用語集

半導体ウエハ技術の進化

2023.08.08

半導体ウエハは、現代の電子デバイスにおける中核材料であり、その性能はデバイス全体の動作や効率に直接的に影響を与えます。スマートフォン、パソコン、自動車の高度な運転支援システム(ADAS)、更にはIoT機器や次世代通信技術(5G、6G)を支える製品に至るまで、シリコンやSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの先端材料を用いた半導体ウエハ技術が不可欠です。特に、微細化プロセスや高密度集積回路の開発が進む中で、ウエハの均一性や欠陥の少なさは、歩留まりや生産効率に直結する重要な要因です。加えて、半導体ウエハの技術進化は、高周波特性や耐圧性能の向上を実現し、省エネルギー化や環境負荷軽減に大きく貢献しています。これにより、持続可能な社会の実現に向けた次世代の電子デバイス開発において、半導体ウエハの役割はますます重要性を増しています。

本記事では、半導体ウエハ技術の概要から製造プロセス、最新トレンド、将来展望について紹介します。

半導体ウエハとは?

まず初めに、半導体ウエハについて、おさらいしておきましょう。

半導体集積回路(IC)

半導体ウエハの説明の前に、まずは半導体集積回路(IC)について説明します。
半導体集積回路とは、トランジスタやコンデンサ、抵抗など、さまざまな機能を実行する多数の素子を1つのチップに集積した電子部品です。今日の集積回路は高集積化が進み、微細化は2ナノメートル(nmは10億分の1m)を切るまでに至っています。

半導体ウエハ

半導体集積回路(IC)を製造する際には、シリコンなどの材料で作られた薄い基板の上に、多数の回路が形成されます。この薄い基板が「半導体ウエハ」です。シリコンウエハとも呼ばれ、単に「ウエハ」と称されることもあります。カタカナ表記では、「ウェハ」や「ウェーハ」と表記されることもあります。

半導体ウエハは、薄い円盤状であり、半導体物質の結晶から構成されています。一般的な材料はシリコンですが、ガリウムヒ素などの化合物半導体やサファイアなどの鉱物も用いられています。ダイヤモンドも次世代の材料として研究が進んでいます。

半導体ウエハは、まず純度の高いシリコンブロックであるインゴットから製造されます。このインゴットを切り出してウエハが作られます。

ウエハのサイズは材質や用途によって異なりますが、直径8インチ(200mm)~12インチ(300mm)、が主流です。製造ラインによっては、300mmのウエハが特に大規模な半導体製造において一般的に使用されています。

半導体ウエハは、微細加工技術の進化に伴い、デバイスの高集積化や高性能化を支えています。特に、シリコンウエハの純度や均一性は、歩留まりや電力効率の向上に直結し、次世代のエネルギー効率化など、最先端の電子機器や情報技術分野における革新に大きく貢献しています。

ウエハ製造プロセス

シリコンウエハを例に、ウエハの製造工程をみてみましょう。

シリコンインゴットを作る

まずは、原料である珪石を、還元・精留反応によって多結晶シリコンに加工します。
この多結晶シリコンから、純度イレブン・ナイン(99.999999999%)の、ほぼ不純物を含有しない状態の単結晶シリコンインゴットを作成します。
なぜ純度をイレブン・ナインにするのかというと、半導体はそもそも、不純物がほんの少しでも含まれていると電気特性が大きく変化してしまうからです。

多結晶シリコンの純度を上げるにあたっては、「チョクラルスキー法(引き上げ法)」や「フローティングゾーン法」などの手法が多く用いられます。

開発者Czochralski氏の名前が入っているチョクラルスキー法は、石英ルツボで1000℃以上にまで高め融解した状態の多結晶シリコンを引き上げることで、シリコンインゴットを作成します。
フローティングゾーン法では、多結晶の試料棒の一部を加熱、下部の単結晶と、試料棒との間に溶融部を形成させたうえで、その融液部を表面張力によって支えつつ、全体部分を下方へと移動させます。

スライシング

前工程で作成したシリコンインゴット(円柱状)を、ワイヤーソーやスライスマシンといった専用のノコギリを用いてスライスして、ウエハ形状に切り出します。

ベベリング

ベベリングとは、端的にいうと「面取り」のことです。
スライシング工程で作成したウエハ1枚1枚の側面(元の円柱の外周だった部分にあたる面と、切断面との交点である角部分)を、ダイヤモンド製の砥石などを用いて、面取りし丸めつつ、形状を正円に整えます。

研磨(ラッピング)

スライシング工程で生じた厚みのばらつきや、歪み、傷などを修正するために、ウエハの表面部分を研磨材で研磨します。

エッチング

エッチングとは、表面加工に用いられる加工法の一種で、化学薬品(腐食液など)や反応ガス(フッ素など)、イオンなどを用いて、化学反応による腐食作用で被加工物を溶解・蝕刻加工する技術です。

ラッピング後のウエハは、まだ微細な歪みや傷が残っている状態です。これを、設計どおりの寸法・形状にまで整えるために、エッチングを行います。エッチングにより、これまでの製造工程で付着した不純物やパーティクル(数百~数十nmレベルの微粒子)も除去されます。

熱処理(アニーリング)

熱処理によって対象の加工硬化による内部の歪みを除き、組織を軟化させます。シリコンに対してアニーリングを行うと、シリコン内の酸化ドナーを取り除き、結晶欠陥が低減することで、抵抗値が安定します。

ポリッシング

ポリッシングとは、前述のラッピングより精度の高い研磨のことで、平坦化装置(CMP)などを用いて、ウエハの表面部分を極微細粒子で研磨し、高い平坦性を持つ鏡面に仕上げます。

洗浄

最終的な仕上げの段階として、表面に残っている異物や汚れを、バッチ洗浄装置、枚葉洗浄装置といった洗浄装置で化学的に洗浄します。

乾燥

洗浄後のウエハを乾燥させます。

品質・特性検査

製造されたウエハについて、設計どおりの寸法・形状・平坦度・結晶方位・抵抗率となっているか、傷や汚れなどの欠陥がないことを目視検査及び検査機器によって確認します。

ウエハ技術のトレンド

半導体ウエハ技術は、デバイスの高集積化や微細加工技術の進展に伴い、性能向上とコスト削減の両立を実現するため、急速に進化しています。これまでにも、製造プロセスの精密化、新材料の導入、更にはウエハサイズの拡大や薄型化といった、多方面での技術革新が進められてきました。

現在注目されているトレンドの1つに、シリコンウエハの大口径化があります。従来の150mm、200mm、300mmのウエハサイズから更に進化し、現在は450mmウエハの実用化が視野に入っています。シリコンウエハの口径が大きくなることで、1枚のウエハから得られる半導体チップの数が増加し、結果として製造コストの削減と生産効率の向上につながります。これにより、450mmウエハの研究開発と試験生産が進められており、商業化に向けた取り組みが加速しています。

また、半導体ウエハの材料技術についても重要な進展があります。現在、シリコンウエハが市場の大部分を占めており、パソコン、スマートフォン、自動車など、私たちの身近なデバイスの多くに使用されていますが、次世代半導体材料として**SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)**の活用が拡大しています。これらの化合物半導体は、特に高温や高電圧環境に強い特性を持ち、パワーエレクトロニクスや5G通信、電動車などの分野で急速に需要が高まっています。今後、SiCやGaNの供給量拡大とコストダウンを目指した研究開発が続くことで、これらの材料がシリコンに次ぐ重要な地位を占めることが期待されています。

450mmウエハや次世代材料の普及は、製造技術の進化と市場のニーズに対応し、次世代の高性能デバイスを支える重要な要素となるでしょう。

半導体ウエハの応用事例

それでは最後に、半導体ウエハの代表的な応用事例を見てみましょう。

プロセッサーやメモリデバイス

最も一般的な応用例は、プロセッサーやメモリデバイスです。私たちの身の回りにあるスマートフォン、パソコン、自動車、家電製品などの多くに、これらの半導体デバイスが搭載されており、機器の動作やデータ処理を支えています。

これらのデバイスは、半導体ウエハ上に微細な回路を形成して製造されます。高い平坦性と均一性が求められる半導体ウエハを用いることで、プロセッサーやメモリの性能と効率を最大化できます。また、クレジットカードやSIMカードに使用されるICチップにも半導体ウエハが応用されており、日常生活における幅広い分野で活躍しています。

パワーエレクトロニクス

半導体ウエハは、パワーエレクトロニクス分野でも重要な役割を果たしています。特にSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった化合物半導体を用いたパワーデバイスは、高効率な電力変換を実現し、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーシステムなど、次世代のエネルギー技術に広く応用されています。これにより、エネルギー効率の向上やシステムの小型化が可能となり、持続可能な社会の実現に大きく貢献しています。

【資料ダウンロード】 Siパワーデバイスの基礎

Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。