オペアンプは、2つの入力端子間のわずかな電圧差を増幅して出力するアナログICです。入力抵抗が高く出力抵抗が低いため、信号源に余分な負担をかけずに後段の回路を駆動できます。また、出力の一部を入力に戻す負帰還をかけることで、増幅率や動作を安定させられます。センサの微弱な出力を増幅する回路や、信号を損なわずに次の段へ渡すバッファ(ボルテージフォロア)など、幅広い用途で使われています。この記事では、オペアンプの仕組み、構成と原理、回路内での役割、選び方、特性と用語、コンパレータとの違いを順に解説します。
オペアンプの仕組み
まず、オペアンプが入力端子の電圧差をどのように扱い、負帰還によって回路動作を決めていくかを確認します。端子や内部回路の詳細に入る前に、差電圧の増幅、バーチャルショート、ボルテージフォロアの動きから基本的な考え方を押さえます。
2つの入力端子間の電圧差を増幅する
ここでは、オペアンプが何を入力として見ているのかを確認します。重要なのは、+入力端子と-入力端子それぞれの電圧そのものではなく、2つの入力端子の間に生じる差電圧です。
オペアンプは+入力端子と-入力端子間の微小な差電圧を増幅し出力します。 そのためオペアンプは高い増幅率を持つことが望まれます。
+入力端子と-入力端子に同じ電圧が加わっているだけでは、理想的には出力変化は生じません。出力を決めるのは2つの入力の差であり、どちらの入力が高いかによって出力の向きが変わります。
ただし、オペアンプ単体の開放利得は非常に大きいため、負帰還なしで使うと出力が電源電圧付近へ振り切れやすくなります。そのため、実際の増幅回路では外付け抵抗などで負帰還を構成し、必要な利得に整えて使います。
負帰還とバーチャルショート
オペアンプは開放利得が非常に大きいため、入力端子間にわずかな電圧差があるだけでも出力が大きく変化します。そのままでは出力が電源電圧付近へ振り切れやすいため、実際の増幅回路では出力の一部を-入力端子へ戻す負帰還を使い、必要な利得や動作に整えます。
負帰還が正しく働いて線形動作している範囲では、オペアンプの出力は+入力端子と-入力端子の電位差を小さくする向きに変化します。その結果、2つの入力端子は実際につながっていなくても、電位がほぼ等しいものとして考えられます。この近似をバーチャルショートと呼びます。
バーチャルショートは、負帰還がかかり、十分なループ利得があり、入力同相電圧範囲や出力振幅範囲を外れていないときに使える考え方です。負帰還をかければ必ず安定するわけではなく、帯域、位相余裕、負荷容量、配線や基板の寄生成分によって発振や応答の乱れが起きる場合があります。次のボルテージフォロアでは、この考え方を具体的な回路で確認します。
ボルテージフォロアで見る基本動作
負帰還とバーチャルショートの関係は、ボルテージフォロアを見ると具体的に理解しやすくなります。ここでは、入力電圧をそのまま出力へ受け渡す回路を例に、開放利得が十分大きいときに出力誤差が小さくなる考え方を確認します。
ボルテージフォロア回路は、出力端子を-入力端子へ直接戻す負帰還回路です。条件を満たす範囲では、+入力端子に加えた入力電圧に追従するように出力が変化し、入力電圧と出力電圧がほぼ等しくなります。電圧利得はほぼ1倍ですが、高入力抵抗と低出力抵抗を生かし、電圧バッファとして信号を次段へ受け渡せます。
この回路では、出力電圧が-入力端子へ戻るため、入力端子間の差電圧はVS–VOUTとして考えられます。オペアンプはこの差電圧を開放利得AVで増幅するため、出力電圧は次のように表されます。
\(V_{OUT} = A_V × (V_{IN+} – V_{IN-}) = A_V × (V_S – V_{OUT})\)
よって
\(V_S-V_{OUT} = \displaystyle\frac{V_S}{1+A_V}\)
開放利得AVが十分に大きい範囲では、式の左辺にあたる差電圧VS–VOUTを0に近い値として扱えるため、VS=VOUTと近似できます。これは入力と出力が完全に等しいという意味ではなく、有限の開放利得や入力・出力範囲、負荷条件によって誤差が残る場合があります。
オペアンプに高い開放利得が望まれるのは、この誤差をできるだけ小さくするためです。別の見方をすると、負帰還が正しく働くことで+入力端子と-入力端子の電位差が小さくなり、前節で説明したバーチャルショートとして扱いやすくなります。
ボルテージフォロアでは、この性質により電圧利得をほぼ1倍に保ちながら、信号源への負担を抑えて後段へ信号を渡せます。ただし、使うオペアンプがユニティゲイン安定であることや、容量性負荷で発振しないことはデータシートで確認します。
オペアンプの構成と原理
ここでは、オペアンプを外から見た端子構成と、理想モデル、内部回路の役割を確認します。仕組みの章で見た動作が、どの端子、入力段、利得段、出力段によって成り立つのかを整理します。
オペアンプの端子構成と電源端子名
オペアンプを使うときに最初に迷いやすいのは、どの端子へ信号を入れ、どの端子へ電源をつなぐかです。ここでは、回路図やデータシートを読む前提として、1回路あたりの基本端子と電源端子名を確認します。
オペアンプは、1回路あたり正側電源端子、負側電源端子、+入力端子、-入力端子、出力端子の5つの端子で構成されます。
※一般的に端子の呼び名は電源、入力、出力という分類以外は統一されていません
| バイポーラタイプ | CMOSタイプ | |
|---|---|---|
| 正側 電源端子 |
VCC | VDD |
| 負側 電源端子 |
VEE | VSS |
理想オペアンプの入力抵抗と出力抵抗
次に、信号源や負荷に余分な影響を与えないオペアンプとは何かを、理想モデルで確認します。高入力抵抗と低出力抵抗は、センサ信号を崩さず受け取り、後段へ渡すための基本条件です。
オペアンプに求められる機能として高入力抵抗(インピーダンス)、低出力抵抗があります。
下図【電圧制御電圧源増幅器のモデル】において、入力電圧と出力電圧の関係は次式で表されます。

\(V_O = A_V × \displaystyle\frac{R_i}{R_i + R_S} × \displaystyle\frac{R_L}{R_O + R_L} × V_S\)
信号電圧VSは信号源抵抗RSとオペアンプの入力抵抗Riにより抵抗分割により分圧されるため減衰した信号がオペアンプに入力されます。
しかし、RSよりもRiが十分に大きい (Ri=∞) としたとき、式の第1項は1 に近似することができ、VS=Viとみなすことができます。
次に第2項について、増幅された入力電圧AVViはオペアンプの出力抵抗ROと負荷抵抗RLにより分圧され出力されます。
このとき、RLよりもROが十分に小さい (RO=0) とすると、第2項は1に近似することができ信号が減衰せずに出力できることが分かります。
このようなオペアンプは理想オペアンプと呼ばれます。
通常オペアンプは高入力抵抗、低出力抵抗が望まれ、理想オペアンプに近くなるよう設計を施された回路構成となっています。
| 入力抵抗 | 出力抵抗 | |
|---|---|---|
| 理想オペアンプ (電圧制御電圧源) |
∞ | 0 |
内部回路の構成
端子や理想モデルを確認したうえで、次にIC内部で信号がどの段を通って増幅されるかを見ます。内部回路を細部まで設計するためではなく、入力段、利得段、出力段が特性にどう関係するかを理解するための整理です。
下にオペアンプの内部回路構成を示します。一般的に、オペアンプは入力段、利得段、出力段の3段構成で考えられます。
入力段は差動増幅段で構成され、+入力端子と-入力端子の差電圧を受け取ります。同相信号成分(端子間に電位差がなく、等しい電圧が入力されている状態)は理想的には抑えられますが、実際のICでは同相信号除去比として有限の特性を持ちます。
利得段は、差動増幅段だけでは不足する利得を補い、オペアンプ全体の開放利得を高めます。一般的なオペアンプでは、負帰還回路で安定して使えるように、利得段の周辺に発振防止用の位相補償容量が接続されています。
出力段は、出力端子に接続される負荷の影響を抑え、後段を駆動するための段です。負荷による歪みや電圧降下などは、主に出力段の回路構成と電流能力に依存します。出力段にはA級、B級、C級、AB級などの分類がありますが、ここでは内部回路の概要として、出力段が負荷駆動に関わる部分であることを押さえます。

オペアンプの役割
オペアンプは、微小な電圧差を扱いやすい信号に変換し、信号源と負荷の影響を切り離して回路を安定して動作させるために使われます。
センサや検出回路では、信号源の出力が小さく、後段のA/Dコンバータや制御回路へそのまま渡すと誤差や負荷の影響を受けやすくなります。オペアンプを使うと、信号源への負担を抑えながら必要な電圧範囲へ整え、次の回路へ受け渡しやすくできます。
微小信号を扱いやすい電圧に変換
センサや検出回路で得られる小さな信号は、そのままでは後段の回路で扱いにくいことがあります。オペアンプは、このような微小信号を必要な電圧レベルまで増幅する役割を担います。
たとえば、センサの出力をA/Dコンバータやマイコン内蔵のA/D入力で読み取る場合、入力範囲に対して信号が小さすぎると分解能を十分に使えません。オペアンプで信号を適切な範囲まで増幅すると、後段の回路が信号の変化を読み取りやすくなります。ただし、必要な利得だけでなく、オフセット、ノイズ、入力範囲、出力範囲もあわせて確認します。
微小信号を増幅するときは、単に大きくすればよいわけではありません。信号に重なるノイズや入力オフセット電圧も一緒に扱うことになるため、後段で必要な分解能や測定範囲に合わせ、利得と誤差要因を同時に見ます。
信号源と負荷を切り離す
高入力抵抗と低出力抵抗の特性により、信号源への負担を抑えながら負荷を駆動できます。
入力抵抗が高いと信号源の電圧を崩しにくく、出力抵抗が低いと後段の回路や負荷を駆動しやすくなります。
信号源には、センサや分圧回路のように出力抵抗が高いものがあります。このような信号源へ負荷を直接つなぐと、信号源抵抗と負荷抵抗で分圧され、取り出したい電圧が下がることがあります。
オペアンプを間に入れると、前段からは電流をほとんど取らず、後段には必要な電流を供給しやすくなります。この働きはバッファ用途で特に重要で、ボルテージフォロアでは電圧利得がほぼ1倍でも、信号電圧を保ったまま次の回路へ渡しやすくなります。
計測・制御・オーディオ・電源での用途
計測、制御、オーディオ、電源回路などでは、信号の増幅、バッファ、フィルタなどの目的でオペアンプが使われます。用途に応じて、入力範囲、出力範囲、ノイズ、温度特性などを確認します。
計測回路ではセンサ信号を読み取りやすい電圧に整え、制御回路では検出した信号を判断や制御に使いやすい形にします。オーディオ回路では信号の増幅やフィルタ処理に使われ、電源回路では電圧や電流の検出、帰還制御を支える信号処理部として使われます。用途ごとに求められる精度、帯域、ノイズ、入出力範囲が異なるため、回路の目的に合わせて特性を確認します。
オペアンプの選び方
種類を選ぶときは、電源構成だけでなく、入力信号が扱える範囲に入るか、出力が後段の回路に必要な電圧まで振れるかを確認します。さらに、精度、ノイズ、帯域、消費電流、動作温度範囲なども用途に合わせて見ると、回路条件に合うオペアンプを選びやすくなります。
電源構成で選ぶ
最初に確認するのは、回路が正負両方の電源を用意できるか、単一の電源で動かす必要があるかです。電源構成は、入力信号の基準電位や0V付近の信号を扱えるかに関わります。ただし、実際に扱える範囲は電源方式だけでなく、入力同相電圧範囲と出力振幅範囲でも決まるため、両電源と単電源の違いを整理したうえでデータシートで確認します。
両電源オペアンプの特徴
オペアンプは一般的に0Vに近い微小信号を増幅することが多いため、両電源オペアンプで0Vの入力が必要な場合は、VEEを負電圧側に設定します。必要な負電源電圧は品種や入力同相電圧範囲によって異なるため、データシートで確認します。このことから、負電源を用いるケースが大半で、正・負両方の電源が必要であることから、両電源オペアンプと呼ばれています。
単電源オペアンプの特徴
単電源オペアンプは、負電源を用意せずに単一電源で動作させやすい品種です。0V付近の信号を扱える品種は、グランドセンスオペアンプとも呼ばれます。ただし、単電源で動作することと、入力や出力が常に0V付近まで仕様どおり扱えることは同じではありません。入力同相電圧範囲と出力振幅範囲をデータシートで確認します。
入出力電圧範囲で選ぶ
電源構成を決めた後は、実際の入力信号と必要な出力電圧が、選んだオペアンプの動作範囲に収まるかを確認します。特に低電圧動作では、電源電圧の近くまで入力・出力できるかが使いやすさに関わります。
オペアンプ(演算増幅器)の種類としては、入出力電圧範囲の違いから「両電源オペアンプ」、「単電源オペアンプ」、「 Rail-to-Railオペアンプ」の3つに大きく分けられます。各オペアンプの入出力電圧範囲は下図のようになります。
Rail-to-Railオペアンプの特徴
近年の省エネ化に伴い、セットでは低電圧で駆動するものも多くなっています。オペアンプも同様に低電圧での動作が必要になりますが、VCC電圧が5V近くにまで落ちてくると、品種によっては入力上限がVCCより一定電圧低い範囲に制限され、不便な状況が出てきます。そこで、電源レール近くまで入力または出力を扱えるようにしたRail-to-Railオペアンプが登場しました。電源電圧(VEE~VCC)範囲の近くまで入出力できるため、入出力フルスイングオペアンプとも呼ばれています。ただし、実際にどこまで扱えるかは、入力同相電圧範囲、出力電流、負荷抵抗、温度、電源電圧などの条件で変わります。VEEからVCCまで常に理想的に動作するという意味ではないため、データシートの条件で確認します。
用途別に選ぶ
用途に合うオペアンプを選ぶときは、電源条件、入出力電圧範囲、必要な精度、信号帯域、ノイズ、温度条件を順に確認します。
車載や産業機器では、温度範囲、ノイズ耐性、長時間動作時の安定性が重要になります。バッテリー駆動機器では、低電圧動作や消費電流、入出力の電圧範囲を確認します。センサ信号処理では、微小信号を扱うためのオフセット、ノイズ、入力バイアス電流、必要な帯域を用途に合わせて見ます。
オペアンプの特性と用語
オペアンプを選ぶときは、増幅できることだけでなく、信号をどの程度正確に扱えるかも確認します。ここでは、増幅率と電圧利得、入力オフセット電圧、スルーレート、ノイズ特性、温度特性、絶対最大定格を順に確認します。
増幅率と電圧利得
増幅率と電圧利得では、入力信号をどの程度大きくするか、また利得をdBでどのように表すかを確認します。
増幅率と電圧利得を確認するときは、負帰還回路の構成や外付け抵抗などで決まる閉ループ利得と、オペアンプ単体が持つ開ループ利得(開放利得)を分けて考えます。詳しい計算方法やdB表記の読み方は、利得を扱う詳細記事で確認すると理解しやすくなります。
入力オフセット電圧
入力オフセット電圧は、入力差電圧がゼロでも出力に誤差が生じる要因です。高精度な計測回路では特に確認が必要です。
高い利得で微小信号を扱う回路では、入力オフセット電圧による誤差も増幅され、出力誤差として無視できない場合があります。センサ計測や基準電圧まわりなど、高精度を求める回路では、温度によるオフセットの変動も確認します。
スルーレート
スルーレートは、出力電圧が時間に対してどれだけ速く変化できるかを示す特性です。大振幅信号や高速信号を扱う場合に確認します。
大振幅の信号や周波数の高い信号では、必要な変化速度がスルーレートを超えると、出力波形が入力変化に追従できず歪むことがあります。扱う信号の振幅と周波数をもとに、必要なスルーレートを満たしているか確認します。
ノイズ特性とEMI/EMS
ここでは、信号そのものに重なるノイズ性能と、外来の電磁ノイズに対するEMI/EMSの観点を分けて確認します。どちらも微小信号の品質に関わりますが、確認する項目は異なります。
オペアンプのノイズ性能では、入力換算ノイズや周辺抵抗の熱雑音など、信号へ重なる成分を見ます。一方、EMI/EMSでは、回路が電磁ノイズの発生源になり得ることや、外来ノイズを受けたときに誤動作しにくいかを確認します。微小信号を扱う回路やノイズ源の近くで使う回路では、必要な信号帯域、ノイズ性能、外来ノイズへの耐性を用途に合わせて確認します。
温度特性と動作温度範囲
温度特性は、周囲温度の変化によってオフセット電圧や特性がどの程度変わるかを確認する項目です。使用環境に対して動作温度範囲を満たすかを確認します。
データシートの電気的特性は25℃など特定条件で示されることが多く、実際の使用温度ではオフセット電圧、入力バイアス電流、利得などが変化する場合があります。周囲温度だけでなく、IC内部のジャンクション温度が許容範囲に収まるかも確認します。消費電力や基板の放熱条件によって温度上昇は変わるため、熱設計を含めて動作温度範囲を確認します。
絶対最大定格の読み方
絶対最大定格は、超えてはならない限界値を示す項目です。通常動作で満たすべき条件を示す動作電源電圧範囲とは分けて確認します。
絶対最大定格は、短時間であっても超えると劣化や破壊につながる可能性がある限界値です。この範囲内であれば性能が保証されるという意味ではなく、通常動作では電気的特性に示される動作条件を満たす必要があります。設計時は、電源、入力、出力、温度などが絶対最大定格に近づかないよう余裕を持って確認します。
電源電圧と動作電源電圧範囲
電源電圧の絶対最大定格は破壊を避けるための上限であり、動作電源電圧範囲は仕様どおりに動作するための範囲です。
設計では、通常時の電源電圧が動作電源電圧範囲に収まることを確認します。あわせて、電源変動や過渡的な上昇が起きても、絶対最大定格を超えないように余裕を持たせます。
差動入力電圧
差動入力電圧は、+入力端子と-入力端子の間に加えられる電圧差です。入力端子間の許容範囲を超えないように確認します。
入力端子間に大きな電圧差が加わると、入力保護素子や入力段に負担がかかる場合があります。そのため、通常動作で想定される入力差だけでなく、電源投入時や異常時に端子間へ加わる電圧も確認します。
同相入力電圧
同相入力電圧は、両入力端子に共通して加わる電圧範囲です。単電源やRail-to-Rail品を選ぶときは、信号が入力同相電圧範囲に収まるかを確認します。
同相入力電圧の絶対最大定格は、両入力端子に加えてよい同相電圧の限界値を示します。一方、電気的特性に記載される入力同相電圧範囲は、オペアンプが仕様どおりに動作できる入力電圧の範囲です。
入力電流
入力電流は、入力端子に流れ込む、または入力端子から流れ出る電流です。高抵抗の信号源を扱う場合は、入力電流による誤差を確認します。
ここで確認する入力電流には、入力端子に定格外の電圧が加わったとき、保護素子へ流れ込む電流も含まれます。これは通常動作時の入力バイアス電流とは意味が異なるため、分けて確認します。入力端子にクランプダイオードなどの保護素子がある場合は、直列抵抗などで電流を制限し、許容範囲を超えないように設計します。
オペアンプとコンパレータの違い
最後に、端子構成が似ているオペアンプとコンパレータの違いを整理します。どちらも2つの入力を扱いますが、負帰還で線形増幅する用途と、電圧の大小を判定する用途では、内部構成や応答速度の考え方が異なります。
用途の違い
オペアンプは、連続的に変化するアナログ信号を増幅したり、バッファやフィルタとして整えたりする用途で使われます。一方、コンパレータは二つの電圧を比較し、どちらが高いかをHigh/Lowの信号として出力する電子部品です。温度センサでのしきい値検出、バッテリーモニターでの電圧監視、過電圧保護回路での異常検出など、判定結果を素早く得たい用途に使われます。
コンパレータ (Voltage Comparator:比較器) の端子構造はオペアンプと同様で +入力端子、-入力端子、正側電源端子、負側電源端子、出力端子の5端子で構成されています。どちらか一方の入力端子を基準端子とし電圧を固定し、この基準電圧ともう一方の端子に入力される電圧の差を増幅し、HighまたはLowを出力する回路です。
+入力端子の電位 > -入力端子の電位が成立すればHighレベルを出力
-入力端子の電位 > +入力端子の電位が成立すればLowレベルを出力
位相補償容量と応答速度の違い
オペアンプとコンパレータは端子構成が似ていますが、内部で重視する特性が異なります。オペアンプは負帰還回路で安定して使うことが多いため、一般的にはIC内部に発振防止用の位相補償容量を持ちます。一方、コンパレータは入力電圧の大小を高速に判定する用途を想定しており、負帰還で線形増幅する前提では設計されていません。
コンパレータ内部の考え方
回路構成の考え方はオペアンプと近い部分がありますが、コンパレータでは位相補償容量を持たない構成が一般的です。そのため、オペアンプより応答時間を短くしやすく、しきい値判定に向いています。ただし、応答速度は位相補償容量だけで決まるものではなく、入力段、出力段、飽和からの回復、出力形式などにも依存します。詳しい注意点は次の節で確認します。

オペアンプをコンパレータとして使う場合の注意点
以上の違いから、比較判定を目的にする場合は、原則としてコンパレータを選ぶのが基本です。オペアンプをコンパレータとして使うと、位相補償容量や出力飽和からの回復により、コンパレータより応答が遅くなることがあります。
また、オペアンプはHigh/Lowを出力するロジックICとして設計されているわけではないため、出力電圧レベル、入力同相電圧範囲、差動入力電圧の許容範囲、出力が期待と逆方向に振れる現象の有無や復帰時間を確認する必要があります。
しきい値付近で入力がゆっくり変化する場合やノイズが重なる場合は、出力が不安定に切り替わることがあります。ヒステリシスが必要な用途や高速な判定が必要な用途では、コンパレータの使用を前提に検討します。オペアンプを代用する場合は、データシートでその使い方が許容されるかを確認します。
オペアンプの基礎のまとめ
オペアンプは、2つの入力端子間の差電圧を増幅し、負帰還を組み合わせることで必要な利得や動作を得るアナログICです。端子構成や内部回路、高入力抵抗・低出力抵抗の考え方を押さえると、微小信号の増幅、バッファ、フィルタ、検出回路などでなぜ使われるのかが理解しやすくなります。選定では、電源構成、入出力電圧範囲、利得、オフセット、スルーレート、ノイズ、温度条件を用途に合わせて確認します。コンパレータとは端子構成が似ていますが、主な用途と内部構成が異なるため、電圧の大小判定には専用コンパレータの使用も含めて検討することが大切です。