AC-DC コンバータ|基礎編

平滑後の DC-DC 変換(安定化)方式

2024.06.26

平滑後のDC-DC変換(安定化)方式は、整流/平滑された直流電圧を安定した直流電圧に変換する技術です。整流/平滑によって生成されたDC電圧を、所望の安定化DC電圧に変換する代表的な方式として、「フライバック方式」「フォワード方式」「Buck方式」があります。この記事では、それぞれの変換方式の特徴について解説します。

はじめに

トランス方式のAC-DC変換はAC-低AC-整流/平滑(DC)-[オプション:安定化DC]、そしてスイッチング方式のAC-DC変換はAC-整流/平滑(DC)-安定化DC(AC-整流/平滑-安定化DC)という流れで変換が行われることを説明してきました。この項では、前文の青色部分にあたる整流/平滑によって生成されたDC電圧を、所望の安定化DC電圧に変換する方式について説明します。

スイッチング方式のAC-DC変換に関しては、この工程を「DCを切り分けACに変換してそれを再度整流/平滑してDCに」という表現をしてきましたが、これ自体がスイッチングDC-DC変換なので、以降は簡略的に「スイッチングDC-DC変換」と呼ぶことにします。スイッチングDC-DC変換に相対するのはリニアDC-DC変換となります。DC-DCというとスイッチングという認識を持つ方がいるかもしれませんが、厳密にはDCをDCに変換する意味であり、その中にスイッチングとリニアという方式があるという前提で説明を進めます。

図 1:トランス方式の DC-DC 変換部分

図 2:スイッチング方式の DC-DC 変換部分

図1及び2は各AC-DC変換方式の回路ですが、円で囲まれた部分がDC電圧を所望のDC電圧に変換するブロックになります。実使用においては、ここで安定かつ精度のあるDC電圧に変換しなければ、多くの場合電子回路の電源としては使えません。 

フライバック方式

フライバック方式は、100Wぐらいまでのスイッチング電源によく使われている方法です。本稿の最初の説明でもフライバックを例として取り上げました。

フライバック方式には、自励型のRCC(Ringing Choke Converter)、他励型のPWMタイプ、RCCに共振技術を利用した疑似共振タイプの3種類があります。RCCタイプは、システムの補助電源など、主に小電力用途で使用されてきましたが、PWMタイプに比べると設計が少々複雑で、近年PMWタイプのMOSFET内蔵ICが普及してきたこともあり、小電力用途ではPWMタイプが採用されることが多くなっています。疑似共振タイプは専用ICで制御しますが、PWMより低ノイズで損失も小さくできることから、一部のアプリケーションで使われるようになってきました。

AC-DC変換では、スイッチング方式のAC-DC変換に使われることが多いのですが、トランス方式にも使うことが可能です。ただし、リニアレギュレータに比べると部品が増えコストも上がるので、絶縁が必要な場合などに限定されます。

フライバックの特徴は、シンプルで部品点数も少なく済むことです。

出力精度をあまり要求されないアプリケーションでは、トランスの巻線比でおおよその出力電圧を設定し、非安定出力電源として使うこともできます。安定化出力にするためには、スイッチングトランジスタを制御する回路が追加になります。

他に、入力電圧範囲を広く取れるメリットがありますが、比較的大きなピーク電流がスイッチング素子やダイオード、出力コンデンサに流れるというデメリットがあります。二次側(出力)からの帰還をフォトカプラにより絶縁することで、絶縁電源を構築できます。

フライバックの基本動作について図3を使って説明します。MOSFETがONすると、トランスの一次側巻線に電流が流れエネルギーが蓄えられます。このとき、ダイオードはOFFです。MOSFETがOFFすると、蓄えられたエネルギーがトランスの二次側巻線からダイオードを通じて出力され、整流/平滑によりDC電圧が生成されます。このような動作から、ON/OFF方式と呼ばれることもあります。各部の波形を図4に示します。

  • ・MOSFETがONすると、トランスの一次側巻線に電流が流れ、エネルギーが蓄えられる。このとき、ダイオードはOFF。
  • ・MOSFETがOFFすると、蓄えられたエネルギーがトランスの二次側巻線からダイオードを通じて出力される。
図3:フライバック方式(連続モード時) 図4:フライバック方式 各部の波形

フライバック方式の特徴

・シンプル、最小の部品点数で構成可能

・入力電圧範囲を広くとれる

・小容量のスイッチング電源に適する

・出力コンデンサのリップル電流が大きい

・出力精度をあまり要求されない場合は、トランスの巻線比でおおよその出力を決定し、非安定出力電源としても利用可

・自励型(RCC)、他励型(PWM)がある

フォワード方式

フォワード方式も構成が比較的簡単で制御も容易なことから、ポピュラーな方式の一つです。

特徴として、フライバック方式より大電力を出力できますが、インダクタとフライホイールダイオード(転流ダイオード:\(D_2\))が必要になります。また、フライバックと同様に、出力からの帰還にフォトカプラを使用して絶縁することで絶縁電源にできます。

動作は以下のようになります。MOSFETがONすると、ダイオード\(D_1\)がONして、インダクタを通して負荷に電流を供給します。MOSFETがOFFすると、インダクタに蓄えられたエネルギーをダイオード\(D_2\)を通して負荷に電流を供給します。各部の波形を図6に示します。

  • ・MOSFETがONすると、ダイオード\(D_1\)がONして、インダクタを通して負荷に電流を供給する。このとき\(D_2\)はOFF。
  • ・MOSFETがOFFすると、インダクタに蓄えられたエネルギーをダイオード\(D_2\)を通して不可に供給する。このとき\(D_1\)はOFF。
図5:フォワード方式 図6:フォワード方式 各部の波形

フォワード方式は、トランスを片方向のみ励磁するので、トランジスタがOFFしている間にトランスに蓄えられたエネルギーを放出(リセット)しなければなりません。そのためリセット(スナバ)回路が必要になります(図5のトランス一次側にあるRCD)。リセット回路は一般的に抵抗/コンデンサ/ダイオードによる回路で構成しますが、基本的にこのエネルギーは損失することになり、トランスの利用効率はあまり高いとはいえません。

またリセット動作にともない、スイッチングトランジスタにはDC入力電圧の1.5~2倍もの電圧が加わります(図6の\(V_P\)\(V_{ds}\)の波形の\(V_R\))。この電圧は、スナバの抵抗とコンデンサにより変わります。最近では、このリセットしなければならないエネルギーを回生して、損失と\(V_{ds}\)を軽減できるアクティブクランプを組み合わせた方法が使用されるようになってきました。

また、降圧の場合は一次側の電流が少ないので、コイルに溜まるエネルギーもそれほど大きくありませんが、昇圧に使うと一次側の電流が大きくなります。コイルに溜まるエネルギーも電流の二乗になるので、リセット回路で損失するエネルギーが大きくなります。そのため、この回路は降圧には使われますが、昇圧にはほとんど使われません。
AC-DC変換では、主にスイッチング方式に使われます。トランス方式にも使うことができますが、フライバック方式と同様に絶縁が必要な場合などに限定されます。

フォワード方式の特徴

・小電力から大電力(1.5KW)まで対応

・制御が安定

・トランスの利用効率はあまり良くない

・出力精度をあまり要求されない場合は、トランスの巻線比でおおよその出力を決定し、非安定出力電源としても利用可

Buck(降圧、非絶縁)方式

Buckはバックと発音し、降圧の意味です。Buckコンバータはダイオードで整流をおこなう降圧コンバータで、非絶縁の降圧スイッチングDC-DCコンバータに用いられる代表的な方式です。DC-DC変換の世界では、ダイオード整流式や非同期式と呼ばれることが多い方式です。先ほどのフォワード方式と比べると、トランスを使わないため一次側と二次側は絶縁されていません。絶縁が不要なときは、トランスを使用しないこの方式が簡単です。Buck方式は、トランスでの電圧調整がないので、MOSFETの制御だけで出力電圧が決定します。そのため、出力からの帰還は必要になります(図では省略)。

Buck方式の特徴は、第一に回路構成が簡単なことです。また、小電力の電源を構成する場合にはフライバックよりもコスト的に有利です。そのため、家電製品のマイコン用電源などで使用されるようになってきています。ただ、トランスを介さないため、スイッチング素子に流れる電流は同じ出力電力のフライバック方式よりも大きくなるので、出力電力が大きい用途には向かず小電力用途向けといえます。

動作は、フォワード方式とほぼ同じです。フォワード方式のトランスを取り去り、\(D_1\)がMOSFETに置き換えられた回路になります。MOSFETがONすると、インダクタを介して負荷に電流が流れ、インダクタにもエネルギーが蓄積されます。このときダイオードはOFFです。MOSFETがOFFすると、インダクタに蓄えられたエネルギーをダイオード\(D_2\)を通して負荷に供給します。MOSFETがフォワードコンバータの\(D_1\)と同じようにON/OFFします。

  • ・MOSFETがONすると、インダクタを介して負荷に電流が流れ、インダクタにもエネルギーが蓄積される。このときのダイオードはOFF。
  • ・MOSFETがOFFすると、インダクタに蓄えられたエネルギーをダイオード\(D_2\)を通して負荷に供給する。このときのMOSFETがOFF。
図7:Buck 方式(連続モード時) 図8:Buck方式 各部の波形

AC-DC変換においては、スイッチング方式に使われる場合は非絶縁電源に限定されます。トランス方式に対しては、最も使いやすいスイッチングDC-DCコンバータといえます。リニアレギュレータに比べると部品が増えコストも上がりますが、トランス方式を踏襲しながら効率を向上させることが可能です。しかしながら、AC入力からの効率を考えると、スイッチング方式のAC-DC変換構成には及びません。

Buck方式の特徴

・降圧に使用

・非絶縁、小電力用途

・フォワード方式と同じ動作(MOSFETがフォワード方式の\(D_1\)と同じ動作)

・MOSFETの制御のみで出力電圧が決まるので、出力の帰還は必須。

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