オペアンプ|基礎編

オペアンプの増幅と帰還|利得設計からスルーレートまで

オペアンプは、入力信号を増幅するだけでなく、負帰還によって利得の安定性や帯域、歪みなどの特性を整えて使います。電圧利得やデシベル表示を整理しておくと、開ループ利得と閉ループ利得の違い、負帰還による利得設定の考え方が見通しやすくなります。交流信号では、帯域やスルーレートの制約によって出力できる振幅や周波数も変わります。オペアンプの増幅と負帰還の基本に加え、スルーレートとフルパワーバンド幅の関係も、出力波形を見積もるうえで重要です。

オペアンプの増幅率と電圧利得

オペアンプの増幅動作を理解するには、入力電圧に対して出力電圧がどれだけ変化するかを、利得として整理します。オペアンプの電圧利得、デシベル表示、開ループ利得と閉ループ利得の違いは、反転増幅回路、非反転増幅回路、負帰還を理解する前提になります。

オペアンプの電圧利得の定義

オペアンプを用いた増幅回路では、入力電圧に対して出力電圧がどれだけ大きくなるかを電圧利得として表します。電圧利得は、出力電圧を入力電圧で割った値です。入力電圧をVs、出力電圧をVo、電圧利得をAvとすると、次のように定義されます。

\(A_v = \displaystyle\frac{V_o}{V_s}\)

例えば、Avが10倍であれば、入力電圧に対して出力電圧の大きさが10倍になることを表します。利得を電圧比として定義すると、デシベル表示や、開ループ利得と閉ループ利得の違いを同じ基準で整理できます。

電圧利得をデシベル(dB)で表す( AV=20log10 (VO/VS) )

オペアンプの電圧利得は、数十倍から数十万倍以上まで大きな範囲を扱います。そのため、利得を倍率のまま表すだけでなく、デシベル[dB]で表すことがあります。電圧利得をデシベルで表す場合は、電圧比の常用対数を20倍します。例えば、オペアンプの開ループ利得が100000倍(105倍)の場合、デシベル表示では次のようになります。

\(20log_{10}(10\,^5) = 100 dB\)

\(A_V[dB] = 20log_{10}\left(\displaystyle\frac{V_0}{V_S}\right)\)

開ループ利得のように大きな電圧利得でも、dBで表すと桁数を抑えて比較できます。電力比をデシベルで表すときは10倍しますが、同じ抵抗条件では電力が電圧の2乗に比例するため、電圧比では20倍します。つまり、電圧比では\(10log_{10}((\displaystyle\frac{V_o}{V_s})^2) = 20log_{10}(\displaystyle\frac{V_o}{V_s})\)と考えます。なお、反転増幅回路のように電圧利得に負号が付く場合でも、dB表示では通常、利得の大きさを表し、位相の反転は別に扱います。利得、出力振幅、周波数特性を読むうえで、関連する単位と表記も必要になります。

(a) dB:2つの量の比を対数で表す単位です。電力比では10倍、電圧比では20倍の係数を用います。

\(dB = 10log_{10}(\displaystyle\frac{P_1}{P_2})\)(電力の時)

\(dB = 20log_{10}(\displaystyle\frac{V_1}{V_2})\)(電圧の時)

(b) Vp-p:ピーク・ツー・ピーク電圧。波形の最大電圧と最小電圧の差を表します。0Vを中心に上下対称な正弦波では、Vp-pはピーク電圧の2倍になります。Vrmsとは意味が異なるため、波形の種類や条件が分かる場合に換算します。

(c) Vrms:実効値。交流波形を、同じ電力を消費する直流値に置き換えた値です。正弦波ではピーク電圧を√2で割った値になります。

\(V_{rms} = \displaystyle\frac{V_p}{√2}\)

(d) dBV:1Vrmsを基準とした電圧レベルです。0dBVは1Vrmsを表します。

\(0 dBV = 1V_{rms}\)

(e) dBm:1mWを基準とした電力レベルです。電圧に換算する場合は負荷抵抗が必要で、50Ω系と600Ω系では同じ0dBmでも対応する電圧が異なります。

\(0 dBm = 0.224 V_{rms}\)(負荷50Ωの時)

\(0 dBm = 0.775 V_{rms}\)(負荷600Ωの時)

(f) oct:「オクターブ」を表す単位で、周波数が2倍になる幅を1octと呼びます。
-6dB/octは、周波数が2倍になるごとに利得が約6dB低下することを示します。

(g) dec:「ディケード」を表す単位で、周波数が10倍になる幅を1decと呼びます。
-20dB/decは、周波数が10倍になるごとに利得が20dB低下することを示します。
1decは約3.322octに相当するため、-6dB/octは実用上、ほぼ-20dB/decと同じ傾きとして扱われます。

(h) dB(デシベル)計算基本

dB値は、比を対数で表すため、掛け算や割り算の関係を足し算や引き算として扱いやすくなります。電圧比をdBで表す場合は20log10、電力比をdBで表す場合は10log10を使います。

\(3dB≈1.41×≈√2\)

\(6dB≈2.00×\)

\(10dB≈3.16×\)

\(20dB≈10×\)

\(16 dB = 10 dB + 6 dB → 3.16 × 2 = 6.32×\)

開ループ利得と閉ループ利得の違い

オペアンプの利得には、負帰還をかけない状態の開ループ利得と、負帰還をかけた回路全体の閉ループ利得があります。開ループ利得はオペアンプ単体の能力を示す値であり、閉ループ利得は実際の増幅回路で使う利得です。

開ループ利得は大きい値ですが、製品、温度、電源電圧、周波数によって変化します。また、負帰還をかけないままではわずかな入力差でも出力が飽和しやすく、目的の増幅率として安定に使うことはできません。一方、閉ループ利得は、負帰還回路を含めた増幅回路全体の利得です。負帰還を用いると、オペアンプ単体の開ループ利得ではなく、主に抵抗などの外付け部品で利得を決めやすくなります。実際の設計では、閉ループ利得で目的の増幅率を設定し、開ループ利得や利得帯域幅から、その設定が必要な周波数範囲で成り立つかを見ます。反転増幅回路と非反転増幅回路では、閉ループ利得が抵抗比によって決まります。

反転増幅・非反転増幅のゲイン設定

反転増幅回路と非反転増幅回路では、閉ループ利得は主に外付け抵抗の比で決まります。反転増幅回路のゲインは

\(A_v = -\displaystyle\frac{R_f}{R_{in}}\)

反転増幅回路のゲインは

\(A_v = 1 + \displaystyle\frac{R_f}{R_{in}}\)

で表せます。

ここで、Rfは出力側から反転入力側へ戻す帰還抵抗です。Rinは、反転増幅回路では入力信号から反転入力端子へ入る抵抗、非反転増幅回路では反転入力端子と基準電位の間に入る抵抗を指します。

反転増幅回路の式に付くマイナス符号は、出力信号の位相が入力信号に対して反転することを示しています。一方、非反転増幅回路では入力信号と出力信号の位相は同じで、ゲインは1以上になります。実際の回路では、抵抗比で設定したゲインに加えて、オペアンプの動作範囲や周波数特性も考慮します。

オペアンプの負帰還システムとその効果

オペアンプは開放利得が高い増幅器ですが、単体では利得のばらつきや周波数特性の影響を受けやすいため、通常は負帰還回路を構成して使用します。負帰還を用いると、外付け素子で設定した帰還率により閉ループ利得を決めやすくなり、利得の安定化、帯域幅の拡大、歪みや出力側の誤差成分の抑制といった効果が得られます。負帰還の伝達関数モデルを使うと、これらの効果と、安定性上の注意点を整理できます。

負帰還の伝達関数モデル

オペアンプは高い開ループ利得(開放利得)を持つ増幅器ですが、開ループのまま線形な増幅回路として使うことはほとんどありません。開ループ利得には製造ばらつきや温度による変動があり、周波数が高くなるにつれて利得も低下します。そのため、開ループのままでは目的の増幅率を安定して設定し、必要な帯域で保つことが難しくなります。通常は、出力の一部を入力側へ戻す負帰還を用い、帰還率によって閉ループ利得を決めます。下図に、負帰還を用いた増幅回路のモデルを示します。

負帰還システム

負帰還による利得安定・帯域拡大・歪み抑圧

負帰還をかけると、増幅回路では主に次のような利点が得られます。

[負帰還回路を構成することによる利点]

  1. 1. 帯域幅を広げる
  2. 2. 開放利得のばらつきが閉ループ利得に与える影響を小さくする
  3. 3. 歪みを低減する

1. 帯域幅を広げる

負帰還による閉ループ利得と帯域幅の変化は、伝達関数で表せます。A(s)を周波数に依存する開ループ利得、βを帰還率とします。

\(\displaystyle\frac{V_o(s)}{V_{IN}(s)} = \displaystyle\frac{A(s)}{1 + βA(s)}\)

A(s):周波数に依存するオペアンプの開ループ利得(開放利得)β:帰還率βA(s):ループ利得1+βA(s):負帰還によって閉ループ利得や出力側の誤差成分を抑える係数

オペアンプの開ループ利得を、1次遅れの伝達関数で近似します。この近似では、低周波での開ループ利得をA0、極の角周波数をω0として、負帰還による利得低下と帯域幅拡大の関係を表します。

オペアンプは1次遅れの伝達関数を持つ

上式の関係を図示したものが、上図の周波数特性です。低周波での開ループ利得をA0とすると、負帰還をかけたときの閉ループ利得は\(\displaystyle\frac{A_0}{1 + βA_0}\)となり、開ループ利得A0に対して小さくなります。一方で、1次遅れ近似が成り立つ範囲では、帯域幅はおおよそω0からω0(1 + βA0)へ広がります。つまり、負帰還では利得を下げる代わりに、安定して使える周波数範囲を広げることができます。

2. 開放利得のばらつきの影響を小さくする

開放利得のばらつきが閉ループ利得へ与える影響は、ループ利得の大きさで変わります。低周波でループ利得βA0が十分に大きい、つまりβA0 >> 1が成り立つ範囲では、負帰還回路の利得は\(\displaystyle\frac{1}{β}\)に近似できます。この条件では、閉ループ利得はオペアンプの開放利得そのものよりも、外付け素子で決まる帰還率に強く依存します。そのため、温度特性や製造ばらつきによって開放利得が多少変動しても、閉ループ利得への影響は小さくなります。なお、反転増幅回路の帯域や安定性では、信号利得ではなくノイズゲインを使います。

\(\displaystyle\frac{V_o}{V_{IN}} = \displaystyle\frac{A_0}{1 + βA_0} = \displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{A_0} + β} ≈ \displaystyle\frac{1}{β}\)

3. 歪みを低減する

下図に、出力側に現れる誤差要素を含む帰還回路を示します。VDは、オペアンプや出力段で発生し、ループ内で補正対象となる誤差要素を表します。VDには、出力に重畳する歪み成分や誤差電圧などが含まれます。ただし、入力に加わるノイズや外付け抵抗の熱雑音まで、負帰還で単純に低減できるわけではありません。

【歪み、ノイズを含む負帰還回路】

歪み、ノイズを含む負帰還回路

右式に、誤差要素VDを含む出力式を示します。VINから出力へ伝わる成分は\(\displaystyle\frac{A(s)}{1 + βA(s)}\)で表され、VDの成分は\(\displaystyle\frac{1}{1 + βA(s)}\)で抑えられます。したがって、十分なループ利得がある周波数範囲では、ループ内で出力側に現れる誤差成分は小さくなります。

\(V_o(s) = \displaystyle\frac{A(s)}{1 + βA(s)} × V_{IN}(s) + \displaystyle\frac{1}{1 + βA(s)} × V_D\)

一方で、負帰還回路には次のような注意点があります。負帰還は利得や誤差を改善する有効な方法ですが、オペアンプが線形動作範囲にあり、十分な位相余裕を持って安定に動作していることが前提です。

[負帰還回路を構成することによる注意点]

  1. 1. 閉ループ利得は開ループ利得より小さくなる
  2. 2. 位相余裕が不足すると、発振やリンギングが生じることがある

また、容量性負荷、配線や基板の寄生成分、帰還抵抗値、入力容量などによって位相余裕が低下することがあります。大きな信号を扱う場合は、GBWで見積もる小信号帯域だけでなく、スルーレート、出力振幅範囲、負荷電流も考慮します。

負帰還は、開放利得の大きさをそのまま使うのではなく、帰還率とループ利得によって閉ループ利得、帯域、誤差成分の影響を扱う方法です。ただし、実際の回路では位相余裕、容量性負荷、出力振幅、スルーレートなどの制約も受けます。小信号帯域を見積もる目安として、利得帯域幅積(GBW)を用います。

利得帯域幅積(GBW

利得帯域幅積(GBW)は、電圧帰還型オペアンプで単一極近似が成り立つ範囲において、ノイズゲイン(NG)と小信号帯域幅の関係を見積もるための目安です。ノイズゲインをNG、帯域幅をBWとすると、

\(GBW ≈ NG × BW\)

または

\(BW ≈ \displaystyle\frac{GBW}{NG}\)

と表せます。非反転増幅回路では、NGは閉ループ利得と一致します。一方、反転増幅回路では信号利得の大きさとNGが一致しない場合があるため、帯域幅や安定性はNGで見積もります。NGを低く設定すると帯域幅は広がり、NGを高く設定すると帯域幅は狭くなります。

ただし、GBWから求められる帯域幅は小信号での周波数応答の目安であり、すべての動作条件で保証される上限ではありません。出力振幅が大きい場合は、スルーレートによって波形の追従速度が制限されることがあります。また、容量性負荷や基板の寄生成分によって位相余裕が低下する場合もあるため、実際の回路ではデータシート、シミュレーション、実機評価をあわせて判断します。

オペアンプのスルーレート(大信号の速度限界)

オペアンプの出力は、入力信号の変化に対して無制限に追従できるわけではありません。出力電圧が単位時間あたりに変化できる割合はスルーレートとして表され、交流信号では出力できる振幅や周波数の上限に関わります。スルーレートの定義と測定方法は、正弦波出力に必要なスルーレートとフルパワーバンド幅を見積もる前提になります。

スルーレートの定義と測定回路

スルーレートは、オペアンプの出力電圧が単位時間あたりにどれだけ速く変化できるかを表すパラメータです。出力電圧の変化量をΔV、その変化にかかった時間をΔtとすると、変化の速さはΔV/Δtで表せます。例えば1[V/µs]は、出力電圧を1[µs]あたり1[V]変化させられることを意味します。理想的なオペアンプであれば、入力信号が急に変化しても出力はただちに追従します。しかし実際のオペアンプでは、出力電圧が変化できる速度に上限があります。そのため、立上りや立下りが急峻な方形波パルスを入力すると、出力波形は瞬時には変化せず、一定の傾きをもって変化します。このときの出力電圧の最大の傾きがスルーレートです。下図はスルーレートの定義を示します。

【スルーレート測定回路と波形の図】

スルーレート測定回路と波形の図

出力波形の立上りと立下りでは、それぞれ電圧の変化量と変化時間からスルーレートを求めます。

\(SR_r = \displaystyle\frac{ΔV}{ΔT_r} \quad SR_f = \displaystyle\frac{ΔV}{ΔT_f}\)

ここでΔVは出力電圧の変化量、ΔTrは立上りにかかった時間、ΔTfは立下りにかかった時間です。出力電圧の変化量を、その変化にかかった時間で割ることで、出力波形の傾きを求められます。この傾きが、立上りまたは立下りのスルーレートになります。データシートでは、立上りと立下りで値が異なる場合に、遅い方を基準に規定されることがあります。それ以上に急峻な変化を持つ信号に対しては、出力波形が追従できず、歪みが生じます。増幅回路を構成した場合も、スルーレートは出力変化の割合であるため、基本的には変わりません。

オペアンプは、直流と交流の両方の信号増幅に用いられます。オペアンプには応答速度の限界があり、どのような信号でも扱えるわけではありません。上図に示すボルテージフォロア構成では、直流電圧入力に対して入力電圧範囲と出力電圧範囲の制限を受けます。さらに、周波数を持つ交流信号では、利得帯域幅積およびスルーレートの制約が加わります。

正弦波出力では、スルーレート、振幅、周波数の関係から、出力波形が追従できる範囲を見積もれます。

正弦波出力に必要なスルーレート

正弦波を出力するとき、必要なスルーレートは波形の振幅と周波数によって決まります。振幅または周波数が大きくなるほど出力電圧の変化は急になり、スルーレートが不足すると波形が歪みます。正弦波の式から出力波形の最大傾きを求めると、必要なスルーレートが分かります。さらに、オペアンプのスルーレートが決まっている場合は、出力できる周波数や振幅の上限も同じ関係式から求められます。

【サイン波形】

サイン波形

上図に示すような正弦波を出力する場合を考えます。正弦波の出力電圧を次のように表します。

\(y = A\ sin(ωt)\)

ここで、Aは正弦波のピーク振幅、ωは角周波数です。出力電圧の傾きを求めるため、この式を時間tで微分します。

\(\displaystyle\frac{dy}{dt} = Aω\ cos(ωt)\)

正弦波の傾きが最大になるのは、cos(ωt) = 1 のときです。したがって、出力波形の最大傾きは次のようになります。

\(SR = Aω = 2πfA\)

この式は、指定したピーク振幅Aと周波数fの正弦波に必要なスルーレートを表します。逆に、オペアンプのスルーレートSRが決まっている場合は、同じ式をfについて解くことで、その振幅で出力できる最大周波数を求められます。

\(f = \displaystyle\frac{SR}{2πA}\)

また、正弦波のピーク・ツー・ピーク電圧をVPPとすると、VPP = 2Aです。したがって、\(A = \displaystyle\frac{V_{PP}}{2}\)を上式に代入すると、次のように表せます。

\(f = \displaystyle\frac{SR}{πV_{PP}}\)

同じ関係をVPPについて解くと、指定した周波数fで出力できるピーク・ツー・ピーク電圧の目安も求められます。

\(V_{PP} = \displaystyle\frac{SR}{πf}\)

フルパワーバンド幅による設計判断

フルパワーバンド幅は、指定した出力振幅の正弦波を、スルーレート制限による波形ひずみが生じにくい範囲で出力できる周波数の目安です。直前の式\(f = \displaystyle\frac{SR}{πV_{PP}}\)を使うと、出力したい振幅VPPを決めたときに、その条件で扱える上限周波数を見積もれます。ここでいう帯域は、小信号で測る帯域幅やGBWから見積もる閉ループ帯域ではなく、大振幅時のスルーレート制限から決まるものです。

SR=1V/µsのオペアンプで1VPPの正弦波を出力する条件では、スルーレートから許容できる周波数の目安を求められます。1VPPはピーク振幅で見るとA=0.5Vに相当しますが、直前で求めた\(f = \displaystyle\frac{SR}{πV_{PP}}\)を使えば、VPPをそのまま代入できます。計算条件は、SR = 1×106V/sVPP=1Vです。

\(f = \displaystyle\frac{SR}{πV_{PP}} = \displaystyle\frac{1×10\,^6}{π×1} = 318.4 kHz\)

この結果から、1VPPの正弦波では、約318kHzがスルーレートから見た上限周波数の目安になります。必要な周波数がこの値に近い、または超える場合は、出力波形の傾きにオペアンプが追従しにくくなり、正弦波が崩れて波形ひずみが生じやすくなります。スルーレート制限が強くなると、出力波形は直線的な変化を含み、三角波に近い形になります。

設計時には、必要な出力振幅と周波数を先に決め、その条件でフルパワーバンド幅に十分な余裕を持たせます。余裕が小さい場合は、より高いスルーレートを持つオペアンプを選ぶ、出力振幅を小さくする、または扱う周波数範囲を見直します。実際の選定では、GBWで見積もる閉ループ帯域、出力振幅範囲、負荷条件、許容する歪み率、データシートの測定条件もあわせて判断します。

オペアンプの増幅と帰還のまとめ

オペアンプの増幅を設計するときは、反転増幅回路や非反転増幅回路で必要な閉ループ利得を決め、抵抗比で設定します。開ループ利得そのものではなく、負帰還によって安定した利得を得る考え方を押さえることが大切です。ただし、負帰還は利得精度や帯域、歪みの改善に関係する一方で、GBWにより高い利得では使える周波数範囲が狭くなります。さらに、大振幅信号ではスルーレートとフルパワーバンド幅も確認が必要です。利得、帯域、信号振幅を合わせて見ると、用途に合ったオペアンプ動作を見積もれます。