用語集

リンギングとは? スイッチング電源で起こる問題とその対策

2022.11.07

電気回路において、信号が電線の両側で反射することで波形が振動する現象を「リンギング」といいます。リンギングは主にデジタル回路やスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)で発生しやすく、「スイッチングノイズ」とも呼ばれます。

今回は、リンギングが発生するメカニズムと、リンギングの発生を防ぐための対策について解説します。

リンギング(ringing)とは

「リンギング」とは、電気回路において信号の反射や、リアクタンス成分の共振によって、波形が振動する現象のことをいいます。この現象は、ドライバ(信号を出力する側の素子)のインピーダンスが低く、レシーバ(信号を受ける側の素子)のインピーダンスが高いときに発生します。

リンギングが発生しやすい代表的な例は、トランジスタ同士がスイッチングを行うデジタル回路や、スイッチングを行うスイッチングノードがあげられます。スイッチングは電気回路のON・OFFを切り替える行為です。スイッチングを行うときに高周波が発生し、ノイズとなることがあります。そのため、リンギングはスイッチングノイズとも呼ばれます。

高い周波数でスイッチングを行えば高い応答速度を実現できますが、その分スイッチングノイズも大きくなる為、ノイズが性能に影響を及ぼさないよう十分な対策が必要です。

スイッチングノードで起こるリンキングの例をご紹介します。以下の図は、DC/DCコンバータの等価回路です。このときの電流の経路を見てみましょう。

DC/DCコンバータの等価回路

この図では、電源側にあるSW1がハイサイドスイッチ、GND側にあるSW2がローサイドスイッチという構成になっています。この構成では、SW1がON(SW2はOFF)のとき入力コンデンサからSW1を経由してインダクタLを通って出力コンデンサへ流れる電流経路です。

対してSW2がON(SW1はOFF)の場合では、SW2からLを経由して出力コンデンサへという経路です。このとき、スイッチがON/OFFするたびに入力コンデンサ、SW1、SW2の電流経路上に流れる電流は、激しく変化します(下図太線部)。このループは電流が急激に変化するため、基板配線のインダクタンスにより、ループ内で高周波のリンギングが発生します。

SW ON/OFFによって電流が急激に変化するループ
  • ・左図太線部分は、SW ON/OFFによって電流が急激に変化するループ。
  • ・このループにSW切り替え時の高周波電流が流れることにより、ループ内にリングが発生する。

\(V = L \times \frac{dI}{dt}\)

例)10nHのインダクタンス成分を持つ配線に、1Aの電流を10nsで変化させると、1Vの電圧が発生。

リンギングが起こる原因

リンギングの原因

リンギングは、ドライバ(信号を出力する側の素子)のインピーダンスが低く、レシーバ(信号を受ける側の素子)のインピーダンスが高いときに、信号の反射により発生します。

例えば、配線の特性インピーダンスが大きく異なる場合、インピーダンスの変化により信号の反射が発生し、それによって波形が振動します。

インピーダンスが異なると・・・信号の反射が発生!

ドライバの出力インピーダンスよりもレシーバの入力インピ―ダンスが高ければ高いほど、リンギングの振れ幅は大きくなり、また持続時間も長くなります。

他の原因として、寄生インダクタンスや寄生容量などの「寄生成分」によってリンギングが起こる場合があります。寄生成分とは、回路図上には見えない電子部品や電子回路の物理的な構造に起因する成分のことです。このような場合、回路そのものは間違ってなくともリンギングが発生することが起こりえます。

例えば、プリント基板上や接続ケーブルで発生するインダクタンス(寄生インダクタンス)は、電流経路が長いほど大きくなるため、スイッチングノードで電流が急激に変化するループが長いと、リンギングの振れ幅も大きくなります。スイッチングノードの基板レイアウトの設計において、寄生成分に対する考慮が不足していると、リンギングが起きる原因となります。

リンギングの原因

リンギングによる影響

リンギングが発生すると、製品にさまざまな影響を及ぼします。

まず、回路を流れる電流が増加します。これにより、製品の消費電力が増加し、基板に熱が発生します。バッテリーの消費が激しくなるほか、基盤上の各機器の機能の性能が低下し、寿命が短くなる可能性があります。

また、各機器の機能の性能低下が蓄積すると、出力の遅延や応答性の低下など、製品全体の性能が低下します。電源にノイズが加わると、製品が故障する原因にもなりえます。

ノイズは、音響関係の機器では出力音に影響するほか、テレビやビデオなどの動画出力において目に見える形で影響が出るなど、性能問題の原因につながります。

リンギングの対策方法

リンギングの対策には、いくつか方法があります。

電流ループを小さくする

対策の1つ目は、スイッチングレギュレータで起こる、電流が急激に変化するループ(下図の太枠線部)の面積を小さくすることです。これにより、プリント基板上や接続ケーブルで発生する寄生インダクタンスと寄生容量を減らし、ノイズの発生を抑えられます。

SW ON/OFFによって電流が急激に変化するループ
  • ・左図太線部分は、SW ON/OFFによって電流が急激に変化するループ。
  • ・このループにSW切り替え時の高周波電流が流れることにより、ループ内にリングが発生する。

\(V = L \times \frac{dI}{dt}\)

例)10nHのインダクタンス成分を持つ配線に、1Aの電流を10nsで変化させると、1Vの電圧が発生。

基板レイアウトを最適化すれば、ノイズを減らせるだけでなくレギュレーションの悪化も防げるなど多くのメリットがあります。寄生容量や寄生インダクタンスを考慮した適切なレイアウトを設計しましょう。

▼DCDCコンバータの基板レイアウトについて詳しい情報が知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてください。
https://techweb.rohm.co.jp/product/power-ic/dcdc/dcdc-design/2734/

スナバ回路の追加

スナバ回路とは、スイッチングが行われた時に発生する高周波のリンギングノイズを吸収する回路です。抵抗とコンデンサで構成される「RCスナバ回路」が最もよく使われます。

スナバ回路の追加は、ノイズを低減するのによく用いられる手法です。以下の例では、スイッチングノードにスナバ回路を追加し、スイッチングによるリンギングノイズをGND側に逃がす動作をします。

スイッチングノードにスナバ回路を追加し、スイッチングによるリンギングノイズをGND側に逃がす動作

ただし、スナバ回路を追加することでスナバ回路上にあるコンデンサにも電流が流れるため、その分の損失が発生します。また、回路を追加するためのコストや基板面積にも影響します。スナバ回路を追加する前に、電流ループを小さくできないか、基板のレイアウトを確認しましょう。

▼RCスナバ回路については、こちらの記事も参考にしてください。
https://techweb.rohm.co.jp/know-how/nowisee/8289/

ブートストラップに抵抗を挿入

ハイサイドスイッチには、BOOTピン(ブートストラップ)があります。これは、ハイサイドMOSFETにゲートドライブ電圧を与える機能です。BOOTピンに抵抗を挿入することでハイサイドMOSFETをONにした時(スイッチがONの状態)の部分に発生するノイズを緩和することができます。

ブートストラップに抵抗を挿入

ただし、BOOTピンに抵抗を挿入することでスイッチング時間が遅くなってしまうため、MOSFETの損失が増加します。

デカップリングコンデンサを使用

デカップリングコンデンサとは、ノイズを抑える目的で設置するコンデンサのことです。一時的に電気をため、電流変化を吸収してノイズの発生を抑えることができます。

コンデンサを追加してノイズ低減を図るときは、ノイズの周波数を確認し、対応したインピーダンスの周波数特性をもつコンデンサを選択することが大切です。コンデンサを追加することでターゲットで発生しているノイズの周波数のインピーダンスを下げ、ノイズ振幅を低減します。

▼デカップリングコンデンサの効果的な使い方については、こちらの記事も参考にしてください。
https://techweb.rohm.co.jp/know-how/nowisee/7669/

以上、リンギングの対策方法をご紹介しました。複数ある対策方法の中から特におすすめなのは、基板レイアウトを見直して電流ループを小さくすることです。基板レイアウトを見直すことで、ノイズ以外にも機器の不安定な動作を解決できる可能性があるなど、他の問題においても効果が期待できます。

スナバ回路やブートストラップへの抵抗の挿入、コンデンサの使用といった方法は、それによる別の損失が発生したり、機器追加のための基板面積にも影響したりするなど、デメリットも存在します。

そのため、それらの対策を行った結果によってはノイズレベルと効果の妥協点を検討することも必要です。

リンギングの原理を理解し、有効な対策を講じよう

本記事では、スイッチングノードで発生するリンギングを例に、リンギングの発生原因および影響と対策について紹介しました。リンギングはドライバとレシーバ間のインピーダンスの差異によって発生するほか、回路図上にない物理的な要因で発生することもあります。対処しないままにしておくと、製品全体の性能にも影響が出てしまうため、必ず対処しましょう。

リンギングの対策方法は、個別に関連記事で詳しく説明していますのでぜひそちらもご参考ください。

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