オペアンプ|基礎編

オペアンプの入力特性とは?入力精度と安全定格を解説

オペアンプを正しく使うには、入力端子に入る信号の誤差と、ICを壊さないための入力・電源条件を分けて理解する必要があります。入力オフセット電圧は出力誤差の原因になり、電源電圧、差動入力電圧、同相入力電圧、入力電流は、データシート上で安全に使える範囲を判断するための項目です。

本記事では、入力特性を入力精度と安全定格に分け、入力オフセット電圧の意味と出力誤差への影響、絶対最大定格と動作条件の違い、差動入力電圧・同相入力電圧の読み方、定格外入力時の入力電流と保護方法を解説します。

絶対最大定格と動作条件は意味が異なるため、本文では両者を分けて確認します。

オペアンプの入力特性とは

オペアンプの入力特性は、大きく2つに分けられます。1つは、入力信号をどれだけ正確に扱えるかを示す特性です。もう1つは、入力端子や電源端子に加えてよい電圧・電流の上限を示す定格です。

入力バイアス電流は、通常動作時に入力端子へ流れる微小な電流で、信号源抵抗と組み合わさると電圧誤差の原因になります。一方、電源電圧、差動入力電圧、同相入力電圧、入力電流は、ICの破壊や劣化を避けるために確認する項目です。

表1 入力特性の分類
分類 項目 何を見るか 設計上の意味
入力精度 入力オフセット電圧 入力端子間に換算した誤差電圧 出力誤差を見積もる
入力精度 入力バイアス電流 通常動作時に入力端子へ流れる微小電流 高抵抗信号源での電圧誤差を見積もる
安全定格 電源電圧 VCC端子とVEE端子の電位差 電源端子間の過電圧を避ける
安全定格 差動入力電圧 +入力端子と-入力端子の電圧差 入力段や端子間保護素子の過負荷を避ける
安全定格 同相入力電圧 入力端子電位と電源端子の関係 入力端子の許容電位を確認する
安全定格 入力電流 定格外電圧時に保護素子へ流れる電流 保護素子や入力段の劣化・破壊を避ける

入力精度に関わる特性

通常動作時の入力精度に関わるパラメータとして、入力オフセット電圧と入力バイアス電流があります。入力オフセット電圧は入力端子間に換算した誤差電圧であり、入力バイアス電流は信号源抵抗と組み合わさって電圧誤差を生じる微小電流です。どちらも、微小なセンサ信号や高いDC精度が必要な回路では出力誤差に影響します。

入力オフセット電圧とは

理想的なオペアンプでは、+入力端子と-入力端子の電位差が0Vであれば、出力も理想的には0Vになります。しかし実際のオペアンプでは、入力段の素子ばらつきなどにより、入力端子間の電位差が0Vでも出力にずれが生じることがあります。このずれを0Vにするために入力端子間へ加える補正電圧を、入力オフセット電圧と呼びます。

入力オフセット電圧の単位は、通常mVまたはµVで表されます。値が0に近いほど理想に近く、DC精度が必要な回路では重要な確認項目です。

入力オフセット電圧による出力ずれの例

入力オフセット電圧による出力ずれの例

同相入力範囲外では、入力オフセット電圧が急激に増加し、オペアンプとして正常に動作しにくくなる領域があります。入力オフセット電圧を評価するときは、測定条件や入力同相電圧範囲も合わせて確認します。

入力換算値として表す理由

入力換算とは、出力側に現れた誤差を入力側の電圧に換算して扱う方法です。オペアンプは回路構成によって閉ループ利得やノイズゲインが変わるため、出力側の値だけではIC単体の誤差や回路間の比較がしにくくなります。入力側の誤差として示すと、回路条件に応じて出力誤差へ換算でき、データシート上の入力オフセット電圧や入力換算ノイズも同じ基準で確認しやすくなります。

入力換算値は、実際の出力誤差をそのまま示す値ではありません。出力に現れる誤差は、入力換算値に回路の閉ループ利得やノイズゲインを掛けて見積もります。そのため、データシートでは入力側で示された値を確認し、実際の回路では使用する利得条件、信号源抵抗、温度、帯域を合わせて評価します。

入力オフセット電圧が出力誤差に与える影響

入力オフセット電圧による出力誤差は、概算として入力オフセット電圧にノイズゲインを掛けて見積もれます。

\(V_{OUT\_error}≈V_{OS}×ノイズゲイン\)

VOSは入力オフセット電圧、ノイズゲインは入力換算誤差が出力へ現れる倍率です。

非反転増幅回路のようにノイズゲインが閉ループ利得と同じになる場合は、次の式で概算できます。

\(V_{OUT\_error}≈V_{OS}×\left(1+\displaystyle\frac{R_F}{R_G}\right)\)

RFは帰還抵抗、RGはゲイン設定抵抗です。反転増幅回路でも、入力オフセット電圧による出力誤差は信号利得ではなくノイズゲインで考えます。

例えば、RF/RG = 100 の場合、信号利得は反転で100倍ですが、ノイズゲインは 1 + 100 = 101倍になります。そのため、入力オフセット電圧 VOS = 1mV の場合、出力誤差は約101mVになります。

例えば、入力オフセット電圧 VOS = 1mV、ノイズゲイン = 101 の場合、出力誤差は約101mVになります。小さな入力換算誤差でも、高いノイズゲインの回路では出力側で大きく見えることがあります。例えば、RF/RG = 100 の場合、信号利得は反転で100倍ですが、ノイズゲインは 1 + 100 = 101倍になります。そのため、入力オフセット電圧 VOS = 1mV の場合、出力誤差は約101mVになります。

入力オフセット電圧のばらつきと正規分布

入力オフセット電圧は、個体ごとの値を見ると0V付近を中心に正負両方向へ分布する傾向があります。データシートの規格値は多くの場合、VOSの絶対値の最大値として示されるため、実際の個体では正方向にも負方向にもオフセットが生じます。

正規分布に近い形で扱えることはありますが、製品や測定条件で分布は変わるため、詳細式よりも最大値と温度ドリフトを設計マージンに入れる見方が重要です。高精度なDC増幅やセンサ信号の増幅では、データシートの最大値だけでなく、温度ドリフトも確認します。

正規分布に近い傾向が見られる場合でも、分布の中心値だけで設計マージンを緩めることは避けます。設計では、データシートに示された最大値を保証値として扱い、正負どちらの方向にオフセットが出ても出力誤差が許容範囲に収まるかを確認します。

入力オフセット電圧の温度ドリフト

入力オフセット電圧は温度によって変化します。この変化量を入力オフセット電圧ドリフト、またはオフセット電圧温度ドリフトと呼びます。単位は一般にµV/℃で表され、温度範囲が広い用途や微小信号を扱う用途では重要な項目です。

\(ΔV_{OS}≈drift×ΔT\)

driftは入力オフセット電圧ドリフト、ΔTは温度変化です。初期のVOSとは別の誤差要因として加味します。

例えば、入力オフセット電圧ドリフトが1µV/℃、温度変化が50℃の場合、温度による入力換算誤差は約50µVになります。この値に回路のノイズゲインを掛けると、温度変化による出力誤差の目安を確認できます。

入力バイアス電流とは

入力バイアス電流は、通常動作時にオペアンプの入力端子へ流れる微小な電流です。入力端子の電圧が定格外になったときに保護素子へ流れる入力電流とは、発生条件も設計上の扱いも異なります。入力バイアス電流は破壊を避けるための保護電流ではなく、入力精度に影響する誤差要因として確認します。

特に信号源抵抗や帰還抵抗が大きい回路では、入力バイアス電流によって抵抗に電圧降下が生じ、入力換算誤差として現れます。データシートでは、入力バイアス電流の代表値や最大値、温度条件を確認し、使用する抵抗値との組み合わせで誤差を見積もります。

入力バイアス電流が入力誤差に与える影響

入力バイアス電流による入力換算誤差は、信号源抵抗との積で概算できます。

\(V_{error}≈I_B×R_S\)

IBは入力バイアス電流、RSは信号源抵抗です。入力オフセット電圧とは別の誤差要因として扱います。

例えば、入力バイアス電流 IB = 100nA、信号源抵抗 RS = 10kΩ の場合、入力換算の誤差は約1mVになります。高抵抗信号源を扱う回路では、入力オフセット電圧だけでなく、入力バイアス電流による誤差も無視できない場合があります。

絶対最大定格の読み方

次に、オペアンプを壊さずに使うために確認する定格と、通常動作を確認する条件の違いを見ていきます。電源電圧や入力端子の電圧を確認するときは、限界値と動作保証条件を分けて読むことが重要です。

絶対最大定格とは

絶対最大定格は、通常動作を保証する条件ではなく、超えてはならない限界値です。瞬間的な超過であっても、ICの特性劣化や破壊につながる可能性があります。絶対最大定格内であっても電気的特性や正常動作が保証されるわけではないため、設計時の動作点は推奨動作条件や電気的特性条件で確認します。

オペアンプの入力まわりでは、電源電圧だけでなく、差動入力電圧、同相入力電圧、定格外入力時の入力電流も絶対最大定格の確認対象になります。設計ではまず推奨動作条件に収まることを確認し、電源投入時、過渡入力、外部からの過電圧などの最悪条件で絶対最大定格を超えないかを照合します。

このため、絶対最大定格は設計目標ではなく、異常時や過渡時を含めても踏み越えないための境界として扱います。値が同じように見える項目でも、どの表に記載されているかで意味が変わる点に注意します。

絶対最大定格と動作条件の違い

データシートでは、絶対最大定格、推奨動作条件または動作電源電圧範囲、電気的特性条件が分けて記載されます。これらは似て見えますが、意味は異なります。

表2 絶対最大定格と動作条件の比較
項目 意味 超えた場合 正常動作の保証
絶対最大定格 破壊や劣化を避けるための限界値 特性劣化や破壊につながる可能性がある 保証しない
推奨動作条件/動作電源電圧範囲 通常動作させるために使用する範囲 仕様通りに動作しない可能性がある この範囲で確認する
電気的特性条件 特性値を測定・保証する条件 特性表の値をそのまま適用できない場合がある 条件内で特性表を読む

電源電圧と動作電源電圧範囲

絶対最大定格の電源電圧は、VCC端子とVEE端子の電位差で確認します。VCC単独の電圧ではなく、正側電源と負側電源の差を見る点が重要です。

\(V_{CC}-V_{EE}≤絶対最大定格電源電圧\)

この式は破壊や劣化を避けるための限界確認であり、正常動作を保証するものではありません。

通常動作を確認する場合は、動作電源電圧範囲内で使用します。製品によって絶対最大定格の最大値と動作電源電圧範囲の最大値が同じ場合もありますが、意味は異なります。

\(動作電源電圧範囲の下限≤V_{CC}-V_{EE}≤動作電源電圧範囲の上限\)

VCCVEEの端子間電圧で確認する定格電源電圧

VCCとVEEの端子間電圧で確認する定格電源電圧

例えば、絶対最大定格電源電圧が36Vの製品で、VCC=24V、VEE=-12Vを印加する場合、端子間の電位差は36Vです。ただし、この条件で仕様通りに動作するかは、動作電源電圧範囲と電気的特性条件で別途確認します。

データシートで確認すべき入力関連の定格項目

入力特性を設計に反映する場合は、1つの定格だけで判断せず、電源、入力端子、入力電流の各項目を合わせて確認します。値は製品ごとに異なるため、最終判断は対象製品のデータシートを優先します。

表3 データシートで確認すべき入力関連項目
データシート項目 確認する内容 見落とすと起きること
電源電圧 VCCVEEが絶対最大定格を超えないか 電源端子間の過電圧で劣化・破壊する可能性がある
動作電源電圧範囲 仕様通りに動作させる電源範囲内か 動作や特性が保証条件から外れる
差動入力電圧 +入力と-入力の電圧差が定格内か 入力段や端子間保護素子に過大なストレスがかかる
同相入力電圧 入力端子電位が電源端子に対して許容範囲内か 保護素子の導通や入力段の異常動作につながる
入力電流 定格外入力時の保護素子電流が許容値以下か 保護素子や入力段の劣化・破壊につながる

絶対最大定格は破壊や劣化を避けるための限界値です。実際に回路が仕様通りに動作するかは、動作条件および電気的特性に記載された条件で確認します。

差動入力電圧

差動入力電圧は、+入力端子と-入力端子の間に加わる電圧差です。通常の負帰還動作では入力端子間の電圧差は小さくなりますが、起動時や異常入力時には大きな差が加わる場合があります。定格を超えないかを確認することが重要です。

差動入力電圧とは

差動入力電圧は、+入力端子と-入力端子の電圧差です。定義は次式で表せます。

\(V_{ID}=V_{IN+}-V_{IN-}\)

VIN+は非反転入力端子電圧、VIN-は反転入力端子電圧です。

差動入力電圧の定格を確認する場合、多くの場合は端子間電圧の絶対値が規格値を超えないかを確認します。製品ごとに規格表記が異なるため、データシートの表記に従います。

\(|V_{ID} |≤差動入力電圧の絶対最大定格\)

表4 差動入力電圧と同相入力電圧の違い
項目 確認する電圧 見ている関係 主な目的
差動入力電圧 +入力端子と-入力端子の差 入力端子どうしの関係 入力段や端子間保護素子に過大な電圧差を加えない
同相入力電圧 入力端子の電位 入力端子と電源端子の関係 入力端子電位が許容範囲を超えないようにする

入力端子の電位条件と入力電流の関係

入力端子の安全定格は、端子間の電位差だけでは判断できません。まず、+入力端子と-入力端子の差が差動入力電圧の定格内かを確認します。次に、それぞれの入力端子の電位が、VCC端子やVEE端子を基準とした同相入力電圧の許容範囲内かを確認します。これらの条件を外れると、入力保護素子、入力端子間クランプ、または電源端子側へ電流が流れる場合があります。

つまり、差動入力電圧は入力端子どうしの関係、同相入力電圧は入力端子と電源端子の関係、定格外入力時の入力電流は、これらの条件を外れたときに保護経路へ流れる電流として確認します。+入力端子と-入力端子の電位差が小さい場合でも、両方の入力端子が電源端子に対する許容範囲を外れていれば、安全定格を満たしているとはいえません。

設計時には、信号源の出力範囲、電源電圧、起動や停止時の状態を組み合わせ、各入力端子の電位と端子間電圧を最悪条件で確認します。この確認により、差動入力電圧、同相入力電圧、保護素子へ流れる電流の見落としを減らせます。

ESD保護素子と差動入力電圧の決まり方

ICには静電破壊保護素子が内蔵されています。入力端子の保護素子は、VEE側だけに接続される場合と、VCC側・VEE側の両方に接続される場合があります。VCC側にも保護素子がある場合、入力端子の電位はVCC側の条件にも制限されます。

表5 入力保護素子構成による制限の違い
保護素子構成 入力端子の主な制限 確認する点
VEE側のみ VEE側への過電圧に注意 入力トランジスタの耐圧や製品ごとの差動入力電圧定格
VCC/VEE両側 VCC側とVEE側の両方に注意 入力端子が電源端子に対して許容範囲内か

入力端子と電源端子間に配置される保護素子の構成例

入力端子と電源端子間に配置される保護素子の構成例

入力端子間クランプダイオードがある場合

入力端子間にクランプダイオードがある製品では、+入力端子と-入力端子の間に大きな電圧差が加わると、ダイオードが導通して端子間の電圧差を抑えます。そのため、差動入力電圧の定格が数V程度、またはダイオードの順方向電圧に近い値として制限される場合があります。具体的な値や条件は製品ごとに異なるため、対象製品のデータシートで確認します。

ただし、クランプダイオードが導通する条件では、端子間の電圧値だけでなく、+入力端子と-入力端子の間に流れるクランプ電流も確認します。データシートに入力電流、クランプ電流、注入電流、または注記として電流上限が示されている場合は、その値を超えないように信号源インピーダンスや直列抵抗を含めて検討します。電圧が定格内に見える場合でも、クランプ経路の電流が許容値を超える条件は避ける必要があります。

入力端子間に入るクランプダイオードの構成例

入力端子間に入るクランプダイオードの構成例

同相入力電圧

同相入力電圧は、入力端子の電位が電源端子に対してどの範囲にあるかを見る項目です。差動入力電圧が端子間の差を見るのに対し、同相入力電圧は入力端子と電源電圧の関係を確認します。正常動作の範囲とは分けて読みます。

同相入力電圧とは

同相入力電圧は、+入力端子と-入力端子の電位を、電源端子を基準に見たときの入力端子電位です。2つの入力端子の平均電圧として、同相入力電圧を次のように表すことがあります。

\(V_{ICM}=\displaystyle\frac{V_{IN+}+V_{IN-}}{2}\)

VICMは同相入力電圧です。差動信号がある場合の厳密な扱いは回路条件によります。

VICMを平均電圧として確認する場合でも、+入力端子と-入力端子のそれぞれが許容される電位範囲に入っているかを合わせて確認します。差動信号が重なると、平均値であるVICMは範囲内でも、片側の入力端子だけが上限または下限に近づく場合があります。

データシートでは、同相入力電圧が絶対最大定格の欄と電気的特性または推奨動作条件の欄に分かれて記載されることがあります。破壊や劣化を避ける限界確認と、正常動作や特性保証の確認を区別して読みます。

同相入力電圧と同相入力電圧範囲の違い

絶対最大定格の同相入力電圧と、電気的特性に記載される同相入力電圧範囲は、目的が異なります。前者は破壊や劣化を避けるための限界、後者は正常動作を確認するための範囲です。

表6 同相入力電圧と同相入力電圧範囲の違い
項目 意味 用途
絶対最大定格の同相入力電圧 入力端子へ印加しても破壊や劣化を避けるための限界 超えてはならない条件を確認する
電気的特性の同相入力電圧範囲 オペアンプが仕様通りに動作する入力同相範囲 正常動作や特性保証の条件を確認する

VEE-0.3V、VCC+0.3Vで示される同相入力電圧の限界

絶対最大定格の同相入力電圧では、入力端子に印加できる限界がVEE-0.3V~VCC+0.3Vのように示されることがあります。これは、入力端子の電位を電源端子に対してどこまで許容するかを示す限界値の表記です。

この値は代表的な余裕値であり、保護素子の固定された導通しきい値ではありません。入力端子の電位がこの範囲を外れると、入力保護素子や寄生素子に電流が流れ、劣化や破壊につながるおそれがあります。

実際の上限・下限、許容される入力電流、保護回路の構成は製品ごとに異なります。設計時は、電気的特性に記載された同相入力電圧範囲や注入電流の条件も合わせて確認します。

電源端子との関係で確認する同相入力電圧の絶対最大定格

電源端子との関係で確認する同相入力電圧の絶対最大定格

保護素子の有無による入力可能範囲の違い

VCC側に保護素子が存在しない製品では、VCC電圧に直接制限されず、別の耐圧条件で同相入力電圧が決まる場合があります。このため、同相入力電圧は入力端子の保護回路構成や寄生素子、入力トランジスタの耐圧などによって変わります。必ず対象製品のデータシートで確認してください。

定格外入力時の入力電流と保護回路

この章で扱う入力電流は、通常動作時に入力段へ流れる入力バイアス電流ではなく、入力端子に定格外の電圧が加わったときに、保護素子やクランプ経路を通じて流れる電流です。この電流が大きくなると、保護素子、入力段、または周辺回路の劣化・破壊につながるおそれがあります。そのため、定格外入力を想定する場合は、データシートの許容入力電流、電流経路、外付けダイオードや直列抵抗による制限方法を確認します。

定格外入力時の入力電流とは

定格外入力時の入力電流は、入力端子の電圧が差動入力電圧や同相入力電圧の許容範囲を外れたときに、入力端子へ流れ込む、または入力端子から流れ出す電流です。通常動作時の入力バイアス電流とは、発生条件も確認目的も異なります。データシートでは、入力電流、クランプ電流、注入電流など、製品ごとに異なる名称で示される場合があるため、項目名だけでなく測定条件、注記、電流の向きを確認します。

入力電流を確認するときは、電流が入力端子へ流れ込む条件か、入力端子から流れ出す条件かも確認します。製品によっては、入力電圧の極性、電源投入状態、保護構造によって電流の向きと大きさが変わるため、保護抵抗の設計では対象製品の注記と許容入力電流を優先します。

入力端子に定格外電圧が入ったときの電流経路

入力端子の電圧がVEE-0.3Vより低い、またはVCC+0.3Vより高いなど、許容範囲を超える条件では、入力保護素子を通じて電源端子側や入力端子間へ電流が流れる場合があります。電流が大きくなると、保護素子や入力段の劣化・破壊につながります。0.3Vという値や電流経路は製品の保護構造によって変わるため、対象製品の絶対最大定格、注記、入力電流制限条件を確認します。

電流経路の向きは、入力端子電圧がどちら側に超過するかで変わります。正側に超過した場合はVCC側へ、負側に超過した場合はVEE側や基準電位側へ電流が流れることがあります。ただし、保護素子の構成は製品ごとに異なるため、電流経路を一般化せず、データシートの端子条件と注記に従います。

保護素子が導通しても、流れた電流を電源ラインや周辺回路が安全に受けられるとは限りません。電源がOFFの状態や、電源ラインのインピーダンスが高い状態では、入力端子からの電流で電源電圧が持ち上がる場合があります。定格外入力を想定する場合は、電流の流れ先と帰路も合わせて確認します。

クランプダイオードによる入力電圧の制限

入力端子に定格外の電圧が入る可能性がある回路では、内蔵保護素子だけに頼らず、入力端子の外側で電圧を制限する方法を検討します。その代表例が、入力端子と電源ラインの間に外付けクランプダイオードを入れる方法です。過電圧時にダイオードが先に導通すると、入力端子からVCC側またはVEE側へ電流が流れ、入力端子電圧をVCC+VF付近またはVEEVF付近に抑えます。

図の例は、オペアンプの入力端子の外側にクランプダイオードを追加し、正側の過電圧をVCC側へ、負側の過電圧をVEE側へ逃がす考え方を示しています。これは、すべての製品に共通する内部構造を示す図ではなく、内蔵保護素子だけに過電圧時の電流を受け持たせにくくするための外付け回路例です。

外付けクランプダイオードの利点は、過電圧時の逃げ道を外付け部品側にも用意できることです。一方で、クランプ先の電源ラインが電流を吸収できないと、入力端子から流れ込んだ電流で電源電圧が持ち上がる場合があります。ダイオードの順方向電圧、許容電流、クランプ電流の帰路は、対象製品のデータシートや周辺回路の条件と合わせて確認します。

また、高インピーダンス入力や微小信号を扱う回路では、外付けダイオードの漏れ電流や容量が入力誤差、帯域、応答速度に影響する場合があります。クランプダイオードは入力端子電圧の超過を抑えるための部品であり、クランプ時の電流を単独で十分に制限できるとは限りません。そのため、次に示すように直列抵抗を併用し、ダイオードや保護素子へ流れる電流を許容値以下に抑える設計が必要になります。

外付けクランプダイオードによる入力電圧制限の例

外付けクランプダイオードによる入力電圧制限の例

抵抗による入力電流の制限と抵抗値の求め方

入力端子に定格外の電圧が加わる可能性がある場合は、入力端子の前に直列抵抗を入れて、保護素子へ流れる電流をデータシートの許容値以下に抑えます。図の例では、信号源とオペアンプの入力端子の間に直列抵抗を配置し、過電圧時に保護素子へ向かう電流をこの抵抗で制限しています。直列抵抗は、過電圧そのものをなくす部品ではなく、クランプ後に流れる電流を制限する部品です。

直列抵抗による過大な入力電流の制限例

直列抵抗による過大な入力電流の制限例

抵抗値を求めるときは、まず過電圧時に直列抵抗へかかる電圧を考えます。正側過電圧では、入力端子の電圧がVCC+VF付近でクランプされるため、想定最大入力電圧からそのクランプ電圧を差し引いた分が直列抵抗にかかります。この電圧を、対象製品で許容される入力電流以下に抑えるように抵抗値を選びます。

\(R_{IN}≥\displaystyle\frac{V_{IN\_MAX}-(V_{CC}+V_F)}{I_{IN\_MAX}}\)

VIN_MAXは想定最大入力電圧、VFは保護素子の順方向電圧、IIN_MAXは許容入力電流です。式の分子が0以下になる条件では、その条件で正側クランプ電流は流れないと考え、負の抵抗値として扱わないようにします。

負側過電圧では、入力端子の電圧がVEEVFより低くなった分を直列抵抗で制限します。入力電圧が負側へどれだけ超過するかを正の電圧差として扱うため、入力電圧が正側、負側のどちらへ超過する条件なのかを先に確認します。

\(R_{IN}≥\displaystyle\frac{(V_{EE}-V_F)-V_{IN\_MIN}}{I_{IN\_MAX}}\)

VIN_MINは想定最小入力電圧です。符号を誤ると抵抗値の見積もりが大きくずれるため、式に代入する前に電流が流れる向きとクランプ先を確認します。

例えば、VCC=5V、VF=0.6V、入力端子に最大12Vが加わる可能性がある場合を考えます。ここでは例題の条件として、入力電流を10mA以下に制限したいとします。正側過電圧で直列抵抗にかかる電圧は12V – (5V + 0.6V) = 6.4Vとなるため、必要な抵抗値はRIN ≧ 6.4V / 0.01A = 640Ωです。

10mAはこの計算例で置いた条件であり、オペアンプ一般に使える許容値ではありません。実際の設計では、対象製品のデータシートに記載された許容入力電流を優先し、算出値より大きい標準抵抗値を候補にします。あわせて、抵抗誤差、温度、抵抗の許容電力、入力容量との時定数、信号精度への影響も確認します。

直列抵抗を大きくすると、定格外入力時の入力電流は小さくできます。一方で、通常動作時には信号源抵抗が増えたのと同じように、入力バイアス電流による誤差、熱雑音、入力容量との時定数が増える場合があります。入力電流の制限だけで判断せず、保護と信号精度の両方を確認し、必要な応答速度を満たす範囲で抵抗値を決めます。

まとめ

オペアンプの入力特性を確認するときは、入力精度に関わる項目と、破壊・劣化を避けるための定格項目を分けて見ることが重要です。入力オフセット電圧は出力誤差に影響し、入力バイアス電流は信号源抵抗との組み合わせで誤差要因になります。一方、電源電圧、差動入力電圧、同相入力電圧、入力電流は、絶対最大定格や動作条件を超えないように確認する必要があります。最終的な設計では、対象製品のデータシートに記載された絶対最大定格、動作条件、電気的特性を確認してください。