シミュレーション|
ROHM Solution Simulatorを使ってみる その2
2021.03.16
この記事のポイント
・Solution Circuitの部品や回路を変更する際には、ROHM Solution Simulatorのプラットフォームである「SystemVisionR Cloud」へ移行する必要があるが、それはワンクリックで簡単に移行できる。
・「SystemVisionR Cloud」へ移行すれば、提供されているSolution Circuitを自由に変更して様々なシミュレーションが可能。
※本記事に掲載している情報は2021年03月16日時点での情報となります。予めご了承下さい。
その1:降圧型スイッチングレギュレータの周波数特性のシミュレーションに続いて、その2:過渡応答特性波形の2つのシミュレーション例を示します。この例は、提供されているSolution Circuitを若干モディファイして使う例です。なお、操作方法などの確認を急ぐ場合は、「ハンズオンユーザーズマニュアル(PDF)」をご利用ください。
ROHM Solution Simulatorを使ってみる
その2:降圧型スイッチングレギュレータ過渡応答特性波形のシミュレーション
「その1」同様にROHM Solution Simulatorのページに行き、「ICs Solution Circuit」の「Switching Regulators」を開き、図1に示す「BD90640EFJ」の「Time Domain」の「Simulation」ボタンをクリックします。
図1.「BD90640EFJ」の「Time Domain」の「Simulation」ボタン

そうすると「その1」同様にシミュレーション回路が表示され、中央付近のRunマーク(▶)をクリックするとシミュレーション画面になります(図2)。
図2.「BD90640EFJ」の「Time Domain」のシミュレーション画面

このシミュレーション回路は「その1」と基本回路は同じで、入力電圧投入時のスイッチングノードの電圧と出力電圧の起動波形をモニタするシミュレーションになっています。これをモディファイして負荷過渡応答のシミュレーションを行い、出力電流と出力電圧の波形を確認します。そのためには、以下をモディファイします。
- 1) 過渡負荷を与えるために、パルス電流源(Current Source ? Pulsed)コンポーネントを出力ノードに追加し、パルス電流源の条件を設定する。
- 2) 負荷電流をモニタするために電流モニタ(Current Monitor)コンポーネントを出力ノードに追加する。
- 3) 負荷抵抗Rloadをこのシミュレーションに合わせて変更する。
- 4) シミュレーション時間をこのこのシミュレーションに合わせて変更する。
このモディファイでは提供されているSolution Circuitにコンポーネントを追加や回路変更をすることになりますが、ROHM Solution Simulator上では部品定数のパラメータの変更のみしかできません。そのためこのようなモディファイを行うには、ROHM Solution Simulatorのプラットフォームである「SystemVision® Cloud」へ移行する必要があります。移行は簡単で、図2のシミュレーション画面右下にある赤枠で囲んだ「Edit in systemvision.com」のボタンをクリックするだけです。移行すると図3のような画面になります。左サイドメニューに、コンポーネントの選択肢が現れるので、必要なものを選び画面上に展開して回路図をモディファイしていきます。
図3. ROHM Solution Simulatorのプラットフォームである「SystemVision® Cloud」へ移行した画面

それでは、今回のシミュレーションに必要な1) ~ 4) のモディファイを行います。以降、詳細は別途あらためて説明するので、とりあえず例の通り実行してみてください。
すでに図3には、パルス電流源(Current Source ? Pulsed)と電流モニタ(Current Monitor)のコンポーネントを、左メニューから回路図上にドラッグして置いてあります。これらのコンポーネントは、左メニューのSystemVision>Analog Electronicsにあります。
図4は、パルス電流源が負荷となるように結線し、電流モニタを出力ラインに挿入し、青プローブを出力電圧モニタ用に、赤い出力電流(電流モニタコンポーネント)に接続した回路図です。以下の1) ~ 4) を参照して、回路を変更してください。
図4. 出力過渡応答のシミュレーション用にモディファイしたシミュレーション回路例

1) パルス電流源を回路に追加します。電流をシンクする必要があるので電流の向きを示す矢印が下「↓」を向くよう上下反転させます。コンポーネントをクリックすると反転・回転機能アイコンが現れます。配線はカーソルを既存の配線に当てるとカーソルが「+」に変わるので、左クリックしたままカーソル移動することで引けます。追加できたら、パルス電流源をダブルクリックして、図5のように条件設定を行います。数値に付随しているmはミリ、uはマイクロの意味です。
2) 電流モニタの挿入は挿入位置にドラッグするだけです。アイコンの矢印が左「←」を差すように左右反転させます。赤のプローブを電流モニタにドラッグすると小ウインドウが開くので、一番上の「i」を選択します(図6)。
3) Rloadの値を、図7のように変更します。
4) シミュレーション時間を変更するので、画面上部のRunボタン ▶ の左側にある設定ボタンをクリックして、図8のように設定します。
図5. パルス電流源の追加と設定

図6. 電流モニタの挿入と設定

図7. Rloadの抵抗値変更

図8. シミュレーションの設定変更

図9. シミュレーション結果

これで変更と条件設定は終わりです。それでは、Runボタン ▶ のをクリックしてシミュレーションを開始します。セーブするかどうかのウインドウが開く場合は、とりあえず ? をクリックしてください。このシミュレーションには少々時間がかかります。シミュレーションの進捗状態は%で表示されます。
シミュレーションが終わると、図9のような結果が表示されます。入力電圧投入後出力が5Vに立ち上がり、起動から2ms後にRloadの定常負荷にパルス負荷が追加され、1ms後にパルス負荷が終わり定常負荷に戻る、都合4msのシミュレーション結果です。これは、パルス電流源、Rload、シミュレーション設定で行った条件設定と一致していることがわかると思います。
出力電圧の負荷過渡応答とわずかな変動が観察できますが、わかりにくいのでグラフのレンジを変更します。横軸の目盛りの辺りを右クリックしてドラッグすることで表示するレンジ指定ができます。同様に、出力電圧も縦軸でレンジ指定をします(図10)。これで、図4にあるようなグラフとなり、出力電圧の応答を検討することができます。グラフ部を右クリックすると機能が表示されるので、いろいろ試してみてください。このICのシミュレーションガイド(PDF)が参考になります。
図10. シミュレーション結果グラフのレンジを見やすいように変更


ここでは、とりあえず動かしてみることを目的に例を示しました。各機能や操作方法は別途説明していきます。
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