印加。

VGが印加されMOSFETがターンオンするとIDは増加し、LSOURCEに図中(I)の方向にVLSOURCEが発生します。一方、ゲート端子には電流IGが流入するため、RG_EXTで電圧降下VRG_EXT(I)が発生します。これらの電圧はターンオン時の駆動回路網に含まれており、MOSFETのターンオン動作に必要なチップ上の電圧VGS_INTを式(1)のように減少させてしまい、結果としてターンオン速度の低下を招いています。LTRACEによる起電も発生していますが、小さいためここでは省略しています。

V_(GS_INT)=V_G-I_G×R_(G_EXT )-L_SOURCE×dI_D/dt

ターンオフ時も同様の理由から、式(1)で示されるIGおよびdID/dtが負となることから、RG_EXTとLSOURCEに電圧上昇(II)を発生させ、VSG_INTの増加によるターンオフ速度の低下を引き起こします。

一般的にパワースイッチングデバイスのLSOURCEは数nHから十数nHとなっており、dID/dtが数A/nsに達すると10V以上のVLSOURCEが発生することもあり、スイッチング動作に大きな影響を及ぼすことになります。

ドライバソース端子は、このVLSOURCEの影響を取り除き、スイッチング速度の改善を図るものです。

シリコンカーバイドパワーデバイスの理解と活用事例